MY WAY YOUSEI⭐︎ESTRELLA 10th ANIVASARIO-MAKE THE FUTURE-
(2023年4月2日・日・さいとぴあ多目的ホール)
イントロダクション
私がユーセー選手の試合をはじめて生でみたのが、約7年前。
当時はジャック目当てできたら、「もう1人、ダイヤの原石をみつけた!」という感覚がして、凄く嬉しかったのを覚えている。
さて、本日出場する佐々木貴選手がよく言う「リングに上がればプロもアマも関係ない!」という発言を、私は全面的に支持している。
しかし、ジャックやユーセーに関しては、どこかしらで「子どもだし」「学生だし」と思って試合を見てきたのは否めない。
個人的なことをいうと、彼らは私の姪とほぼ同世代になる。
2人のリング上での成長を可能な限り見てきた人間としては、もしかしたら親目線に近い感じで彼らの試合を見てきたのかもしれない。
だが、10周年を機にその見方をやめようと思う。
彼らもまもなく選挙権を得る年齢である。
いつまでも半人前扱いでは、プロ選手として、ひとりの人間として大変失礼でもある。
そういう心づもりをした上で、私は下関を出立した。
下関→さいとぴあ
3月30日に母が二度目の入院をして、どうにか大人しくしてくれているタイミングで、知己のエル・ファルコにチケットをお願いしたのが、大会前1週間を切ったあたり。
そのファルコがまさかの負傷欠場になろうとは、3月の時点では想像もしていなかった。
MY WAY自体大会前にゴタゴタしていて、その上要の選手が抜けるとあれば、痛いことこの上ないはず。
まあ、こういう時だからこそ、団体としての真価が問われてくる。試されているのは、主役のユーセーだけではない。
晴天の日曜にも関わらず、比較的スムーズに小倉まで着き、新幹線で博多行き。そのまま地下鉄で九大学研都市前まで乗り継いでいく。
一月の華☆激もそうだったけど、この距離感がプチ小旅行な感じがして、私は好きである。
帰りは観戦記書いてるし、外は真っ暗だけど、行きは途中から列車が地上にあがり、景色をながめながらの鉄道旅になるからだ。
会場到着
そんな感じで鉄旅を楽しんでいたら、あっという間にさいとぴあに到着。
週刊予報では当初雨マークがついていたけど、結果は春らしい好天!お膳立てはバッチリである。
チケットを受け取って待つこと1時間。
会場廊下に飾られた油絵を鑑賞しつつ、レッスルマニアの速報見ながら時間を潰す。
マニアは二日間あるし、どのみちリアタイ視聴は不可能だから、結果知ってても問題ない。
オープニング
ピヴォーレ福岡の時は気づかなかったが、さいとぴあで見るMY WAYのリングはなんか小さく感じる。
さて、この中で行われる試合は、果たして仲間内の仲良しこよしで終わるのか?
それとも我こそが出し抜いてでも目立ってやるという、生き馬の目を抜く戦い模様になるのか?
信頼関係があるのはわかっている。
だけど、リングの中は関係ない世界だからね。
確かにユーセーが主役かもしれないけど、もしかしたら、誰かに試合内容で食われるかもしれない。
そんなヒリついた感じがあるといいな、と思っている。
キッズチャレンジシップ取り
×ユーセー☆エストレージャ対◯トウマ(本戦2対1)
*延長戦からの1対0
オープニングマッチの前に、中学一年生のトウマが、ユーセーに挑む試合。腰についているチャレンジシップという布を取った方の勝ち。
しかし、これをやるにはレスリングで食らいついていかないと、優位なポジションが取れないので、やる方は結構必死。
もちろんユーセーにもそんなに余裕はないし、食らいついていくトウマは、とにかくぶつかっていく。
一旦試合はユーセーが2対0で勝利したのだが、トウマが食い下がりネグロが認めたため、急遽シップ取りで3ポイント加算される延長戦が組まれた。
直訴した以上後には引けないトウマは、更にさらに泥臭く食い下がっていく。
これは正直今までMY WAY観ていて一番足りてなかった部分。泥臭くても食い下がり、勝つまで相手を離さない。
ネグロのルール変更はともかく、10年選手のユーセーから、中学生が一本とって勝ったのは紛れもない事実。
今度は泣きの一回なしで、ユーセーやジャックから一本取れるようになってほしい。
あの勝ちに貪欲な姿勢を忘れなければ、きっと未来は開かれるはずだからだ。
第一試合15分一本勝負
◯エル・ブレイブ対×HIRAMASA
(12分19秒垂直落下式ブレンバスター)
昨年のピヴォーレ福岡でも見たカード。
どちらかというと、先輩に引っ張ってもらっているイメージが強かったブレイブが、はじめて胸を貸す側になれた試合として、記憶に残っている。
とはいえ、人数が減っている時こそアピールするチャンスでもある。
MY WAYはなぜか不良っぽい割にはレスラーとして奥手な選手が多いイメージがあるけど、この試合でHIRAMASAがそれを覆せるか?
試合を観ていて、正統派のブレイブに対して、ヒールモードで変化球を投げて挑んだHIRAMASA。
その姿勢は悪くなかったし、カッコつけで悪い事をしているわけではなく、勝ちたいという姿勢はみえていた。
それは1年前と違うところ。
しかし、同時に残念だったのは、2人ともちょこちょこ技のミスが目立つところだった。
ブレイブのアレは病気みたいなもんだから諦めているけど、HIRAMASAも本気で勝ちたいなら、自分のやりたいことより、お客さんに伝える事を優先できないと、なかなか勝ちにはつながらない気がする。
今日の内容でHIRAMASAが勝っていたら、微妙な空気になっただろう。
それでも最後まで食い下がる姿勢が見られた分、HIRAMASAは昨年より進歩していたと思う。
あとは、更なる研鑽と練習を続けていくしかないだろう。
第二試合15分一本勝負
◯KAZE対×BEAST(7分19秒)
人数が減ってしまった分、苦慮した末のカードだろうが、悪くはない。
悪童の大先輩KAZEは、なんだかんだ言ってもアマレスの基礎があるし、プロとしてのキャリアも長い。
ユーセーやジャックが若いからどうしても未来の象徴に見られがちだが、MY WAYが一人前になるなら、まずBEASTが上がってこなければダメ。
そういう意味では、この試合の2人も試されているのだと私は解釈している。
試合はBEASTがラリアットで先制し、勢いに乗ろうとしたところを、KAZEがうまくいなしてグラウンドの攻防に持ち込んでいく。
KAZEもどちらかというとカッコつけたがる選手だけど、アマレスで鍛えた素地を、キャリアの離れた相手に使ってくるいやらしさも同時に持ち合わせている。
正直、KAZEみたいなアマレス貯金のない選手には、こうしたグラウンドの攻防で一本とるのはかなり難しいだろう。
一方のBEASTは、パワーファイターらしく一発一発が非常に豪快だし、加えてこちらも勝ちにいく姿勢をもってぶつかっていったのはよかったと思う。
しかし、いかんせんあまりにグラウンドが弱すぎて、スタンドの闘いになった時に自分が優位になれないのは、致命傷と言っていい。
BEASTが進むとしたら、小賢しいグラウンドを捨てて、パワー一本に特化するか、パワーに混ぜたヒールのインサイドテクニックを織り交ぜるかしていく方向になるのかなあ。
気持ちはわかったし、KAZEも試合後リマッチを要求していたけど、後少し足りないものがはっきりわかると、タイトル獲得も夢ではないだろう。
ただ、それは現状から何かしら変わらなければ、絵に描いた餅にしかならないのだけど。
第三試合15分一本勝負
〇プロフェッサー・イトウ対×キャプテン・クジラ
(13分54秒ラリアット→体固め)
前団体を辞めてフリーランスとなった「プロフェッサー・イトウ」を見るのは、今回が初めて。
対するキャプテン・クジラもはじめてみるわけだが、やはり海千山千のイトウから一本とるのは至難の業であろう。
ならば、せめて少しでもイトウの本気を引き出してもらいたい。九州では数少ない重量級のカードとして期待してみたい。
クジラはイトウと向かいあっても身長がでかい。これは大きな武器である。
これに警戒したか、いきなり手四つの勝負からグラウンドに誘うイトウ。普段滅多にあけない引き出しを開けてきた。
ただ、これが同時にウィークポイントにもなったのだが、攻められている時のクジラの苦しさや辛さが、あのマスクでは殆ど伝わらないのだ。
その分ヒールモード強めのイトウが憎々しげな表情で、観客を煽る分なんとか試合が成り立っていたけど、あれはもったいなかった。
クジラとしては体格を生かした肉弾戦に説得力があればまだよいのだが、キャリアが圧倒的に足りない分、自分に声援を集めにくい。
結局、イトウがお得意の場外戦も含めてあの手この手で盛り上げた事で、何とか形にはなった。
だが、クジラがなんとかして勝ちに行きたいという貪欲さまでは伝わりきれなかった。
せめてラリアットの相打ちでイトウがふらつくくらいの威力を見せられていたら、まだ印象は変わったかもしれないが、やはり結果は若手のチャレンジマッチの域を出なかったかな。
セミファイナル25分一本勝負
清水基嗣&×ウラカン・マリーノ対◯HANAOKA &RANMA
(21分01秒ゴリースペシャルバスター)
これは、4.9シークレットベースで行われるタッグ王座対決の前哨戦。
チャレンジャーの1人であるネグロがユーセーと対峙するため、清水のパートナーはマリーノと、チャンピオンサイドのHANAOKAは、 RANMAとタッグを結成。
ジャパニーズルチャといっても近年は様々で、一般的には闘龍門ベースの選手が目立っている分注目されがち。
しかし、その中でもRANMAとHANAOKAの絡みは非常に興味深い。
また、このカードに起用されたマリーノにとってはまたとないチャンスでもある。
さて、このメンツの中で、どこまでマリーノは自己主張できるだろうか?
しかし、試合が始まってみたらマリーノが長時間捕まる展開になっていく。
もともとヒールが本職のHANAOKAにしてみたら、こうしたシチュエーションは得意中の得意だろうし、百戦錬磨のRANMAも難なくこの動きについていける。
面白かったのは、マリーノのパートナーである清水が、必要以上に手助けしなかったことで、マリーノには試練だけど美味しい展開になっていった。
以前のマリーノだと、派手な空中戦をやりたがるけど、受けに回ると弱々しい感じがしていた。
だけど、耐えるだけ耐えて清水に繋げたところで、試合は大きくはじけた。これはマリーノがHANAOKAとRANMAの厳しい攻めを凌ぎ切らなければ、決して生まれなかっただろう。
試合はそこから一進一退していくスリリングなルチャリブレになっていき、マリーノにも見せ場が回ってきた。
多分カッコ良くはないんだけど、泥に塗れた事で、マリーノは一皮向けたと思う。
あとは、外敵相手ではなくMY WAY内でこうした内容が見せられれば更によくなるだろう。
試合後、HANAOKAがマイクでユーセーへの思いを語っていたが、この遮二無二立ち向かうバトンを、ユーセーが引き継げばこの大会はアタリになるはずである。
メイン開始前、ここて10分間の休憩。時間的にはベストなタイミングだったと思う。
メインイベント・ユーセー⭐︎エストレージャ10周年記念試合
佐々木貴&ヴァンヴェール・ネグロ対ユーセー⭐︎エストレージャ&ヴァンヴェール・ジャック
記念試合だからユーセーとジャックのシングルでもよかったのだが、それだと昨年もやっている。
大会のテーマ通り、彼らが未来を担うなら、オヤジ世代はぶっ倒さなければならない。
そういう意味ではわかりやすいカードである。
ここに佐々木貴がいる意味はとてつもなくデカい。オヤジ世代として容赦なく叩き潰しにくるだろう。
ところがリングインするなり、マイクを持ったネグロはいきなりカード変更。
さすがに自由人な殿も「リングインしてから、カードが変わるなんて初めてだ!」と言っていたが、ネグロは「何が起こるかわからないのが、MY WAYですよ」と、押し切ってしまった。
変更後カード
×ユーセー⭐︎エストレージャ&ヴァンヴェール・ネグロ対ヴァンヴェール・ジャック&〇佐々木貴
(19分11秒 Dガイスト)
正直、変わるんならシングル3人がけでもいいかな?と思ったが、それやると多分会場の延長料金を取られるに違いないので、ギリギリ理性をとどめた形で試合はスタート。
先発はユーセーとジャック。
いきなりハイスピードでいくのかと思いきや、まずリストの取り合いから手首を固めるベーシックな動きで、2人の10年間を確かめ合うような滑り出し。
今までと違うのは、過剰な信頼関係が滲み出る馴れ合いではなく、しっかりお互いの技術を確かめ合っていた点。
若いとはいえ、伊達に10年選手ではないという事である。
そして、この中では一番キャリアが上だけど、一番負けず嫌いで一番大人気ない佐々木貴が登場すると、試合は一転ユーセーのチャレンジマッチに変化する。
この瞬時に変わる状況に、即時対応していくユーセー。何度も谷底に落とすオヤジに対して、あくまでも食い下がっていく息子という図式が出来上がる。
注目すべきは、殿の厳しい攻撃をユーセーがカウント1でキックアウトしていく姿。
ユーセーの年齢的には別におかしくない光景だが、MY WAYではキャリア10年のベテラン選手になる。
だから、団体内の闘いでは見せることがない、ユーセーの等身大の感情が垣間見えた瞬間だった。
こういう時、佐々木貴は最高の外敵として立ち塞がる。
自身も人の親であり、ユーセーやジャックを息子と呼ぶ殿だからこそ厳しい攻めを見せてきたし、それにユーセーもよくくらいついた。
本当は団体内にこうした存在が欲しいんだけど、これも巡り合わせというやつなんだろう。
エンディング
試合終了後、殿の熱いマイクに必死で上を向こうとするユーセー。声が裏返る熱いメッセージはしっかり刺さったと思う。
殿だけではなく、ネグロ、ジャック親子からも熱いマイクが続く。中でもジャックが「俺たちは仲良しじゃない!バチバチに競い合いたい!」と言ってくれたのは嬉しかった。
もちろんユーセーも「お願いします」とライバルに頭を下げて、ライバル関係の継続を約束。
さらに、ユーセーからユーセー母に、感謝の手紙を読む時間が設けられた。私はひとの親ではないので、深いところまではわからないが、素晴らしい関係性だなと思えた。
最後に記念撮影して、ネグロに促されてユーセーが締めをやろうとしたら、結局3回リテイクだしてしまうグダグダっぷりもMY WAYらしいっちゃ、らしい光景だった。
終わってみれば、時計は午後8時。どんなに頑張っても実家に戻れば午後10時。
というわけで、挨拶もそこそこに駅に向い、地下鉄と満車の新幹線内で観戦記を書いて、なんとか日が変わるまでには実家に帰りついた。
後記
MY WAYの課題は、ユーセーとジャックが年齢の割に飛び抜けすぎている事。だから、団体内で競い合う関係性が少なくなりがちになる。
団体対抗戦や対外敵というシチュエーションがないと、なかなか魅力的な闘いが見せられずにいた。
それは今もあまり変わっていないのだが、団体を引っ張る若い2人が率先して意識改革をしようとしているのだから、周りの大人はもっと危機意識を持たなければならない。
今だとジャックはユーセーしか、ユーセーはジャックしか目に入っていないし、これ以上のライバル関係はなかなかできあがりにくいだろう。
だけど、年齢もキャリアもかなぐり捨ててでも、ユーセーやジャックを振り向かせる選手が1人でも多く出てきてほしい。
そうならないと、MY WAYは団体対抗戦という劇薬なしでは存在しえない集団になりかねないからだ。
交流のある団体をみればわかるが、FREEDAMSもシークレットベースも自前の抗争が中心にあって、団体対抗戦は付録のようなものである。
それは対抗戦という禁断の実に手を出して、その後どうなったかというプロレス界の歴史が物語っているからだ。
MY WAYは確かに日本でも変わった部類に入る団体だけど、もっと突き抜けられるポテンシャルがあるはずである。
実際今回だってピンチをチャンスに変えられたのだから。