DRAGON GATE THE FINAL GATE 2014
(2014年12月28日 福岡国際センター)
イントロダクション
年末の福岡地区の掉尾を飾るビッグマッチはドラゲーが飾る。この通例行事に今まで実は参加してこなかった。
なぜならTVでみられるから。TVでといっても完全放送されるわけでもなかったりするのだが、なんせ玄界灘の潮風はヘタすると春先でも寒いくらい。
海沿いに位置する国際センターは正直この時期近寄りたくなかったというのが本音。
だが、今年はなぜかご縁があっていけることになってしまった。せっかくみられる機会を与えていただけたということは、何かがあるに違いない。
そう思って国際センターに赴いた。
普段出店や売店ではあまりものを買ったりしないのだが、今回は誘惑に負けてカスタードたいやきを所望。
これが意外といけていた。
こういう何気ないところでついてると、意外といいことがあったりする。
オープニング
初のドラゲーのビッグマッチは北側だけをつぶしていたが、ほぼ全面仕様。数年前の新日でもここまで入ってなかったであろう入りには正直びっくり!
この大会もTVが入ってる(しかもローカル地上波と衛星放送の2局!)ので放映権料だけで十分もとはとれているだろう。正直テレビ用に人入ってないと絵的にまずいので招待券を配る…というのはどこの団体でもやってはいる。
しかし今日日配ったところで実際に会場に足を運ばないことの方が多いのもまた事実。だが、ドラゲーは例外的にといってもいいくらい、招待券の回収率が高いのだ。だからほぼテレビマッチは二カ月に一回博多でやっているのにいつも満員。
二か月後にはスターレーン大会を控えているのに、それでも生でみたいと思わせる魅力が今のドラゲーには備わっているのだ。
加えて新日同様、若手にチャンスを与えて、その若手がちゃんと結果を出していること。一時期世代交代が遅々として進まなかったこともあったが、ミレ二アルズの加入で一気に進化が加速した。
よって、今までは曙を呼んだり、試合形式を工夫したりしてなんとか満員にしようとしていたが、今回は純血勝負。むしろこれでも出られない選手がいるくらいなんだから今のドラゲーの勢いは恐ろしい。
そしてメインの鷹木対ハルクという10年物語の完結をタイトルマッチとしてメインにもってきた。すがすがしいほどの王道マッチメーク。期待感は高まっていよいよ開幕!
【第1試合】
“ハリウッド”ストーカー市川&“×ミスター・ハイテンション”琴香&林悠河vsジミー・神田&○ジミー・カゲトラ&Mr.キューキュー“谷嵜なおき”豊中ドルフィン
(9分57秒 一騎当千)
このメンツの中にあって後楽園大会で先輩を破って頭角を現した林が入っていることがミソ。スクリーンでその模様を散々流していたこともあって、期待値は高まる一方。あとのメンバーは普通にプロレスができるのでそれほど心配ないし、ビッグマッチにふさわしい第一試合になりそうな予感がしていた。
林は市ちゃんお約束のロープ渡りでもガン無視を決め込み、見事股間痛打までの流れを作っていたが、老練なジミーズが連携で孤立させていくとやはり捕まる展開が目立ってきた。
谷嵜の地獄の断頭台も決められた林だが、カウンターの払い腰を決めると市川&琴香がダブルのコルバタから、林のプランチャ&琴香のトぺの競演で驚異の新人の印象を福岡に植え付けていく。実際要所要所でみせる払い腰は、ルチャベースのドラゲーにあって、かなり異色だし、個性になりうる技だなとおもった。こういう新人がいるっていうのは心強い。試合は琴香がカゲトラにつかまって負けはしたが、林の存在感は大きく光った試合だったと思う。
【第2試合】
×U—T&ヨースケ・サンタマリアvs○ドン・フジイ&問題龍
(8分9秒 外道クラッチ)
試合はMAD BLANKEY(MB)の奇襲でゴング。ここ数年はベテランポジションで大人しめなファイトばかりしていたフジイさんがまるでクレージーMAX時代をほうふつとさせるかのような荒々しい攻めを見せて、ミレ二アルズを翻弄。ミレ二アルズは序盤でペースがつかめないまま、MBに攻め込まれる場面が目立ち過ぎた。マリアがスカイラブやラブリーアローが決められ、U—Tの変形腕極めDDTでなんとか流れを変えようとはしていたけど、正直ミレ二アルズをもってしても今のMBはちょっと手が付けられないかなという感じ。試合はフジイが背後へラリアットを放った後すかさず、外道クラッチで3カウント奪取。順風満帆だったミレ二アルズにやや怪しい雲がかかりはじめたのかな?
ここでメインのドリームゲートに向けての決意表明。これはたぶんGAORAの放送に合わせたものなんだろうが、いかにもなビッグマッチ感にあふれた演出でよかったと思う。ともに思うとことがあって過ごした10年の重みがここでいやというほど伝わってきたから
だ。
鷹木「いよいよ決戦の時がきました。ハルクとの戦いにユニット抗争とか同期対決とか関係ありません。一人のプロレスラーとして一人の男としてこの状況は納得いきません。
BxBハルクを追う立場というのは納得いきませんが、いつも通り叩き潰すプロレスでベルトを取りますんで応援宜しくお願いします」
ハルク「インイベント、ドリームゲート。この舞台に立つことが出来て嬉しいです。僕は10年前に北海道から出てきました。そしてこのベルトにたどり着くまで10年かかりました。
その相手が鷹木信悟なのは非常に意味のあることだと思います。みんなの声援の力が必要です。僕に力をください」
この言葉だけでも十分その重みが伝わってくるではないか!
【第3試合】オープン・ザ・ブレイブゲート選手権試合
《王者》○フラミータvs《挑戦者》×パンチ富永
(12分35秒 マスク剥ぎによる反則)
メキシコから単身来日し20歳でチャンピオンになったフラミータ。その華麗なファイトスタイルは今のドラゲーに実に似つかわしい。ミレ二アルズにあっても非常に貴重なポジションにいると思う。ハンドスプリングからコルバタで富永を場外に出してトぺで追撃した
フラミータが、場外に誘い込んだが、ここはやはり極悪挑戦者らしく富永がペースをつかみ、フラミータを鉄柱に叩きつけた。これで動きの停まったフラミータは、ケンカキックや急所付近のトーキックを中心に攻めこまれる。
リング内ではあえてそうしていたのか?凶悪な部分を控えていた富永が、終盤で一斗缶!そしてPTキックを狙ったがフラミータがカウンターでフラムフライを狙うが、カウント3目前で、レフェリーの見てる前で堂々とマスクを剥いだため、富永が反則を取られフラミータの勝利となったが、マスクはぎは中盤でもよかったような気がする。というかマスクはぎ自体が、今やマスクマンの正体をさらすというメンタル攻撃の意味合いをなくしてしまっている以上、なんかそれ以上の意味合いはもたせてほしかったな。ただこれでMBが執拗にミレ二アルズに焦点をしぼって抗争しだしたことだけは理解できた。
【第4試合】
吉野正人&戸澤陽&×しゃちほこBOYvsCIMA&○Gamma&K—ness.
(18分14秒 ガンマスペシャル)
年末にMBの増強目的で行われた土井ダーツによって、MBに強制加入となったもとベテラン軍の三人がMAD BLANKEYとして登場。全員黄色のコスチュームはかなり異色。強制加入当時はYAMATOとの握手を拒否していただけに、動向が注目されたが、試合はいたってMBらしくこの試合も奇襲でスタート。いやいやという感じはみじんも見せずに戸澤を逆さ吊りにしてGammaが塩を撒き、CIMAがホウキで掃いて戸澤に大ダメージを負わせる大悪党ぶりを展開。だがこういうやんちゃなCIMAがかえってきたことはちょっと嬉しかったりもする。
個々ではMONSTER EXPRESSも一矢報いようとはするものの、後がなかなか続かない。
鯱を孤立させると、Gammaがアックスボンバーからガンマスペシャルで3カウントをとった。最後までやりたい放題のもとベテラン軍は果たして本当にヒールに染まってしまったのか?はこの時点ではまだ明確ではなかった。
【第5試合】◎オープン・ザ・トライアングルゲート選手権試合◎
《王者組》堀口元気H.A.Gee.Mee!!&×ジミー・ススム&斎藤“ジミー”了vs《挑戦者組》望月成晃&ドラゴン・キッド&○ビッグR清水
(19分23秒 砲丸投げスラム)
実質ベテランだらけの中で唯一異彩を放っていたのがビッグR清水。ドラゲーでは数少ないパワーファイタ―という立ち位置は正直両津キャラをやっていたときよりずっと魅力的に見えた。まあYAMATOにしろ清水にしろ元ネタがNXTだというのがもろばれだけど、オリジナルのビッグ・E・ラングストンとはまた違ったキャラになってるし、なにより両津時代を知ってる人間ほど今回の変身は驚いたはずだ。てっきりお笑い路線でいくものとばかり思っていたからだ。このメンツの中で若さと勢い、そしてパワーをだらよりももっているというのは大きな強みだろう。
圧巻だったのは、終盤ススムが清水を孤立させラリアットを3発、4発と叩き込んだが清水は強烈なラリアット一撃でなぎ倒した場面。ジャンボの勝ちが通用しない相手という意味で、強烈に印象付けた。このほかにも勝負所で清水が絡むことが多く、モッチーやキッドがいかに彼を信頼しているかがよくわかる試合だった。最後も望月が三角蹴りでアシストして清水が砲丸投げスラムで初戴冠というこれ以上ない出来。実は帰りのバスで結構清水の変身に驚いていた人が興奮しながら話をしていたんだけど、その気持ちもよくわかるなあと。いや、お見事でした。
【セミファイナル】オープン・ザ・ツインゲート統一タッグ選手権試合
《王者組》×T―Hawk&Eitavs《挑戦者組》○YAMATO&サイバー・コング
(25分56秒 ギャラリア)
最近の流れはチェックしてなかったんだが、どうもミレ二アルズはMBに狙われ出してから若干出てきた当時の勢いがスポイルされかかっているようにみえた。新世代の旗手として登場したYAMATOあたりは特に面白くないんだろう。全体的にルードだからというより私怨でミレ二アルズに向かっていく感じがみてとれた試合だった。場外にいるマリアらにさかんにちょっかい出していたし、その辺の戦いぶりが逆にT-HAWKあたりは面白くなかったのか、サイバーにも当たり負けないぶつかりあいで中盤は大いに見せてくれたが、終盤畳み込む場面で若さが出たか、YAMATOの垂直落下式ブレーンバスターからの、スリーパー、そしてギャラリアでフィニッシュとなって、まさかの防衛失敗。
勝ち誇るYAMATOは「セミファイナルは俺たちYAMAコンの大勝利だ。おい博多、今日の俺も、いや、今日の俺たちも……」といいかけたところで会場の声が先に「かっこよかっただろ」といってしまったため、やや怒り気味で「先に言うな!・・・・かっこよかっただろ?お前らも知っての通り、12月16日に俺たちMAD BLANKEYは土井ダーツによって生まれ変わった。だが大阪06の二人は握手を拒否して、今日はセコンドにも付かなかった。K-ness.、これはどういうことだ?」と大阪06とは未だ和解してないことを告げた。K-nessも説得は難しいという。そこへ大阪06がK-ness.を押しやってリングインし、
なんとミレニアルズに暴行して、彼らを下敷きに椅子を設置して座ったではないか。間を取ったあとにYAMAコンと大阪06は握手&抱擁で、結束をアピール。
CIMA「おい、YAMATOサイバー、俺らはダーツに逆らうつもりはない。むしろ、この状況を楽しんでいる。確かに後楽園では握手をせんかった。でも憎きミレニアルズからツインゲートのベルトを取ってくれた。揉めるよりやることあるやろ。」と標的はミレ二アルズであることを表明。Gammaも「MAD BLANKEY最高じゃねえか。」と同意してさらにミレ二アルズに暴行。これで会場は大ブーイング。
意に介さないYAMATOは「ミレニアルズ、来月後楽園で5対5が決まってるのに何故セコンドにフラミータがいない?改めて今日、元ベテラン軍のゾンビ共が加わってMAD BLANKEYが生まれ変わった。博多、そしてドラゴンゲートファンズよ、2015年のMAD BLANKEYを楽しみにしておけよ」と捨て台詞を残して去っていった。
【メインイベント】オープン・ザ・ドリームゲート選手権試合
《王者》○B×Bハルクvs《挑戦者》×鷹木信悟
(35分6秒 ファーストフラッシュ)
ここまで散々二人の10年ストーリーが映像で語られいやが応でも盛り上がらざるを得なかった。そしてやはり次世代の、闘龍門時代を知らないドラゲースターズがこうして団体最大の大会のメインを務める。ある種感慨深い。他団体のスターの力も借りず、自力の営業だけでここまできた。実は開場前鷹木が屋台の前にコスチューム姿で現れ、いつも陰でささえてくれているお店の方と談笑していた。それは余裕とかではなく、メインの重圧に対する緊張緩和にも見えなかった。実に自然な感じでとけこんでいたのが印象的だった。
序盤はロックアップからヘッドロックとオーソドックスな攻防。鷹木のリストロックはハルクが側転で切り返すし、鷹木がタックルにくるとハルクはリープフロッグ。互いにヘッドシザースでみせあったなかなか重厚な展開。しかし試合が進むにつれてお互いがお互いをつぶしにかかる。そのひとつひとつに「こいつにだけは負けたくない」という執念みたいなものが宿っていた。ただ単純に時間を長くしてるわけではない。二人ともフルで動き回っていた。本当のタフマッチだったといっていい。中盤から両者ともフラフラ。鷹木にスワンダイブ式ニールキック→E.V.Oと畳み掛けたハルクは、起きた鷹木にミドルを見舞う鷹木も足をふらつかせるが、ハルクのスワンダイブ式ミサイルを喰らったあとも、走り込んでラリアットを放ち意地を見せる。こうなるとどっちが先に沈むか?根競べである。しかしなんと崇高な意地の張り合いだろうか?素晴らしいとしか言いようがない。鷹木はブレーンバスター狙いを耐えられるとパイルドライバーで叩きつける荒業を見せ、左でのラリアット→コーナーパッドへのアラバマスラム→パワーボムとつないで、さらにMADE IN JAPANを狙う。しかしハルクが切り返しオーバーヘッドキック→F.T.Xとたたんでくるがこれも鷹木がキックアウト。
時間はとうとう30分を超えた。もはやこの領域にきてしまうと、憎しみがどうとか言う問題ではない。鷹木は串刺しラリアットからハルクをコーナーに設置、雪崩式ブレーンバスターからクラッチを離さずE.V.O、さらにラリアットを見舞うがこれも2で返される。
とうとう四つん這いの頭突き合戦がはじまって力尽きたかと思いきや、ここから立ち上がってでエルボー合戦。まだひかない両者。ハルクは背後にカカト落とし→背後にファーストフラッシュ。さらにE.V.O。そのうえ、これが決まらないとみるやファーストフラッシュを2連発からのフェニックス!だがこれを鷹木は1で返す!もう鳥肌が立つなんてもんじゃなかった。最後は誰が見ても「もうかえしてくれるな!」と思ったハルクのファーストフラッシュ。ついに力尽きた鷹木は3カウントをきいてしまった・・・しかし勝者のハルクもまたベルトを受け取れない上に立ち上がれない状態になっていた。セコンドの清水が必死になってアイシング&コールドスプレーで手当てをするが、ハルクはしゃべれる状態ではない。
いや、年末ラストにベストバウトがでてしまうとは!これを博多でやっちゃうっていうのがドラゲーの本気さだよな。そして鷹木とハルクの10年の時がつむいだライバル関係。ずっと鷹木の背中を追ってきたハルクにしてみたら感無量だったことだろう。しかし、やっとマイクを持ったハルクは絞り出すように「今日はたまたま俺が勝ったよ、お前との戦いはいつも紙一重だよ。お前との戦いは終わらない。いつでも待ってるからな。」と片膝をつきながらも鷹木との再戦を約束。最後はダメージのでかいハルクを気遣ってDia.HEARTSのメンバーがアドリブでつないだが、ベテラン2人は何も考えてないとのことでグダグダになりかかったが、最後は清水が「今日初めてベルト巻けました。DRAGON GATEいちの力持ちになります!」と宣言して大会を締めた。
後記
今回は完璧にしてやられた。そして新しいことが売りだったドラゲーがしっかりした歴史をつむぎ、それを新しい世代が受け継いでいっていることに驚いた。
今までドラゲーの年末大会はどうも腰が重くなっていきにくかったりしたんだが、来年からはちょっと考えないといけないなあ。いや、でもいまだ興奮さめやらないし、やっぱすごい試合だった。
見に行って心の底から本当によかったと思える大会だった。みんな本当にありがとう。鷹木、ハルク本当にありがとう。だからプロレスは素晴らしい!