東京女子プロレス「TJPW CITY CIRCUIT~福岡公演~」
(2022年6月26日(日)福岡・西鉄ホール:観衆270人-超満員札止め‐)
イントロダクション
2014年の福岡初進出以来約4年周期で開催される東京女子。
今回は2019年3月31日に博多スターレーンラスト大会以来の福岡開催となった。
もっとも本来は3年前の4月に開催予定だったのが、コロナ渦で中止になり、そのまま時はすぎ、結果的に今回も約3年3か月の間があいてしまった。
しかし過去三大会と明らかに違うのは、チケットが前売りソールドアウトになっていることである。
これを単に「荒井優希」効果とみるか、そうでないかは判断に迷うところではあるが、DDTですらやっていない西鉄ホールチケット完売というのは、今後の福岡大会開催に向けての追い風にはなっただろう。
下関→西鉄ホール
今朝方までぱらついていた雨は昼までにあがり、蒸し風呂のような天気の中、北九州へ。
今回も周辺駐車場が満車だったため、昔使用していた場所にいってみたら、日・祝日限定で値段が下がっていたので、そこに駐車。
こういう場所での100円単位は、後々のチケット代に跳ね返るから、節約は大事!
今回もこだまに乗ったが、時間帯が違うせいかハローキティ号には当たらず。まあ仕方ないか。
新幹線に乗ってしまえば、博多駅から地下鉄経由で西鉄ホールに行ける。強い日差しとはここでおさらば。
天神で遅めの昼飯すませて、西鉄ホールへ。中に入ると異様に男性率が高い。いかにも最近の女子プロレスらしい客層かも。
まあ、自分もその中の一人なんだが。
オープニング
難波さんが登場するとやはり華やかになる。いつもユニバースで見ているんだが、やはり生観戦は格別である瞬間だと思う。
そしてアップアップガールズ(プロレス)の歌のコーナー。女子プロレス=歌という伝統を何げに継承しているのも、東京女子プロレスの特色である。
今回はコロナ禍による大会中止を挟んでいたからか、彼女たちのパフォーマンスにもいちいち感情が揺さぶられた。
オープニングマッチ:15分一本勝負
○宮本もか(6分13秒 羅生門)●鳥喰かや
2021年のサイバーファイトフェスでデビューした鳥喰と、2020年デビューの宮本は博多初登場。
東京女子は次から次から新顔が出てくるイメージがあるので、こうしたフレッシュな顔合わせが毎回見られるのは、本当にありがたい。
宮本もかは、長野じゅりあ同様伝統派空手の出身なのだが、デビューしてから、ルーツを感じさせる動きはあまりみせない。
蹴りよりも突き技に活路を見出しているのも面白い。
対してペルソナレディの異名をもつ鳥喰は、スピードとトリッキーな動きが身上で、蹴りも使う。
この二人の顔合わせは個性が違いすぎて、それぞれの長所が引き立て合うという点では、噛み合う対戦相手同士なのかもしれない。
試合運びも全然違うのだが、非常に流れもスムーズで、好敵手と呼ぶにふさわしい間柄なのだろう。
最後は宮本の羅生門が炸裂して鳥喰はギブアップ。強いて課題があるとしたら、宮本には、羅生門以外の手札をもう一つ二つ覚えておけば、案内サクサクと出世しそうな気がした。
第二試合:ワンスプレーOKルールマッチ 15分一本勝負
○ハイパーミサヲ(8分2秒 ハイパミリターンズ→片エビ固め)●遠藤有栖
色んな立ち位置で試合が組まれる遠藤だが、今回は東京女子プロレスいち癖の強いハイパミが相手。
まあ、遠藤がどこまで愛と平和を守るニューヒーローに爪痕を残せるか?に注目してみてみたい。
ハイパミ曰く「真っ直ぐすぎて勝てない」遠藤有栖。その遠藤に「コールドスプレーは一回までなら使用OK。二回目以降は即反則負け」という珍ルールを提案。
これによって、コールドスプレーが一回だけ公認凶器になってしまった。
しかし、コールドスプレーを使い慣れている?ハイパミはあっさり一回目を噴射。先に使い切ってしまったせいで、自分が提案しといてコールドスプレーが使えなくなってしまう。
遠藤は、そんなハイパミを徹底的にキャメルクラッチで絞り上げるが、あと一歩が及ばない。
ついにコールドスプレーに手を出すが、こちらも早々と使い切ってしまった。
しかし、どさくさに紛れて木曽レフェリーが巻き込まれてしまうと、レフェリーがみてないことをいいことに、ハイパミは二回目のスプレー噴射から、スプレー缶を遠藤に手渡し、遠藤の反則負けをとろうとした。
とはいえ、試合が熱を帯びたのはここからで、遠藤の執拗なキャメルクラッチに対して、ハイパミはチキンウイング・フェースロックでこれに対抗。
序盤からは信じられないグラウンドの攻防から最後はハイパミ・リターンズで熱戦に終止符が打たれた。
前半のコミカルな部分にも、後半のアツい展開にも遠藤はしっかりついていけていた。たしかにミサヲの余裕までは奪えなかったが、覚醒を予感させるには十分な試合だった。
第三試合:20分一本勝負
乃蒼ヒカリ& 角田奈穂(9分35秒 ブリザード・スープレックス→体固め)鈴芽&●猫はるな
乃蒼ヒカリ&角田奈穗のふりーWiFiも福岡初上陸。対戦相手の鈴芽と猫は小回りのきくスピード中心のチームで、対戦相手としては非常にバランスがとれている。
さて、戦前からふりーWi-Fiと、猫鈴コンビは手が合うのではないか、と予想していたが、蓋をあけたら予感的中。
ダブルの攻撃主体のふりーWi-Fiと、スピードで撹乱する猫鈴コンビは非常に手があっていた。
こういう試合が真ん中あたりにくると大会が引き締まる。
ただ、普段から正式にチームとして組んでいない分、特に猫はるながローンバトルになってしまったのはもったいなかった。
鈴芽には遠藤有栖との「でいじーもんきー」があるため、猫鈴コンビが本格的に組んでいく流れは作りにくいのはわかるんだけど。
結果的には、普段から組んでいるふりーWi-Fiが、呼吸の差を見せつけた感じの勝ち方になっていた。
第四試合:3WAYマッチ:20分一本勝負
辰巳リカ vs 上福ゆき vs らく
(○辰巳リカ:7分20秒 ミサイルヒップ→体固め●らく)
3WAYは、DDTグループではお馴染みの試合形式。ゲーム性は高いが何げに選手の本音が垣間見える点が面白い。
また、よくしたもんで本音を出させたら面白そうなメンツが揃っているのも見どころ。
仮に大田区の前哨戦的に辰巳リカと中島翔子が混じっていたら、本音の部分がイマイチぼやけてしまうだけに、絶妙なマッチメイクといえるだろう。
博多大会には山下&伊藤の凱旋というテーマがあるため、前哨戦はフィーチャーされにくい。
従って辰巳リカがこの位置にいるわけだが、サイバーファイトフェス2022の4WAYに出場しながら、勝敗に絡めずプリンセス・オブ・プリンセス選手権の挑戦者になれなかった上福と、そこにエントリーされていなかったらくにしても何らかの思いがあるだろう。
ところが、ふたを開けてみるとサイバーフェスの時より辰巳リカがより強くなっていたのだ。王者・中島翔子との前哨戦がなくても、グッドコンディションをキープし、挑戦者たらんとしていた辰巳は、終盤ほかの2人を圧倒してるかのように見えた。
そしてまたしても上福は勝敗に絡めず、意外にも前に出てきたらくが、ホワイトドラゴンのミサイルヒップに沈む結果となった。
正直テーマが見えにくい試合になるのかなと思ったが、とんでもない。やっぱりだてに辰巳リカはトップ戦線にいるだけの選手ではないのだな、と思わせた一戦だった。
セミファイナル:20分一本勝負
○坂崎ユカ&瑞希&桐生真弥(13分13秒 マジカルメリーゴーランド→片エビ固め)渡辺未詩&●原宿ぽむ&荒井優希
荒井優希をみるポイントは2点。アイドルとしての視点と、プロレスラー荒井優希としての視点。
個人的にはHKTもSKBも生でみた事はないのだが、なぜか松井珠理奈と荒井優希の二人は博多で実物をみているのだが、それよりはプロレス大賞新人賞を取った荒井の実力をやはりみてみたい。
さて、全カード中大田区の前哨戦といえる絡みは荒井とマジカル・シュガーラビッツ(マジラビ)の顔合わせだけなのだが、意外にも試合の中心にいたのは原宿ぽむだった。
そもそも普段からやりたい放題するマジラビは、原宿ぽむの靴に目を付けた。そしてぽむを捕獲すると、靴を脱がせて入場ゲートの方に放り投げてしまった。
・・・って、いじめっ子か!
ところが、靴を奪還したぽむは、おかえしにでんでんだいこwith靴で反撃に転じた。
ここにGHC王者・小島聡を驚愕させた渡辺未詩の体幹ショー(ジャイアントスイング付き)があって、並みの新人なら埋没してしまうところだが、荒井はこのメンツの中でしっかり自己主張していた。
序盤のグラウンドでもしっかり先輩の動きについていけていたし、名古屋から通いで練習している、その情熱には頭が下がる思いだった。
試合は、坂崎がマジカルメリーゴーラウンドで、ぽむを仕留めたが、荒井優希の存在感までは消せなかった。
さあ、大田区ではどういう結果が待っているだろうか?
メインイベント:20分一本勝負
中島翔子&●愛野ユキ(16分35秒 Skull Kick→エビ固め)○山下実優&伊藤麻希
チーム1210000(ワンツーミリオン)としては、意外にも初凱旋となる山下&伊藤。3年3ヶ月前だと伊藤ちゃんがカリスマになりつつある頃だったし、1210000自体結成されていなかった。
そういう意味では両雄がついに並び立つ日が来たのである。プロレスは長く見続けるといろんなことがある。
さて、このメンツを見てだいたい勝敗は読めていたのが、そこを覆してほしいという願いは見ている側にある。
愛野ユキ自身、すでにシングル王座挑戦歴もあり、メインイベンターの一人として期待されている存在だと思う。
しかし、これだけのメンバーがそろってしまうと、愛野が一枚落ちに見えてしまうのだ。
対角線にいる伊藤だって最初からカリスマだったわけではない。それこそアイドルではものにならず、そのことを「クビドル」と自虐しながら闘ってきた結果「今」がある。
3年前なら山下の隣に伊藤がいても「伊藤が負けるよね」と思ったかもしれない。
でも今や世界の伊藤麻希になっているのだ。愛野ユキにもそのポテンシャルは十分にある。愛野ユキがとられて当たり前をと思われている現状を、何とか覆してほしい。
今回は正直、1210000としての初凱旋に負けてしまった感はあるが、地元だからといっていい顔させなくてもいい。
愛野がそうした自己主張をしはじめると東京女子はもっと面白くなるだろう。
後記
終わってみれば満足度の高い大会だったが、個人的には物販を優先して?ひな壇を出さなかったり、全席指定なのに入場に待機列ができて、入場するのに時間がかかったり、いろいろ細かい点では課題があったように思う。
また、NOAHやDDTではさかんに宣伝しているレッスルユニバースへの加入申し込みスペースもなかったし、当然両団体なら用意されている会員特典もなかった。
物販は確かに大切かもしれないが、そればっかりになってしまうとちょっとどうなんだろう、とも思ってしまった。
まあこれは東京女子に限らず、女子プロレス全般の課題かもしれないが・・・