大日本プロレス門司大会
(2015年10月21日・水・福岡・門司赤煉瓦プレイス 赤煉瓦ホール )
イントロダクション
この日は朝から予定が立て込んでいたのだが、前の用事が早く済んだので開始一時間前に会場についた。
みると赤レンガの前で選手がダッシュを繰り返したり、関本がダンベルで運動したり柱を使って、てっぽうのようなことをしていた。
こういう練習風景は昔のプロレスではよくみられたのだが、いつのころからか見られなくなっていた。
オープニング
練習を見せるというのは実はとても大切なことで、小さなところから「プロレスってすごいんだ」と思ってもらえる効果があるのだ。
もう何十年も前、はじめて新日本を見に行ったとき、会場の隅では普通に選手がウォームアップをしていたし、欠場中だった若き日の高田が黙々とサンドバックを蹴っており、その打撃音でギャラリーがどよめいていたのを今でも思い出す。
ちょっとしたことなんだけど、練習はうそをつかないという信念は、こういう体験で植え付けられた感じがしているので、きっと練習を見ることができた人には、なんらか伝わるものがあると思うのだ。
◇第1試合◇▼20分1本勝負
橋本大地&○橋本和樹(8分39秒)X菊田一美&丸山敦
※P.K→体固め
このカードを第一試合にもってきたあたりに大日の本気がうかがえる。
でも正直言うと、せっかく伸び盛りの若手がたくさんいる稀有な団体なんで、若手同士のぶつかり合いも見たかった。まあチーム大和の2人も若いんだけど。
この試合では、素顔の丸山の試合をみるのははじめてだったし、大地の試合をみるのもゼロワン以来。となると期待は否が応でも高まるというもの。
もはやタイガースマスクの面影はかけらもないので、まったく新しい選手として丸山をみることができた。このくらいの選手になると引き出しも多いため、序盤はきっちりと腕を取り合うオールドファッションなレスリングに終始。今年デビューしたばかりの菊田にしてみたら、いいお手本になったことだろう。
その一方で和樹とはバチバチやりあい、大地を引っ張り上げないといけないのだから、なにげに負担もでかい。なんでやっぱり丸山がつかまる場面も多くみられた。
しかしデビュー半年で、チーム大和と渡り合っても全然位負けしてないのは、さすが大日の若手だけのことはある。とはいってもやはり経験値が違うので、タッグワークはこれから経験を積んでいけばいいかな。
気になったのは大地で、ゼロワンにいたころとそんなに変わったようには見えなかった。テーマ曲も「爆勝宣言」から「闘魂伝承」に変わっただけで、どっちも親父のテーマ曲だし、何のためにIGFにいったのかなあ?
◇第2試合◇▼30分1本勝負
○高橋匡哉(7分58秒)X植木嵩行
※肩固め
WNCにいたころは変なキャラクターをさせられて気の毒だった高橋も、大日では実に生き生きしてみえる。
デスマッチで新境地を開いたかと思いきや、植木のようなタイプともしっかり試合ができ、しかも植木のいいところを引き出して、きっちり試合を終わらせるあたり重用されてしかるべき人材ということがわかる。
植木もああいうキャラクターをずっとやっていくのかどうかはわからないけど、今は色んなタイプの選手にぶつかって、自分の引き出しを増やしていってほしい。
それにしても、辞めた石川にしろ、欠場している河上にしろ、いなければ大ダメージになりそうな選手がいなくても、シリーズが開催できる体力を備えているのは、さすが大日本だと思った。選手の看板で集客するのではなく、大日本というブランドとファンとの信頼関係の賜物だろう。そういう団体にはもっと地方を回ってほしい。若い選手にとっては、そういう体験が何よりの財産だからだ。
◇第3試合◇▼30分1本勝負
レイ・パロマ&ヘラクレス千賀&○ツトムオースギ(8分44秒)X谷口裕一&バラモンケイ&バラモンシュウ
※逆さ抑え込み
いやあ、レイ・パロマ久しぶりにみたなあ。入場テーマのストリッパーといい、妙なダンスといい、意味なくケブラーダ重ねる試合運びといい、全く安定している。
入場時バラモンが妙におとなしくて、パロマのダンスもなんか冷ややかにみていたのが、逆になんかありそうな気配がしていた。
そして、やはり長すぎるパフォーマンスにしびれをきらしたらしく、襲撃。
会場からパロマによってリングにあげられ、パフォーマンスに付き合わされていた女性客にまず水攻撃。そして、所狭しと暴れまわるバラモンたち。
暴れまわるのだが、平日の夜でしかも、北九州には翌日ノアがくるプロレスラッシュのタイミングのせいか、お客が少なすぎて、全く逃げ場に困らなかった。
まあ、バラモンや千賀やオースギはいつも通りなんだが、この中に谷口がいて、何をするのかなあ、と思っていたらしっかり溶け込んでいた。
考えてみたら、NOWの後楽園大会でまだ練習生だった谷口と山川のエキシビションをみている私としては、目の前のややくたびれぎみなレスラーが、あの日の谷口と同一人物とは、にわかには信じがたい気分になる。まあ、毎回思っているんだけど。
考えてみたら大日本も20年。創世記には女子部もあったし、訳のわからない三国対抗戦(日本、韓国、アメリカ)もやってて、アメリカ軍にグレッグ・バレンタインとかがきてたりしていた。
あの頃の景色を知る選手もファンも、いまや一握り。でもあれがあって今があると思うととても感慨深かった。人に歴史あり、団体にも歴史あり。プロレスは長くみてるとやはり奥深く味わい深い。
◇第4試合◇▼30分1本勝負
神谷ヒデヨシ&○浜亮太(11分01秒)X佐久田俊行&関本大介
※オオキドプレス→体固め
レッスルワンから出稼ぎ?にきている浜が日本人最重量レスラーで、対する佐久田が日本人最小レスラー。そこそこタッパがある神谷と、筋肉の鎧をまとう関本とが揃うと、まあ見事に四人とも体型がひと目でわかるほど違う。しかし、言い方は悪いがこういう場末の見世物臭漂うカードは大日本に限らず、昔はどの団体でも普通に見られた。
今はジュニア&ヘビーの混成タッグマッチでも、ジュニアはジュニア同士とか、ヘビーはヘビー同士とかいう試合内容になりがちだが、大日本はさすがツボを心得ていて、佐久田が浜に立ち向かう場面がたくさんあった。
もちろん浜対関本との絡みもあった上で、格差対決もガンガンしかけていく。この辺りの潔さと胡散臭さを20年たっても失っていないのは、大日本のいいところでもある。
しかし、佐久田にしろ神谷にしろ若手が本当に素晴らしいので、単に胡散臭いだけでなく、試合内容からフレッシュな勢いとエネルギーも感じられる。だからありきたりなようで、そうでない闘い模様になるのかもなあ、と思ってみていた。
◇第5試合◇▼30分1本勝負
○岡林裕二(11分11秒)X宇藤純久
※アルゼンチン・バックブリーカー
調べてみたら、宇藤はもともと学プロ出身でデビュー前に他団体にも参戦経験があるらしい。同じ2015年デビューでもひとりセミファイナルにでていたのは、何かあるなとは思っていたがタッパもあるし、岡林に全く臆するところがない。そりゃ、岡林に勝つとは誰も思っちゃいないが、数年後にはわからないな、というものは見せてくれた。まさに大日の逸材である。
現時点での欠点があるとしたら、やはりチョップの打ち方が弱い。岡林と比べるのは気の毒なんだけど、課題を克服すればもっといい選手になれるのは間違いない。いずれ岡林とチョップ合戦を繰り広げても、宇藤がうち勝つイメージが容易にできるのは、彼に光るものがある証拠だと思う。
しかし、今年デビューした新人が、いきなり現ストロング王者とシングルで闘う機会が得られるというのはすごい話で、その上内容がチャレンジマッチになっていないというのは、特筆に値するだろう。こういう常識はずれなカードが組めて、しかも何らかの結果を出せている大日の若手勢はマジで末恐ろしい。
◇第6試合◇▼有刺鉄線ボード6人タッグデスマッチ/30分1本勝負
稲葉雅人&星野勘九郎&○伊東竜二(13分09秒)X塚本拓海&“黒天使”沼澤邪鬼&アブドーラ・小林
※ドラゴンスプラッシュ→体固め
会場によっては規制の関係でデスマッチアイテムが使えないところも多い。FMWみたいに継続使用を考えずにむちゃくちゃやらかすのではなく、会場の都合に応じて自分たちが工夫してきた歴史が大日にはある。
だから、ある意味電流爆破までOKしてしまった博多スターレーンでは、アイテムが使いたい放題であり、それはそれで頭を使うんだけど、アイテムが使えない状況下で、知恵を使うのが大日の地方大会の真骨頂といっていいだろう。
大日が山口県で最後に開催した会場が青年の家で、ここでは有刺鉄線すら使えなかったので、椅子をリングに敷き詰めてその中で伊東が試合していたのをハッキリ覚えている(本人は忘れていたけど…)。
赤煉瓦プレイスは普段フリーマーケットや各種イベントでも使用される会場なんで、破片が残りやすい蛍光灯はNGだろうとは思っていた。
なので、折り合いをつけた結果が有刺鉄線ボードなんだろう。ボードの利点は設置のし易さにあるが、いくつか欠点もあって、まず設置されたコーナーサイドからは死角を作ってしまうため、お客には優しくない。
あと、ボードが割れない状態で布団のように選手に被さると、受けている側は痛いのに、お客くらは全く様子や表情が見えず伝わりにくくなることもありうる。
その割にはスターレーンなどで複数のアイテムを組み合わせて使う大日のスタイルを見慣れていると物足らなく映る危険性もある。
だが、今の大日にはストロングとデスマッチという二枚看板があり、どうしてもデスマッチがメインにならないといけないわけでもない。だからこそデスマッチ組の選手たちは、己の存在意義を証明するために、こうした不利な条件下でもお客を満足させねばならない。
そういう意味で言うと、この6人はそれぞれこの場で生き抜こうという強い意志を試合で感じることができた。押し売りが名物になっている極道コンビのしたたかさも、長年デスマッチ路線を走ってきた伊東、アブ小、沼澤にしても、それがきっちり試合で出ていた。だからアイテムが少ない=試合がつまらないということではない。ここが大日のすごいところである。
後記
大日の欠点としては、博多以外の地方大会をやらなかったことで、スターレーンまで交通費かけてそうそう出かけていけるわけではない事情のある私にとっては、北九州大会があることは本当にありがたい。正直下関で大会を開くより、まだ北九州で大会を組んでもらったほうが建設的である、といわねばならないのは口惜しいのだが、現実は現実。いずれそうやって定着してきたら、また山口県にもきてほしい。
だいたいどこの団体もそうだが、一回出てきてだめだと本当に潮が引くように来なくなる。でもそれじゃいつまでたっても地元との信頼関係は育ちようがない。そこをやらないで大都市だけで大会を開いているといずれパイは縮小していくだろう。大日がこれに懲りずにまた来てくれることを切に願う。
あと、今大会でいうなら売店は最上階につくらず、一階でもよかったと思う。わざわざ上まであがってグッズを買いに行くのには、この会場は少々不便なんで、次回から検討していただけるとうれしい。
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