九州プロレス.北九州市制50周年事業『北九州ば元気にするバイ!』’14
(2014年1月5日 北九州芸術劇場 大ホール)
はじめに
*今回はかなり不快な表現が含まれるかもしれません。
九プロファンの方、ならびに関係者の方、ご気分の悪い方は読まないでください。
イントロダクション
前年度は九州のレジェンド藤波辰爾が参戦、またメインで阿蘇山が筑前を破って「北九州のピープルズチャンプ」となって感動のフィナーレを迎えた。正直2013年では最高の部類に入る大会だったと思う。しかし・・・
年頭に最高の大会をやってしまった九プロは2013年の一年、というかこれまで積み上げてきた問題点が徐々に表に現れるようになっていった。起爆剤として玄海の登場もあったが、そこからさらなる積み上げがあったかどうかといわれれば怪しくなってくる。正直めんたいとの防衛戦ですでに己を出し切ってしまった感がある玄海。そこにチャレンジすらできない筑前と敗れ去って以来主張を控えてしまっためんたい。NPO組織をしてはどうか知らないけど、プロレス団体としてこれは非常にまずい。もう一回頂上に返り咲こうという執念がここまで九プロをけん引してきた2人から欲や執念や熱を感じなくなったのだ。
そこへきて阿蘇山の討伐団入りも思ったほどのサプライズにはならず、討伐団自体の立ち位置がうすらぼんやりしてきている。
オープニング
今回の道頓堀プロレスの投入にしてもまるで効かない薬の量を更に増やして投与しているようにしかみえなかった。正直メインストーリーになるべき討伐団との抗争がマンネリ化している上に、カンフル剤として投入してくる外敵は、玄海、めんたい、筑前の3人のルートからしか呼べなくなってきている。
このルートだとちょっとしたファンならたちどころに読めてしまう。結局この三人の人脈から予想できる招聘選手なんて面白くもなんともない。最たるものは昨夏の長井満也登場かもしれない。
これで筑前のルートは完全に「詰んでしまった」。九プロの悪い癖で、そういう選手同士のつながりでレスラーをブッキングすると、どうしても「仲良しこよし」感がみえて、本気で「対抗戦」をしようという気概みたいなものが感じられない。沖縄プロレス然り、みちのく然り、大阪然り。外敵との抗争が「線」になったためしがあっただろうか?やはり軸は討伐団との抗争なのに、肝心の正規軍がよそ見ばかりしている。それが今の迷走する九州プロレスの暗黒面のひとつなのだ。
第一試合:【北九州ば元気にするバイ!キックオフ!~双子のギラン誕生!~ 】
○キング・ギラン&カイザー・ギラン(9分7秒 片エビ固め6分37秒 ※ダイビング・ギラントーンボム)阿蘇山&キシャーン●
昨年、感動のタイトルマッチを行った阿蘇山が第一試合・・・・ここにも迷走感がたっぷり出ている。ギランはいつの間にか北九州限定レスラーになったけど、設定では5人兄弟ということになっているらしい。しかし仮にも友好関係にあるギラヴァンツのマスコットに勝手な設定を加えてもいいのか?バンバン、ワイルドに続くギラン一族といってもバンバンや行方不明だし、ワイルドは失踪・・・・J2の公式マスコットの一族はなにげに家庭環境が荒んでいるのか?で、今回、双子の兄弟であるキング&カイザーがデビューすることになったわけだが、まあ、先ほどもいったように九プロのキャラクターは入れ替わりが激しい。そこを逆手にとったのがばってん×ぶらぶらだったりするんだけど、多くの場合、中身を他団体から借りてきているのが実情なんで自前で選手を育てているわけでもない。よってスケジュールがあわないと一時のがばいじいちゃんみたいに一年あまり出られないというケースもでてくる。いい加減自前で所属選手を増やしていかないと先細るのは目に見えてるし、なにより定着しないキャラクターにはファンも感情移入しにくいし。
この試合もだから、デビュー戦といっても、ギラン兄弟としてのデビューがこの試合ということになる。ギラン兄弟はダブルドロップキックで場外へたたき落とし、ダブルプランチャと玄人っぽい動きで歴代ギランの中でもポテンシャルの高そうなところをみせつける。一方で討伐団は反則を繰り返すといういつもどおりのスタイル。そこに審判がイエローカードやレッドカードを提示するのだが事前にイエローやレッドくらったら反則負けにするとかアナウンスしておけばいいのに、単純にサッカーキャラだから思いつきでサッカーっぽくレフェリングしてみました的な扱いではサッカーにも失礼というものだろう。
いいところといえば、キシャ―ンがギランのことを、まるで身内のような熟知ぶりでけん制し、阿蘇山の強烈な万トーンで畳み込んでいった流れがあって、試合は一進一退になりかけたが、阿蘇山のパワーボムをギランがフランケンで切り返し、キシャーンへ兄弟ダブルクロスチョップ、ダブルシュートからのギロチンでキシャーンを攻め込み、キングのダイビング・ギラントーンボムでフィニッシュを飾った。だが、正直ホームだから花をもたせた感が満載で、ギランを続ける意味あるのかな?といった試合だった。
第二試合:【闘いの九州ワールド物産展 3WAYマッチ】
ばってん×ぶらぶら vs ウォーターマン日田丸 vs タイフーUSA
○日田丸(8分38秒 体固め ※巨大しゃもじで殴られ)ばってん●
博多 vs 大分 vs USAの九州ワールド物産展3WAY・・・というんだけど、この三人が3WAYやる意味ってあるのかな?という感じ。当然3人とも所属ではないし、余った三人がここに入ったという形になったとしか思えないカード。今までだとこれでも結構面白くできて襤褸が出なかったのだが、今回はそうはいかなかった。
USAと日田丸は、一人で「ばってん多摩川ショー」を勝手に始めるばってんを無視して、シングルマッチのような体で正々堂々、技術とパワーでぶつかり合っていく。でもこれ、実をいうとDDTでは、ばってんがさんざんやってる手で新鮮味のかけらもない。もう少し工夫しないとただでさえゲーム性の高い3WAYでお客の目を引き付けることはできまい。いつもなら会場大ブーイングになるところを、微妙なブーイングしかとばないのはもったいない。そもそも博多ぶらぶら自体、後継選手がいなくて長く宙にういていたということもあって、ばってん×ぶらぶら自体がどこへ行こうとしてるのかが伝わらないキャラになってしまっている。これでは余計お客も混乱する。
ばってんはレフェリーを買って出るも相手にされず、脇で技もくってないのに痛がったり、エアー攻撃したりしてるんだけど、頃合いをみていい感じで混ぜないと本当に面白くなくなってしまう。この辺はばってんというよりほかの二人にも責任があるように思う。いっそ本当にUSA対日田丸の試合だった方が面白かったかもしれない。逆にいうとばってんを混ぜたメリットが全く提示されなかったということ。これは3選手ともに得をしない状況だと思う。3WAYはただ三人いればいいというわけではないということを考えてほしい。
第三試合:【新春わっしょい筋肉初詣】
筑前りょう太&田中純二●(14分17秒 エビ固め ※バイセップスエクスプロージョン)藤田ミノル&ゼウス○
ここまでの嫌な流れがここでも。なんとあおりVの映像が出ず、音声だけが流れるトラブルが。しかし藤田のパートナーは当初Xになっていたので、結果的には音声でゼウスとわかって、後で本人が登場したことでインパクトはより高まった。結果オーライだがまあそこはいいとしよう。だが藤田もなんでもこなせる器用さが災いして?だれとも徒党を組まない。というか組むことができない。これは藤田的にはアリなんだけど、筑前がこれを迎え撃つという図式は唐突すぎる。前回藤田に手痛い裏切りを受けたのは二年前である。そのリベンジのタイミングとしては遅すぎだろ?というのがこのカード。確かにゼウス登場は仲良しこよし路線とは異なるもので(まあ大阪が絡んでるということはビリーケン・キッドがらみではあるんだろうけど)それ自体は悪くないんだけど、このタイミングのずれた因縁抗争はちょっと旬を逸した感があった。もっともゼウスと筑前は昨年9月に大阪で因縁ができてはいるんだけど、あおりVではそこにはふれてなかった・・・
とはいえ、こっちでゼウスをみる機会なんてそうそうない。大阪プロレス2013年天王山覇者という「旬」はまだすぎてはいない。ゼウスは大阪で決着がついていない筑前を激しく意識してか強烈なタックル合戦から筑前を軽々リフトアップで持ち上げるなど、そのパワーの差を見せつける。普段こっちではパワー系でならす筑前が弱々しくみえるくらいゼウスは絶好調。替わった純二も力任せに首をひねり潰す。さらに二度目の激突では互角のラリアット合戦からゼウスのフライングラリアートに、筑前は立つことすらできない。
ゼウスに筑前のまっすぐ飛ぶバイ!からの純二のダイビングヘッドバッドの波状攻撃で活路を見出そうとするが、これも決定打にはならず、すぐに回復したゼウスは純二に引っこ抜きブレーンバスターさらに高角度チョークスラムで叩き付ける。朦朧とする純二へ豪快なバイセップスエクスプロージョンを決め完全フォールを奪うありさま。あと本人から聞いたら全盛期のアニマル(ロード・ウォリアーズ)以上のベンチプレスをこなしているくらい今のゼウスはパワーファイターとしても旬な存在になっている。決して器用なプロレスはできないけど、プロレスにかける熱い思いは本物だった。下手すると玄海の九州王座もとられかねない。この勢いで今年の九プロを席巻してくれると面白いんだけどなあ^^
第四試合:【九州プロレスサミット 九州プロレスvs道頓堀プロレス対抗戦】
●めんたい☆キッド&がばいじいちゃん&望月成晃(12分56秒 片エビ固め ※雷切)空牙&政宗○&ガメラス
11月の九州プロレスタッグトーナメントを制した政宗にパートナーの玄海が「お前暴れたりないだろう?」と余計なお世話?をしたおかげで、乗り込んでくることになった道頓堀勢。しかしこれも対抗戦というには「?」がつく。がばいじいちゃんは厳密にいうと九州人ではないし、望月は当然縁もない(闘龍門時代のめんたいの先輩にはなるが、お互い面識もないらしいし)、今は九州に住んでるけどもとは違う土地に生まれためんたいも含めるとこれで九州軍を名乗るのはどうかとは思う。個人的にはモッチーに全面にでてもらって普段ない道頓堀との絡みや、がばいじいちゃんとの連携も楽しみにしたかったんだが、流れはなぜかめんたい対道頓堀という構図になってしまった。めんたいを場外へ落としリングエプロンでムチ攻撃にはじまって道頓堀はめんたいを集中砲火。ロンリーバトルが続くめんたいに串刺し三連打のラストは空牙の霧吹き。めんたいのピンチに、終盤助っ人望月が三角飛びからスワンダイブの強烈なミサイルキックでチャンスを作り、場外へじいちゃんダイブ!望月は孤立するガメラスにカカト落とし、キック連打、そしてじいちゃんの敬礼サンセットフリップと助っ人勢大活躍なんだけど、ここまで来るのが遅すぎた感があった。場外の空牙からボックス攻撃を受け、めんたいが意識朦朧とするなか政宗の見事な雷切が決まり、団体対抗戦は道頓堀プロレスが勝利。
といっても内容ははっきりいって消化不良。原因はモッチーの出番が結局めんたいを救出したところしかなかったことにつきるが、3月以降にこの抗争を引っ張りたい思惑が試合をおかしくしたとしかいいようがない。モッチーが連続参戦するわけではないし、やっぱ矢面にめんたいが立たないと抗争は続かないのはわかるんだけど、そもそも討伐団との抗争を中途半端にしておいてまた次の標的を作るやり方は感心しない。なにより本当にモッチーを顔見世でしか使わなかったのはなんとももったいないよ。九州プロレスに限った話ではないが、プロレスの対抗戦がなぜ緊張感を失ったのかをもう一度この機会に顧みてほしいと思う。
第五試合:【北九州ば元気にするバイ! 九州プロレス選手権試合】60分1本勝負
〈王者〉○玄海(16分26秒 フランケンシュタイナー)相島勇人●〈挑戦者〉
九州プロレスのぬるま湯に浸かって本来の自分のプロレスを忘れていたという相島。確かにいいように使われてここまで引っ張られたんだから、本来なら討伐団率いて次の戦場を探したほうがいいのにとは何度も思っていた。
他団体でイキイキした試合をする相島をみるたびに九プロでの飼い殺し状態を歯がゆく思っていたのは事実である。一方の玄海も初登場時を超えるインパクトを残せずここまで来てしまった。
で、前に立つのは15年前鋼鉄の異名で九州のTOPスターに上り詰めていた相島なわけである。15年前の玄海には遠くて手が届かない存在だったかもしれない。
しかし師・阿蘇山を破り王座について、かつてのどこか頼りなげな若手選手だった15年前の彼ではない、今の玄海は九州プロレスの頂点にいる男なのだ。
だがしかし、15年前と変わらぬ相島をみて、かつての「彼」が心のどこかでよみがえったのか?夏に師匠越えを果たしたあの超新星のような輝きはこの日の玄海にはついぞ見られなかった。
ではそこにつけこんで相島が攻め込んで圧勝したかと思うとさにあらず。衰えたとは思いたくないが、やはり15年前と同じコンディションではいられないのが人間の体である。若い時ならバチバチやりあった上で完勝したであろう相手を、阿蘇山やキシャ―ンにくどいくらい介入させて、この日の相島はリング上で呼吸を整えていた。その姿は鋼鉄とは程遠いものだった。これでは名勝負にはなりようがない。だだすべりもいいところである。
玄海は、相島のブレーンバスターを切り返し玄界灘を炸裂させるものの、序盤でいいようにやられていてダメージが残っているのは明らか。トペを狙っても阿蘇山に足下を救われ、なかなかペースを掴めない。セコンドには筑前や純二もいたのだが、なぜか何度も襲撃されている玄海の救出に入らない。やっと討伐団と絡みだしたころには試合は終盤になっていた。
玄海はカウンターのフランケンシュタイナーで丸め込みかろうじて勝ったが難敵を下して二度目の防衛に成功したとはお世辞にも言い難い内容だった。玄海になるにあたって秀吉もかつての彼も過去のものとして封印したのではなかったのか?あの夏の日に見た玄海は幻だったんだろうか?
試合後「また、強い相島勇人と…また!逆に、指名させてください!」といっておきながら「この玄海に限界はありません!」ってだじゃれまで出してきたうえに「セミで、道頓堀プロレスと九州プロレスが対抗戦やって、九州プロレスがやられちまいました!勝手に、3月に空牙が参戦表明しましたが、のぞむところです!3月23日は、チャンピオンベルトを置いて、俺が、全面戦争、やってやりますよ!」とアピールしたのはいいんだが、道頓堀呼んだの、あんただよな?しかももう一回相島とやるといっておきながら、次回はベルト置いて道頓堀との対抗戦をするって・・・筋が違うでしょ?
怒りを向けるのは今日散々汚い手で介入した討伐団であって、直接の被害者である玄海には、一矢報いる使命があるはずなのに・・・・
エンディング
なんか、セミとメインで台なしにされた感がたっぷり。この際だからいいたいことを全部いっておくと、まず次回大会の前ふりを散々しておきながら一般発売は六日からとか(他団体なら一般発売の前に会場先行発売するのがもはや常識!)、大ホールの日程は一年前からわかっていたのに、営業がから回って、結局招待券をばらまく羽目になったのもいただけない上に、その招待客が最後まできていないせいで、会場の真ん中にはぽっかり空間ができていた。
あれはちゃんとお金出してこの日の大会を見に来た人に失礼ではないだろうか?いつもだとリングと観客席の距離が近い感じがするのに、この日はやたら遠く感じもした。相変わらずその場しのぎでキャラクターは増産するし(しかも自前で育てた選手ではないし)、思いつきで対抗戦の数だけ増やして収拾がつかない。この日の九プロは全部のボタンを掛け違えたような違和感だらけの大会になってしまった。
後記
九プロには特に子どもやプロレスがはじめての一般層が多い。それだけに一回の失敗が「プロレスってこんなもんなんだ」と思われるリスクが他団体に比べてとても高いことを肝に銘じておいてもらいたい。
来年は違う会場でやるみたいだけど、また2013年のような感動をみせてほしい。その期待があるがゆえに厳しく書いた。でも年頭にこういうのみちゃうとテンションさがるんだよなあ・・・・なんかキーボードをたたく手がとても重かった、新年一発目の観戦記だった・・・・