プロレスリング華☆激アステカデビュー25周年記念『こども食堂応援&イジメ撲滅チャリティープロレス』(日時:2018年9月29日(土)◇会場:八女市総合体育館)
イントロダクション
近年の私の観戦傾向として、華☆激に関していうと、さざんぴあ、さいとぴあ、古賀、篠栗と行く場所が固定化し始めていた。だから今回タイミングよく八女にいくことができたのは幸いだった。前回の八女大会はスケジュールが合わず断念したため、今年は満を持しての観戦になる。
なんせ超大型の台風が接近中ということで予報見ながらヒヤヒヤしていたが、九州接近は日曜から月曜ということで土曜開催の八女大会は難を逃れた。とはいっても強烈な台風の威力は上陸前から猛威を振るっており、北九州は雨だったし、八女につくと降っていないものの風が強くなっていた。自然災害が相手なんで誰が悪いというわけではないが、九州プロレスの国際センター大会のように、選手が到着できないとか、お客さんが会場にたどり着けない、とかいう事態だって十分に想定できる。
プロレスの大会が無事開催されること自体が奇跡だと私は思うようにしているけど、2018年は特にそれを痛感させられた一年だったように感じる。だからこそいただけたチャンスは目一杯楽しみたいのだ。
オープニング
あいにくの天気の中、いつもの華☆激よりは少なめだが、それでもそこそこ埋まるくらいは人が来ていた。台風が来ていたせいでたぶん例年だったら冷暖房がない施設の観戦は汗だくになっていたはずだが、ほどよく気温が下がった会場はそのまま座っていても冷たさを感じない。こういうのはありがたい。
プロレス教室は大人の部も子どもの部も大盛況。非常にいい雰囲気の中試合はスタートした。
第一試合:
コスモ☆ソルジャー & 〇エル・ブレイブ 1/20 KING &× ラウザ
コスモ&ブレイブは前・博多タッグチャンピオン。しかし、コスモ&KINGも博多タッグを戴冠していた時期があり、多少話がややこしい。おまけにKINGとラウザはこの中では大型の部類になる。コスモはキャリアの面でも大型選手を苦にはしていないだろうが、ブレイブには試練かもしれない。
前週の全日本ではこれという爪痕が残せなかったKING、そして華☆激にレギュラー参戦選手として定着したいラウザの思惑がどう交錯していくか?また、KING&ラウザというのは現タッグチャンピオンに当てても面白そうな顔合わせだけに、ここで印象に残る試合をみせてもらいたい。
試合は、大型コンビが体格を生かして前王者組を攻めまくる。ターゲットとして小回りのきくコスモよりブレイブを狙っていたようだった。なかなか勝機を見いだせない前チャンピオンコンビだったが、そこは百戦錬磨のコスモが比較的体力を温存していたのが、奏功した。やはりある程度コスモを痛めつけておかないと、長丁場の試合になった時はスタミナのあるコスモが有利になる。
リング内のKINGに十分ダメージを与えたうえで、場外のラウザにトぺを決めて、一人で八面六臂の大活躍。KINGもコスモの実力を知らないわけではなかったと思うが、インサイドワークと状況判断、そしてスタミナの面でコスモは4人の中で一枚も二枚も上回っていた。やはり若いころにキツイ練習を積んできた経験がこういうときはモノをいう。まさにコスモの独壇場になった試合だった。
第二試合:博運社 株式会社 楽園 株式会社 松岡左官工業 Presents アステカデビュー25周年記念イジメ撲滅プロレス公式戦
アステカ & ×ハラキリ・ハカタJr & 日向小陽 1/30 二代目上田馬之助 & 〇アズールドラゴン & 神田愛実
元々「ダークサイドにょきにょき」だった日向小陽が、海外遠征で若干キャラチェンジした影響か?それまで正規軍にいた神田愛実がダークサイドFTO側について、日向小陽が正規軍側についたカード。
前回のさざんぴあから本格復帰したとはいえ、今のアステカに多くは期待できない以上、ハラキリや日向が活躍しないと回らないのは事実。ハカタなのに、八女出身のハラキリにしてみたら、凱旋試合でもあるわけだから、気合いの入り方も違うだろう。
それでなくても、2代目馬之助にアズール・ドラゴンというこれ以上ない厄介な相手がいるんだから、始まる前からピンチが確定しているようなもんだが、それでも今のアステカだからこそ出来ることがある。
個人的には、藤波さんが主催していた無我にアステカが出場していた時のように、地を這うようなゴツゴツした試合がみてみたいのだが、工夫次第ではできないこともないだろう。さて、どうなるか?
試合はアステカとアズールのマッチアップでスタ―ト。大概奇襲から始まるダークサイドが珍しく正攻法で攻めてきたが、これでも試合ができるのが彼らの強み。そして日向小陽と神田愛実もお互いの立場が入れ替わってもしっかりとした仕事をする。特に神田の竹刀攻撃はアステカサイドを大いに苦しめた。これが非常に堂にいったヒールっぷりで、神田のイメージチェンジに成功した要因だと思う。
アステカの試合運びもグラウンド中心で、いい感じに流れる様な試合運びで、身体に必要以上の負担をかけずに、でも動くときはきちんと動いてみえるので、みていて飽きがこない。若い時と同じような試合をしようとしていた復帰後とはまたちょっと趣のかわった流れだったが、これはこれでいいと思う。無理して打撃や空中戦にいかなくてもプロレスをちゃんと成り立たせる技術があるんだから、方向性は間違っていないと思う。
とはいえ、やはりハラキリがFTOサイドの集中砲火を受けるのは流れ上仕方ない部分もあるが、お笑いを封印しないでこれができたらさらに進化すると思う。普段おちゃらけているハラキリが頑張っているというのは、声援をもらいやすい図式なんだけど、それ以上に本来のキャラクターを守ったうえで、頑張る姿をみせられたらなおよかったかな。でもこの試合の立役者は、ハラキリだったと思う。
負けて故郷に錦は飾れなかったけれど、いじめ撲滅のテーマもしっかり伝わったし、いい試合だったと思う。
第三試合:博多タッグタイトルマッチ
[王者組]〇新泉浩司 & ヴァンヴェール・ネグロ 1/60 小川聡志 & ×林田伸一
前回のさざんぴあ大会で無理やりチャレンジャーとして名乗りをあげた小川聡志は、元々40代でデビューした遅咲き選手。キャリア10年ちょいというのは、ちょうどベルトへの欲もでてくる頃だが、同じく50代の林田はすでに若手時代から試合をしてきているので、今更タイトルがほしいわけではない。
この辺の温度差が埋まらないまま流れで決まってしまったタイトルマッチがこの試合。当然小川は自分がタイトルホルダーになる気が満々なんだが、そこまで執着していない林田の奮起いかんでこの試合の流れは大きく変わるだろう。
ましてやハラキリ同様に八女が地元の小川にしてみれば、地元でチャンピオンになるというのは、今までのレスラー人生における総決算的位置にある試合になりうるのだ。
一方で博多ライトヘビーと合わせて三冠王の新泉に、篠栗88タッグと合わせて二冠王のネグロにしてみたら、こんなところで躓いてはいられない。ネグロはようやく「息子の七光り」から脱して一人前の選手として活躍しはじめたわけで、実戦経験も積んできたのだから、虎の子のベルトを取られるわけにはいかないのだ。
序盤はローガンズ(小川&林田)の勢いに任せてチャンピオンサイドを攻め込むシーンが多々見られた。が、これは新泉にしろネグロにしろチャレンジャーの様子見をしているように見えた。逆に言うとここで小川組はしっかり相手にダメージを与えておくべきだったと思うが、誤算だったのは小川のスタミナ。みていて明らかに電池切れしているのがわかる場面がみられた。逆に林田はあの年齢でコンディションをきちんと整えてきていたけど、こちらはモチベーションがもともと上がりきらない中で試合をしているので、受けに回るともろさを見せる。
これではタッグマッチとして機能しない。試合後小川は「もっと練習してきてまた向かって来てください」と新泉にいわれていたけど、一番の山笠をやった直後につかれた表情を浮かべているようでは、王座は遠いとしか言いようがない。八女勢ははからずも2連敗となったわけだが、ハラキリの敗戦とは内容が違う。
パートナーを変えるにしろ、林田ともう一回組むにしても小川自身が変わらないとチャンピオンとしては認知されないだろう。これから小川がどうやってチャンピオンを振り向かせるか?課題はそのあたりだろう。
第四試合:バトルロイヤル
(最終残りはヴァンヴェール・ネグロとアステカ。優勝はアステカ)
地方大会特有のバトルロイヤル。アジアンプロレスがこのスタイルで長らくやってきているのだが、華☆激は華☆激でメンツが若干違うため、これはこれで面白い。
思えば1年前の篠栗のバトルロイヤルでアステカがリング復帰を果たしたが、お客さんだけでなく、リング内の選手もハラハラしながら行方を見守っていたことを思うと、まさか1年後アステカがハラキリ相手にシングルやれるところまで「復活」するなんて、当時は想像もしていなかった。
たかが、バトルロイヤルという感覚は既に昭和の彼方においてきた。今は全体の付録ではなく、バトルロイヤルも独立した一試合としてみるのが一番いい楽しみ方じゃないか、と個人的には考えている。
この試合はアジアン方式で一般のお客さんをレフェリーにするやり方だが、華☆激の場合は地元協賛企業の代表がレフェリングしたり、試合に混ざったりするやり方。これもローカルらしい味わいがあってとてもいい。この試合で神田と日向が女子タッグを結成したり、本編では共闘していた選手がさらっと仲間割れしたり、色んな縮図でお客さんを楽しませていた。このあたりがプロレスのバトルロイヤルのとてもよくできたところ。
最後はハラキリ、アステカ、新泉、ネグロと残るべくして残った感じのメンツがまるでタッグマッチのような様相になったが、ハラキリと新泉が脱落するとネグロとアステカの一騎打ちに。体の不安があるアステカはこの試合では極めて省エネファイトに徹していたが、正直最後に見せ場があればいいので、これで問題ないと思う。
心臓を患って生死の境をさまよった人間が動けて優勝までしてしまうところに、この試合のテーマがあるし、よさもある。いじめ撲滅のテーマも伝えやすいし、最後ほぼ全選手が輪になってハッピーエンドで終わったのもとてもよかったと思う。
後記
台風の接近も心配されたが終わってみればなんとか大会開催中に災害にあうことはなかった。これも運と言ってしまえばそれまでだが、無事大会が開催されお客さんが岐路に着けたことは喜ばしいこと。とはいえ、できることならもう自然災害は勘弁してほしい。地方大会らしいアットホームな雰囲気がとてもよかった大会だった。大成功といってもいいと私は思っている。