プロレス的音楽徒然草 ラストバトル
アニメのBGM
今回は川田利明選手のテーマ曲だった「ラストバトル」を取り上げます。「ラストバトル」も既存の曲なんですが、こうした曲を使う時に困ることがあります。
それは「尺」の問題です。ラストバトルは、元々オリジナルビデオアニメ「バリバリ伝説」のBGMの一つでした。
サントラは下火に・・・
アニメのBGMというのは、はじめに長尺で作られて、作品で使用する時にブツ切りにするやり方と、最初から作品で使用する前提で短い曲をいくつも作るやり方があります。
前者は、主に宇宙戦艦ヤマトのブームからサウンドトラック盤が売れまくっていた、70年代後半から80年代にかけてよく見られた手法です。
ですが、バリバリ伝説がアニメ化した1986年頃には既にサントラブームは下火になっていました。
屈指の名シーンで
とはいえ、まだブームの名残はありましたので、バリバリ伝説にもサウンドトラック盤が存在します。
「ラストバトル」は「バリバリ伝説PART2〈鈴鹿篇〉」オリジナル・サウンドトラックに収録されていて、ライバル・聖秀吉との最後のバトルでかかったテーマです。
直後秀吉は事故死してしまう、原作でもアニメでも屈指の名シーンで流れています。
「バリバリ伝説」のサウンドトラックは、現在は非常に入手困難で、アマゾンでは2018年9月現在、「鈴鹿編」の中古品がなんと18000円で売られています。
超世代軍のテーマ集にも
ですが、プロレスファンでアニメに興味ないというあなたには「全日本プロレス・超世代軍テーマ集」というアルバムにも「ラストバトル」は収録されています。
これはなんと2018年9月現在、中古で50円という超お買い得な価格で流通しています。なんでこんな価格差があるのかはわかりませんが(笑)
時間の短いオリジナル曲も・・・
ちなみに、バリバリ伝説の音楽は、プロレスファンにもお馴染みの新田一郎さんが手がけています。
同じ全日本プロレスで、スタン・ハンセンが使用したサンライズを演奏していたスペクトラム。その中心人物であり、サンライズを作曲したのも、新田一郎さんです。
しかしながら、ラストバトルは非常に短い曲で、1分2秒しかありません。確かに疾走感があって、四天王への入り口にさしかかった川田選手に相応しい曲ではあるのですが、いかんせん入場テーマ曲としては短すぎます。おそらく私が知る限りでは、プロレス入場テーマ曲としては「最短」の部類に入るのではないか、と思われます。
私の記憶では、ラストバトル使用時にはリピート再生して尺を伸ばしていた記憶があります。ほどなく川田選手のテーマ曲はオリジナルの「Holy War」に変更になって、尺の問題からは解放されるのですが、とはいってもオリジナルだったら尺の問題が解決するかといったら、そうでもないのです。
近年の新日本プロレスをリードする、”レインメーカー”オカダカズチカ選手のテーマ曲である「RAINMAKER」は、当然オリジナル曲なんですが、実をいうと大元の「RAINMAKER」は3分ちょうどしか尺がありません。
入場の途中で・・・
ラストバトルに比べると一見問題ない尺に思えますが、花道の長い東京ドームだと、この3分というのが「アダ」になっているのです。つまり入場の途中でテーマ曲が終わる可能性があるわけですね。
実際、通常の大会ではゆっくり入場する選手が、ドームでは小走りで入るケースをよく見かけます。これは最近のドーム大会でもありますので、色んな選手の入場シーンをみてみると、面白いですよ。
問題?だった合体テーマ
さて、少し余談になりますが、鶴田選手との対決がひと段落ついたあと、川田選手は超世代軍を抜けて、田上明選手と聖鬼軍を結成し、三沢光晴選手とは対角線上で闘う立ち位置に変わっていきました。
この頃はもう入場テーマ曲は「Holy War」に変わっていたのですが、田上選手と組むにあたり一つ、私には懸念がありました。
それは「合体テーマ」の事でした。全日本プロレスの場合、格的に対等な選手のタッグチーム=合体テーマというのが常でした。
テンポの違う曲同士は
しかし、川田選手の「Holy War」と、田上選手の入場テーマ曲である「エクリプス」は、曲のスピードが微妙に異なっており、原曲同士を合体させるとなんか変だったのです。
特にエクリプスについては、作曲したイングウェイ・マルムスティーンのギター早弾きが魅力的な楽曲でしたから、私には余計そう思えたのかもしれません。
ちなみに、ハンセン選手が馬場さんとタッグを組んだ時にも合体テーマができたのですが、こちらも「王者の魂」と「サンライズ」がテンポの違う曲でしたので、やはり変に感じました。
今更戻せない
とはいえ川田選手も今更「ラストバトル」に戻すわけにはいかなかったでしょう。
ある意味仕方なかったのですが、選手の入場テーマ曲というのは、合体テーマまで想定して選曲されるわけではないため、こればかりはいかんともし難い問題ではあるのです。
うまくいった例である「鶴龍コンビのテーマ」とかの方が、まれだったとも言えますね。