プロレス的音楽徒然草 タチムカウ -狂い咲く人間の証明-(入江茂弘のテーマ)
15枚目のシングル
今回は2022年現在、#STRONGHEARTSで活躍する入江茂弘選手が、主にDDT時代に使用していた、筋肉少女帯の「タチムカウ -狂い咲く人間の証明-」をご紹介します。
「タチムカウ -狂い咲く人間の証明-」は、筋肉少女帯15枚目のシングルで、1997年4月30日に発売されています。
長く接点がなかった
以前から入江選手は、筋肉少女帯愛を公言しており、また筋少のヴォーカリスト、大槻ケンヂさんはプロレスに造詣が深いことで知られています。
しかし両者の間には長く接点がなかったのです。ですから、当初入江選手は無許可で入場テーマ曲として使用していました。
生演奏で入場
ところが、2013年に行われた「DDT万博」へ筋肉少女帯が来場し、入江選手はメンバーの生演奏で入場しました。
これで両者の間にようやく接点ができたのでした。
「T 2(タチムカウver.2)」の制作に
この一件が、現在の入江選手のオリジナル入場テーマ曲である「T 2(タチムカウver.2)」の制作につながっていったようです。
ちなみに「T 2(タチムカウver.2)」は2017年8月20日両国大会から使用されています。
曲を読み解くには
さて、入江選手も大好きな筋肉少女帯の曲を読み解くには、音楽の知識よりも読書の知識のほうが要求されます。
たとえば、「タチムカウ -狂い咲く人間の証明-」では、タイトルの「人間の証明」が、森村誠一氏のベストセラー「人間の証明」と、それを映画化して大ヒットした角川映画が元ネタであることは間違いないでしょう。
氷の世界
また、歌詞の中に出てくる「リンゴ売り窓の外」は、井上陽水さんの名曲「氷の世界」冒頭の一節に「窓の外にはリンゴ売り」からとったと思われます。
なお、「氷の世界」は「筋少の大水銀」で筋少もカバーしています。
一人一殺
そして同じく歌詞の中にある「一人一殺」は、昭和初期に起こったテロリスト集団「血盟団」のスローガンに同じものがあり、これにインスパイアされた可能性があります。
「一人一殺」とは、各々の血盟団員が標的を定め、一人ずつ暗殺していくというものです。
考察がはかどる
標的のみを殺し、それ以外の人的被害を防ぐため、その手段は専ら接近してのピストルによる射殺でした。
このように、大槻ケンヂさんが影響を受けたものは非常に多岐にわたり、それゆえ、考察がはかどるわけですね。
221B戦記では
「タチムカウ -狂い咲く人間の証明-」と同じアルバム「最後の聖戦」に収録されている「221B戦記」。
この「221B」は、ホームズのロンドンでの住所「ベイカー街221-B」からきていると思われます。
こんないいお天気の日に
また歌詞の中に登場する「こんないいお天気の日に」は、中原中也さんの詩「別離」の一節「こんなに良いお天気の日に お別れしてゆくのかと思ふとほんとに辛い」からの引用ではないかといわれています。
この一節はデビューアルバム「仏陀L」の一曲「サンフランシスコ」でも引用されています。
オレンヂエビス
余談ですが、筋肉少女帯のメジャーデビューアルバム「仏陀L」には、「オレンヂエビス」という楽曲があります。
歌詞の中に「ラッシャー木村」「ストロング小林」「ロッキー羽田」「ジョー樋口」「ミスター林」「ラジャ・ライオン」「マキ上田」といった、選手・関係者が登場します。
筋肉少女帯の曲は、ダウンロード販売のほか、Spotifyの無料サービスでも聴くことがほぼ可能になっていますので、この機会に一回聞いてみてください。