プロレススーパー仕事人列伝 ニック・ボックウィンクル①
偉大なるダーティー・チャンプ
今回はAWAのダーティチャンプことニック・ボックウィンクル選手のお話です。
ニックさんはリック・フレアー選手に先駆け、バディ・ロジャース選手の流れを汲むヒールの「ダーティー・チャンプ」のスタイルを貫いた選手です。
劣勢になるとわざと凶器攻撃を見舞ったり、セコンドを乱入させるなどして反則負けを選び、AWA世界ヘビー級王座を防衛することがほとんどでした。
これはAWAではピンフォール勝ち、ノックアウト勝ちもしくはギブアップ勝ちでないと王座は移動しなかったためです。
AWAの顔対新時代のNWA
ここでご紹介したいのは、アメリカで行われたであろうニック・ボックウィンクル対リック・フレアーのシングルマッチです。
AWAの顔でもあるニックさんと、レイス時代を受けて新時代のNWAを代表するチャンプになりつつある頃のフレアー選手がシングルマッチをやっていた、という事実だけで、ご飯を何杯でもおかわりできそうです。
ニックさんがベビーに!
映像では残念ながら、試合の中盤付近からアップされているんですが、様子をみていると、フレアー選手がヒールでニックさんがベビーになっているようなのです(実際、ニックさんに声援が飛んでいますし)。
日本ではどっちもヒールだし、フレアースタイルの祖でもあるニックさんがベビーに回って、フレアー選手に、ダーティチャンプ道を指南しているかのような内容です。
芸術的な攻防
ただ、NWA圏で頭角を現した後と思われるフレアー選手と、ニックさんの攻防は実に芸術的です。
序盤にニックさんが非常にゆっくりした逆さ押さえ込みを、フレアー選手に決めますが、非常に力のこもった場面です。
また、その直後にフレアー選手の足をカニばさみで捉えて、あっという間にシングルレッグロックに決める場面は、これぞテクニシャンと呼ぶべき名シーンです。
足4の字の攻防も、フレアー選手が仕掛けたら、お返しにニックさんも足4の字を決めるといった具合に、一つ一つの攻防が丁寧で、手に汗握る攻防になっています。
仕事人らしい攻防
これだけだと、単なる名人芸の羅列になってしまうので、仕事人らしいシーンを一つ上げましょう。
この試合の最終盤に両者がリング外に出てしまった時の攻防です。
こちらのルールでは場外カウントは10以内のようで、両者ともふらつきながらリング内に戻ろうとします。
阿吽の呼吸があったかのごとき
しかし、レフェリーがカウント10を数えた瞬間、エプロンにいたニックさんの足を、フレアー選手が絶妙なタイミングで引っ張り、結末は見事な両者リングアウト!
これは、どちらもダーティーチャンプの系譜に連なる選手同士だからできた、まるで阿吽の呼吸があったかのごとき素晴らしいタイミングなのです。
まさに、これぞ仕事人ですよね。ニックさんだけでなく、フレアー選手も本当にすごいとしかいいようがありません。
映像が現存しているのは眼福
個人的には、日本でもっとこの二人の絡みを見てみたかったな、と思いますが、こうして映像が現存しているのは、非常に眼福だったな、と思えるのです。
正直英語実況がわからなくても魅入ってしまい、3回見返した位お気に入りの試合になっています。
次回は、別な選手との試合をレビューしてみたいと思います。お楽しみに!