プロレス的発想の転換のすすめ(44)一匹狼と孤独の真実
深刻化する現代の孤独
孤独は現代社会の大きな課題です。
イギリスでは2018年に「孤独担当大臣」が新設され、トレイシー・クラウチさんが任命されました。
国を挙げて対策に乗り出すほど、孤独による損失は甚大だとされています。
また、最新の「繁栄指数」におけるソーシャル・キャピタルのランキングでは、日本は149カ国中101位。特に中高年男性の孤独が深刻視されています。
狼は本来群れる生き物
プロレスの世界では「一匹狼」という言葉が魅力的な売り文句として多用されます。
しかし、生物学的なオオカミは、ペアを中心とした4〜8頭ほどの社会的な群れ(パック)で生活する動物です。
本来の「一匹狼」とは、群れの争いに敗れたり馴染めなかったりした個体を指し、必ずしもポジティブな状態ではありません。
プロレス界でも、名前に「狼」を冠する選手が単独で活動し続ける例は稀です。
伝説のユニット狼軍団
古くは1978年頃、ヒロ・マツダさん、上田馬之助さん、サンダー杉山さん、マサ斎藤さんらフリーランスの選手が集結した「狼軍団」が存在しました。
しかし、知名度で言えばnWoジャパンの母体となった「狼群団」が際立っています。
興味深いのは、初期メンバーの蝶野正洋選手、天山広吉選手、ヒロ斉藤選手の3名が、当時は本当に「一匹狼」だった点です。
孤立した三人の必然的合流
当時の蝶野選手は「黒」への転向直後でパートナーがおらず、天山選手は凱旋帰国後に本隊へ反旗を翻したばかり。
ヒロ斉藤選手も所属ユニットの解散により単独行動を余儀なくされていました。
利害が一致した彼らが新たな群れを作り、90年代の新日本プロレスを席巻したのは必然と言えます。
初期には敗北した仲間を集団暴行する「反省会」を行うなど、過激な連帯も見られました。
組織化がもたらすメリット
一匹狼のままでいると、マッチメイクの観点からはシングルマッチしか組めず、扱いが難しくなります。
そのため、形式上でもチームを作る必要がありました。
不安定な共闘関係だった狼群団は、その後「nWo旋風」という大きなムーブメントを吸収し、nWoジャパンへと進化します。
ここに武藤敬司選手も合流し、本隊を圧倒する勢いを見せました。
現代へ続くユニットの伝統
増殖しすぎたnWoジャパンから分裂する形で、蝶野選手は「TEAM 2000」を結成します。
この「悪のユニットが複数存在する」という構図は、現在のプロレスにおける闘いの体系にも脈々と受け継がれています。
一匹狼という異端のイメージを逆手に取り、組織としての価値へ昇華させた狼群団は、プロレスにおけるブランディングの成功例と言えるでしょう。
制御不能から平穏な結束へ
現代の事例として特筆すべきは、内藤哲也選手率いるユニットの変遷です。
かつて「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」(制御不能な奴ら)として一世を風靡した彼らは、孤独なはぐれ者の集まりから始まりましたが、現在は「ロス・トランキーロス・デ・ハポン」(平穏な奴ら)へと進化を遂げています。
これは、孤高の存在だったレスラーたちが、互いの距離感を尊重しながらも、揺るぎない信頼関係という「新たな群れの形」を見出した結果と言えます。
理想的な心の在り方とは
「群れない・媚びない」というイメージを保ちつつ、戦略的にチームを構築する。
これは孤独と連帯の理想的な使い分けかもしれません。
私個人は、群れたい時は群れ、一人でいたい時は孤独を楽しみます。
どちらの状態も自分自身が求めている結果であれば、孤独を悪とする必要も、群れることを嫌う必要もありません。
大切なのは、自分がしたい時に、したい形で社会や他者と関わることではないでしょうか。
孤独を力に変える闘い
プロレスにおける「一匹狼」たちは、孤独であることの強さと危うさをリング上で表現してきました。
しかし、真に大きなムーブメントを起こすのは、孤独を知る者同士が結集した時です。
人生という長い闘いにおいても、一匹狼としての誇りを持ちつつ、必要な時には手を取り合う。
そんなプロレス的でしなやかな生き方こそが、現代の「孤独問題」を突破するヒントになるのかもしれません。
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