プロレス的発想の転換のすすめ(27) 必殺技の奥深さ
失われた技術
実はプロレスにはかなりの部分「失われた技術」があります。
今は割と空中戦主体というか、飛べばある程度会場が沸くため、観客の反応に迎合しているプロレスラーが軽量級だけでなく重量級にもたくさんいます。
基本的な技だけでも
プロレスラーの魅力の中にはずば抜けた身体能力という要素も欠かせないため、私も空中戦を否定はしません。
ところが、実は飛び技を除いたプロレスの基本的な技だけでも軽く70はあります。
一例をあげると
しかもその一つ一つが極めればどれもフィニッシュホールドになりうる必殺技にもできるのです。
一例をあげると、故・三沢光晴選手がジャンボ鶴田選手からシングル初勝利をあげたフェイスロックなどはその典型例でしょう。
一躍必殺技に
それまで繋ぎ技としか見られていなかったフェイスロックを一躍必殺技にした功績は非常に大です。
古くはUWFが道場の技術として伝えられていた地味だけど効く技の数々を実戦で使用し、緊迫した空気を試合に作りだしました。
人前で披露するものでは
この道場で使う技術はUWF以前だと人前で披露するものではないという考えかたが一般的でした。
ジャンルは違いますが、お笑いで本番は全くなのに、楽屋では爆笑をとる芸人さんのように、道場でだけ強くても、本番でプロレスができなければダメだということかな、と私は解釈しています。
今更アマチュアと・・・
オリンピック経験などを経てプロ入りした選手には「ただ強さを示すための技術なら散々五輪や世界の舞台でみせてきた。プロでは違うことがしたいのに、今更アマチュア時代と同じことはしたくない」という考えかたをする人も少なからずいたようです。
UWFを経て総合格闘技が成熟した結果、プロ入りの選択肢は増え、プロ入り後もアマチュアと同じ道をあゆむ選手が増えました。
一方で従来通りプロレスはプロレスとして、アマチュアのベースをことさら誇示しない選手もいますね。
バックボーンの有無
UWFが道場の強さを本番で誇示したのは、彼らにアマチュア時代の華々しいバックボーンがなかったからだ、という説も唱えられています。
新日本の永田裕志選手はごく稀にアマチュア時代の匂いを漂わせますが、ほぼプロ入り後に身につけたスキルでプロレスをしています。
今の方が
永田選手は一時期総合格闘技にも進出しましたが、今の方がよほど生き生きしているように、私にはみえます。
想像ですが、おそらく総合進出は本意ではなかったのかもしれないですね。
ちなみに三沢選手にもアマレスのバックボーンがあります。
固定観念による見方
このように、アマチュアのバックボーンをそのままプロで披露したい選手とプロ入り後はプロのスキルで勝負したい選手とは確実にいるわけです。
レスリング出身だから、柔道出身だからというのは、我々観客の固定概念による見方に過ぎないのです。
極めればどんな技も
時代の変遷と共に防御の技術も向上し、昔ならフィニッシュになりえた技が繋ぎ技でしか使えないという理由もなくはありません。
しかし極めればどんな技も必殺技になる奥深さがプロレスにはあります。
流行り廃りも
三沢選手がなくなり、使い手がいなくなるとフェイスロックはまた繋ぎ技に格下げになりました。
確かに技には流行り廃りもあります。
プロレスの凄みは
が、やはりプロレスの凄みは一見すると地味に映り、観客に迎合しない技にこそ宿る気がします。そこがプロレスの奥深さの一つでもあると私は思います。
確かにアマチュアの技術をプロ入りしてまで使いたくはないという選手の気持ちは尊重されてしかるべきですが、その折々に見られる確かな技術が試合を支えているのもまた事実なんですね。