プロレス的発想の転換のすすめ(11) 魂が輝く人生の闘い
個性を認める勇気
今回は個性の話です。人間にはそれぞれ個性があります。
「みんな違ってみんないい」という金子みすゞの詩『私と鳥と小鈴と』の一節にあるように、「個」をありのままに認める大切さは、多くの方に共感されています。
多様性の高い壁
しかし、言葉にすれば簡単ですが、現実社会では多様性はなかなか認識されにくい側面もあります。
その受け止め方の違いが、時として不安や悩みを生み出しているのです。
無限の人間関係
この詩の一節に従えば、人と人とのコミュニケーションは、人の数だけ無限大に存在することになります。
言葉は通じても気持ちが通じないことは、それだけでストレスになります。いくら頭では「人は皆違うものだ」と理解していても、現実は容易ではありません。
分類学という武器
そこで、人間をタイプ別に分類し、それぞれに響く言葉を用意する工夫をされている方も多くいます。
これによりコミュニケーション上の問題を解決し、心を楽にしようという試みです。
心理学やビジネスシーンでよく用いられる「ソーシャルスタイル理論」に基づいた4つの分類と、それぞれのレスラー像になぞらえた具体例を紹介します。
1. 勝利を追う司令塔
感情を抑え、結果を重視するタイプ(リーダー型)です。プロレスで言えば、団体のエースや、冷徹に勝利を追求する実力派選手のイメージです。
特徴: 結論から話すことを好み、無駄を嫌う。決断が早い。
響く言葉: 「結論から申し上げますと……」「この方法は、最短で目標を達成できます」「判断はお任せします」
接し方のコツ: 遠回しな言い方は避け、選択肢を提示して本人に選ばせることが効果的です。
2. 会場を彩るスター
感情豊かで、注目を浴びたいタイプ(盛り上げ役型)です。派手なコスチュームで入場し、マイクパフォーマンスで会場を熱狂させるスター選手のイメージです。
特徴: 賑やかで直感的。褒められること、新しいことに興味を示す。
響く言葉: 「さすがですね! 誰も思いつかないアイデアです」「〇〇選手のおかげで、現場がすごく盛り上がっています」「これ、絶対に面白い展開になりますよ」
接し方のコツ: 相手の感性や存在感を認める「賞賛」の言葉が最大のエネルギー源になります。
3. 絆を繋ぐサポーター
感情を大切にし、調和を好むタイプ(縁の下の力持ち型)です。タッグマッチでパートナーを献身的に支え、チームの結束を第一に考える選手のイメージです。
特徴: おだやかで協調性が高い。急な変化を嫌い、みんなの意見を大切にする。
響く言葉: 「いつもサポートしてくれて、本当に助かっています」「みんなで協力して、一歩ずつ進めていきましょう」「〇〇選手はどう思いますか?」
接し方のコツ: 「あなたが必要だ」という感謝と、安心感を与える言葉が信頼に繋がります。
4. 緻密なテクニシャン
感情を抑え、データを重視するタイプ(分析家型)です。相手の弱点を研究しつくし、緻密な関節技やロジカルな攻めを見せる職人肌の選手のイメージです。
特徴: 客観的な事実や証拠を重視する。慎重で、正確さを求める。
響く言葉: 「過去のデータに基づくと、この成功確率は〇%です」「具体的に、どの部分に懸念があるか教えていただけますか?」「じっくり時間をかけて精査してください」
接し方のコツ: 感情的な訴えよりも、論理的な根拠や数字を示すことが納得感を生みます。
このように、相手がどの「スタイル」で闘っているかを見極めることは、プロレスにおける「相手の技を受ける」行為に似ています。
相手が「スター型」なら思い切り光らせてあげ、「分析家型」なら正確な情報というパスを出す。
そうして相手の個性に合わせた言葉(技)を繰り出すことで、コミュニケーションという名の「闘い」は、よりスムーズで素晴らしい名勝負へと変わっていくのです。
決めつけない余裕
ここで気をつけておきたいのは、分類が絶対的な答えではないということです。
「もしかしたら〜かもしれない」という「決めつけない姿勢」が大切になります。
否定せぬ心の広さ
そうでなければ、分類に人を無理やり当てはめた結果、個の違いを否定することになりかねません。
それは、私たちが最も警戒すべきことです。
自由なプロレス界
プロレスの話をすれば、デスマッチや格闘スタイル、空中戦など多種多様なスタイルが存在しますが、そのすべてを「プロレス」という一つの言葉で括ることができます。
ただ、同じプロレスだからといって、各団体、ユニット、会社ごとに意思疎通が完璧かといえば、決してそんなことはありません。
そもそも日本のプロレス界には、全体を統括するコミッション自体が存在しないのです。
実力で掴む居場所
それは日本に限らず、多くの国で共通しています。
唯一メキシコがライセンス制をとっていますが、他の国はほぼ「リングに上がって証明した者が勝ち」という世界です。
私の個人的な意見ですが、全日本プロレス時代の大仁田厚選手は、素晴らしいプロレスラーでした。
逆境を武器に変える
そして、FMW以降から現在に至る大仁田選手は、極めて優秀なアイデアマンであると考えています。
なぜなら、全日本を引退する原因となった膝の故障さえも、彼は自らの武器に変えてしまったからです。
既成概念への挑戦
もし厳格なライセンス制があるならば、彼は引退を余儀なくされていたはずです。満足に練習ができる身体ではなかったのですから。
しかし、従来のプロレスとは違う身体の使い方をすることで、大仁田選手はのし上がりました。
爆破と傷跡の美学
私が思う「大仁田流デスマッチ」とは、派手な受け身で響かせるマット音の代わりに「爆破音」を鳴らし、膝に負担がかかるロープワークを避けるためにロープの代わりに「有刺鉄線」を巻き、受け身をとる代わりに「自らの身体に傷を刻む」スタイルです。
今でもこのスタイルは、王道のプロレスラーから「我慢比べ」と揶揄されることが少なくありません。
隙間に見出した勝機
しかし、ものは考えようです。
ニッチな市場だったデスマッチに活路を見出したことで、プロレス界に「デスマッチ路線」が確立されたのですから、一概に悪いとは言えません。
大仁田選手が電流爆破の特許を持っていることで、逆に特許料のかからない独自のデスマッチを各団体が工夫し始め、そこには通常のプロレスもこなせる技術の高い選手も参入するようになりました。
唯一無二の個性を
こうなると、「デスマッチファイターは普通のプロレスができない」という揶揄も当てはまらなくなっています。
このデスマッチやインディーの独自路線、あるいはWWEのようなスポーツエンターテインメントまで幅広くなったプロレス界にライセンス制度を作ることは、一方でその貴重な個性を封じ込めてしまうリスクも伴うわけです。
認めることから
プロレスラー同士でもそうですが、根底にあるベースが同じだからといって、必ずしも話が通じるとは限りません。
むしろ「通じないのが当たり前」だと認識できれば、気持ちが少しは楽にならないでしょうか。
言葉を尽くす闘い
「同じ言語を喋る=わかりあえる」という思い込みを外すだけでも、心理的な負担は軽くなります。人は簡単にはわかりあえない。
だからこそ、私たちは相手を理解しようと、今日もリングに上がり、言葉を尽くし、闘い続けるのではないでしょうか。
人生という名のリング
人生という名のマットの上では、誰もが唯一無二のレスラーです。
たとえ周囲とスタイルが違っても、自分だけの「必殺技」や「生き様」があれば、それは立派な表現になります。
互いの個性が激突し、時には噛み合わないことがあっても、それこそが予測不能な名勝負を生むスパイスです。
わかりあえないという「場外乱闘」を恐れず、相手の個性を尊重しながら、自分らしい「闘い」を貫いていきましょう。
たとえリングサイドで誰が野次を飛ばそうとも、自らの信念を貫き通した先には、きっとあなたにしか鳴らせない、万雷の拍手が待っているはずです。
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