[心理×びっくり映画] 万国びっくり映画鑑賞記・カミングアウト・オブ・ザ・デッド
原題は「ZONBIES MASS DISTRUCTION」。ゾンビによる大量虐殺ということをいいたいんだろうけど、邦題は全然違うというよくあるパターン。
それはいいんだけど、ゾンビコメディである「ショーン・オブ・ザ・デッド」を超えたゾンビコメディというのはどう考えても違うと思う。
そもそもこの映画、意外とまともなグロ要素たっぷりのゾンビ映画だし。
ということは、この映画輸入元がまともに中身見てないで適当にタイトル決めて「たぶんこんなんだろう」と思ってキャプションやあらすじをパッケージに書いたんだろう。
だいたい、「カミングアウト・オブ・ザ・デッド」って無理矢理感が半端ない邦題をまずどうにかしてほしいけど、この映画コメディですらないしね。
冒頭でなんとなくだけど、差別主義者の匂いがプンプンしてくる描写が多数。
エキセントリックな顔立ちをしたフリーダは、イスラム差別にさらされているし、LGBTのカップルは同性愛であるがゆえの生きにくさを感じている様子。
恋人のランス(男)と共に故郷へと帰るトム(男)は、2人の関係を母に告白すべく、母の不味い手料理をひたすら我慢し、場の空気が重くなる中やっとの思いで「母さん、実は俺たち付き合ってるんだ!」切り出したとたんに、顔色の悪い母親がいきなりまさかのゾンビ化!
ここでランスがTVをつけるとニュースキャスターが「テロリストがド田舎にバイオテロを仕掛けた」なんて突拍子も無いことを叫んでいたのだが、犯人が判で押したかのようなイスラム原理主義者・・・・
しかし窓を開けるとすでに見渡す限りのゾンビの群・・・・
一方、TVのニュースを見た隣のキチ〇イ親父にイスラム系だからという理由だけで「ぜったいテロリストの仲間に違いない!」とかなんとか難癖つけられ、椅子に縛り付けられ足の甲に釘を打たれたりと散々痛めつけられる。
ゾンビに食われる描写より、拷問描写にはかなり力が入っていて、グロが嫌いな方には正直お勧めできない。
ゾンビ映画の体を借りてアメリカの暗部や差別主義をあぶりだすのが主題かと思いきや、そこまで深掘りしていないんで、キチ○イ親父がゾンビにかまれた奥さんより感染してないフリーダを椅子で縛ってやりたい放題してるのも、もはや差別とかいう次元の問題じゃなくなって、キチガ○親父の趣味嗜好が爆発しまくっている。
このイカレ具合が半端なさ過ぎて主題がどんどんかすんでしまってるのは困りもの。あまりぶっとんだ描写するとそっちばかり印象に残って、何が言いたかったのかがわからなくなるのだ。
脚本もよくできているし、中途半端に特殊メイクもよくできているうえ、結構サービス精神たっぷりにグロ描写をこれでもかと投入してくるので、やはり差別を訴えるには、ゾンビ映画というフォーマットはあまり相性よくないというか・・・・
そして教会に逃げ込んできたトムとランスが恋人同士と知った牧師が突然、女性が好きになるよう矯正するとか言いながら、おかしな装置を持ち出して凄い形相でトムとランスに迫ってくる!
ゾンビより怖いこの変態牧師は実をいうとトムの初恋の相手も同じ装置で「矯正」していた!
このあたりの狂気をもっと掘り下げていくともっと面白くなったんだけどなあ。
ゾンビに囲まれて自分たちも極限状況にいる中で、神の名のもとに他人の矯正(拷問ともいう)を優先して執行しようとする牧師たちのイっちゃってる感もなかなかよかったんだけど、牧師派の現町長がすでに咬まれていてゾンビ化したため、矯正は中途半端に中断。牧師は仲間であるはずの現町長のゾンビに食われて昇天・・・・・
フリーダを縛った親父も頭に凶器をうち込まれながら、執拗に追いかけてくるし(よっぽどゾンビっぽい・・・・)、ゾンビよりイカレた町の人間の描写にはやたら力が入っていた。
全体的にZ級を狙ったわけでもなく、むしろゾンビ映画で差別を描こうとした意気込みは高く買うんだけど、狙いが見事に外れているというか・・・・
まあしかしこれは、おおむね輸入元がテキトーに作ったパッケージと売り方を完全に間違えた好例といっていいかもしれない。そういう意味では看板にめちゃくちゃ偽りがあったわけだけど。