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[映画鑑賞記] GHOST IN THE SHELL(ハリウッド版)

17年4月7日鑑賞。

ネットに直接アクセスする電脳技術が発達すると共に、人々が自らの身体を義体化(=サイボーグ化)することを選ぶようになった近未来。脳以外は全て義体化された少佐率いるエリート捜査組織「公安9課」は、サイバー犯罪やテロ行為を取り締まるべく、日夜任務を遂行していた。そんな中、ハンカ・ロボティックス社の推し進めるサイバー技術の破壊をもくろんだテロ組織による事件を解決すべく、少佐は同僚のバトーらと共に捜査にあたるが、事件を調べていくにつれ、自分の記憶が何者かによって操作されていたことに気付く。やがて、真の自分の記憶を取り戻していく少佐は、自身の驚くべき過去と向き合うことになる。(あらすじはwikipediaより)

基本洋画は字幕派である私が、生まれてはじめて吹き替え版を劇場で見る日が来ようとは!それが何回も見ている攻殻機動隊なんだから、また面白い。しかもキャストがオリジナルのメンバーなんだから、これが燃えずにいられようか! まあ、オリジナルならなんでもいいかというとそうではない。仮にドラゴンボールエボリューションがオリジナルキャストで吹き替えられていたら…まあ、それはそれで見たい気もするが。

最初は、ハリウッド制作と聞いて「また、へんな映画作るんじゃないだろうな?」という疑心暗鬼でGHOST IN THE SHELLハリウッド版を斜め見していたのだが、日本語吹き替えキャストに、オリジナル攻殻機動隊のキャスト(少佐・バトー、トグサ)が起用されると知って俄然テンションがあがることとなった。

そのテンションのまま観に行ったらこれが予想外によくできていて、これはもう脱帽するほかなかった。最初は少佐の名前が「ミラ・キリアン」になっていてこれがどうもひっかかってはいたのだが・・・これは後で話をしよう。

実写版といいつつ、原作リスペクトのかけらもない作品群は、GHOST IN THE SHELLの爪の垢を煎じて飲むべきだろう。正確には攻殻機動隊リスペクトというより、押井守リスペクトが半端ない作品、それがハリウッド版GHOST IN THE SHELLだった。

圧巻なのはスカーレット・ヨハンソンの「義体感」が半端なくて、彼女ブラス、ハリウッドのCG技術が本気だすとここまでできるのか、という衝撃があった。それとバトーもこれ以上は考えにくいくらい「バトー」だったことにも驚いた。少佐はいうまでもなく機械の体に人間の魂が入っているのだが、この人間の魂の入り方が実に絶妙。スカーレット・ヨハンソンの起用は当初物議を醸しだしたが、結果的には成功だったといえるのではないだろうか?

日本語吹き替えキャストの力もあるが、GHOST IN THE SHELLの世界観が現実と非現実が虚実入り乱れるからこそ、白人の義体が日本語で話しても違和感はなかったと私は思う。むしろ、字幕版なら、英語で話す少佐と、日本語をはなす荒巻との会話が成立しているという電脳世界ならではの不思議な感覚を味わえたかもしれない。機会があれば字幕版でもみてみたい。

考えてみたらすでに現実が攻殻機動隊の世界に追いつきつつある時代なんだから、今の時代に攻殻機動隊をリメイクする意味合いは十分にあるのだ。

最初は「なぜ少佐の名前が変わっているんだよ?」とブーたれていたが、じつはしっかり意味もあった。そういう意味では、GHOST IN THE SHELLに押井守版からの再解釈がないわけでもない。しかし、それはあまりある攻殻機動隊リスペクト、押井守リスペクトがあった上で作られているのではないか、と私は思っている。

でないとあそこまでの再現率はおよそ不可能ではないだろうか。アニメでも印象的なシーンは絶対外していないし、それをオールCGに頼るのではなく、ちゃんと海外ロケを敢行(しかも香港にもちゃんといっている)しているあたりは、本気さをいやというほど感じた。こういうの作られちゃうとアニメ版はやりにくいよなあと思っていたら、神山健治&荒巻伸司両監督による攻殻の新作も控えているらしい。それはそれで楽しみである。

正確にいうなら、GHOST IN THE SHELLは、「攻殻機動隊の実写版」というより、「実写+CGによる攻殻機動隊のリメイク作品」と形容した方が正しいかもしれない。アニメ版も様々な解釈で設定も異なるのだから、ハリウッド版「GHOST IN THE SHELL」も、ひとつの映像化として正しい答えのひとつだと私は思っている。






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