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[心理×映画] 映画鑑賞記・60歳のラブレター

10年7月23日鑑賞。

この作品を知ったときは「ああ、中村雅俊さんももう60の役をやるのか...」という感慨しかなかった。でもまあそんなに
はずれではないだろうと思って見始めたが...

この映画は住友信託銀行主催で2000年より毎年行われている、長年連れ添った夫婦が口に出しては言えない互いへの感謝の言葉を
1枚のハガキにつづる応募企画「60歳のラブレター」に着想を得て製作されたものらしい。

根っからの企業人として、重役となるまでに会社に貢献し続けた橘孝平は、定年を迎えるとともにすっかり愛情のさめてしまった専業主婦のちひろと離婚し、新たに広告会社で腕を振るうことになった。仕事にも手を染めず世間知らずであったちひろが、友人のアドバイスで生き甲斐を見つけてゆくのとは裏腹に、頑固者の孝平は若い仲間達との仕事上のすれ違いに困惑していた。

一方、ちひろと親しい魚屋の主人、正彦は主治医の佐伯に糖尿病気味だと言われ、妻の光江にウォーキングを強いられる。その姿に佐伯は亡き妻との生活を重ね合わせ、孤独を噛みしめる。そんな佐伯に小説の医学用語翻訳で世話になっている翻訳家の麗子があらわれ、長い独身貴族の暮らしが辛くなり、彼に心を寄せてゆく。

三組の男女は、自分達を取り巻く状況の変化から、次第に相手に対する自分自身の愛情の変化を思い知らされるのだった。家族や社会のために働いてきた人たちが、第二の人生をどう生きるか考える年代である60歳。

全国から寄られ手紙をまとめた書籍「60歳のラブレター」を原案に、タイプの違う三組の夫婦の人生模様を挟み込み、等身大の
60歳の姿を描いた、真の意味での大人のラブストーリー。社会的成功は出来たが心は満たされない人、平凡な人生だと思ってきたけど、それが幸せだったと気付く人…様々な幸せの形を提言し、観る人全てが共感するストーリーとなっている。

中村雅俊と井上順が、本来のイメージとは逆の不倫夫と堅実な男やもめを演じている。監督は『真木栗ノ穴』の深川栄洋、脚本は『ALWAYS 三丁目の夕日』の古沢良太。

いや、これは群像劇だったんだな。確かにこれは若い人が見てもピンと来ない映画かもしれない。だが、15年後に現実として迎え入れる年代になってしまった私にとってはこれは複雑な映画だった。戸田恵子さんの「この年になって人を好きでいることがどんなに大変か、わかんないでしょ」というのは身につまされたなあ...でも60になってこの人達と同じような情熱をもてるのか...

今の自分に置き換えると途端にしょぼくれてしまう。やはり銀幕のスターである雅俊さんと、奥さん役の原田美枝子さんは浮世離れしている。ラストシーン近くでまるで青春映画のような格好で雅俊さんが登場するんだけど、一瞬総理が帰ってきた...ような感じがして、実際はああ、今の雅俊さんなんだって認識し直すんだけど、それでもやっぱ若いわ。そしてこういう映画でしか
有り得ない世界観をあたかも本当にありそうに思わせてくれるというだけでも凄いことだと思うのだ。冷静に振り返れば有り得ないんだけど^^誰も雅俊さんみたいに格好いいわけではないし、原田美枝子さんみたいに年取ってもかわいらしさを損なわないステキな感じでもいられないし。

だが、60という人生においての分岐点に於いて何を求め、生きていけばいいのか...迷っている人にはすこしばかりの勇気を与えたんじゃないかな。世代的にビミョーな私には、ものすごく心中複雑なモノがあったけど...それが映画といわれればそれまで。

-映画鑑賞記