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[アニメ感想] 2018年秋アニメ完走分感想文 やがて君になる

人に恋する気持ちがわからず悩みを抱える小糸侑は、
中学卒業の時に仲の良い男子に告白された返事をできずにいた。
そんな折に出会った生徒会役員の七海燈子は、誰に告白されても相手のことを好きになれないという。
燈子に共感を覚えた侑は自分の悩みを打ち明けるが、逆に燈子から思わぬ言葉を告げられる──
「私、君のこと好きになりそう」(あらすじは公式HPより)

矛盾を抱えたまま、モヤモヤ

「やがて君になる」は、基本百合アニメではあるが、百合にありがちな女の園的な描き方をしていないという点では、非常に稀有な作品ともいえる。最初第1話を見た時に感じたなんとも言えない背徳感みたいな気持ちは、たぶん私はがこの作品を「ガチ百合」話だと思い込んだせいかもしれない。

それ故に「この思い込みはリアルタイムで話を追うのに邪魔になる」と考えた私は放送終了を待って配信で一気見するという手に打って出た。結果的にはそれが当たりだと私は思っている。

主人公の小糸侑は誰かを特別に思うという事が理解出来ず、仲の良かった男子の告白も保留の末に電話で断ってしまうのだが、かたや、生徒会の先輩で次期生徒会長の呼び声高い七海橙子に唇を奪われてしまう。もちろん橙子との関係は秘密というやつなんだが、人前では「できる優等生」である橙子が、侑の前では甘えたり、すねたりしてみせる。

だが、人を特別に好きになる感情を知らない侑と、自分を好きになれない燈子の関係は一筋縄ではいかなくて、このあたりはリアルタイムで追いかけていたら結構しんどかったかもしれない。

侑は侑でめんどくさいのだが、燈子もまたかなり面倒臭いキャラクターである。必死に自分の「理想」に近付こうとしながら、素の自分を捨てきれず、かといって自分を好きにもなれないという矛盾を抱えたまま、モヤモヤしている。

自分が嫌いだから、自分を好きだと言ってくる人間のことも好きになれない。燈子の面倒くさい部分を中心に据えながらも、可愛い部分もしっかり描いてバランスをとっている。

僅かな感情を丁寧に

逆に侑の場合は更に、七海先輩とキスをしても、手を繋いでも、全くドキドキしないという点で特殊。好きでいてくれる先輩の存在を一見拒絶する風な態度をとりつつも好ましく感じ、会うだけで嬉しそうな先輩をかわいいと思えるようになりたいとも願っている点は面白い。

侑は先輩が心配になれば、助け舟を出さずにいられない。そのたびに「これは普通のこと」「誰に対しても同じ」と自分を納得させているのである。この矛盾に侑は気づいていない。

橙子は、自分が特別な存在であり続けることに異様な執着をもっている。彼女は今の関係を断ち切ることになったとしても、それをやめる事は死んでも出来ないという。そんな橙子に対して「先輩がわたしを好きなのは、わたしが決して恋愛感情を抱かない人間だからだ」と侑は理解する。ずっと恋愛に憧れてきたにもかかわらず、恋してはいけない矛盾に陥ってしまったのだ。

七海橙子が今まで誰の告白も受けなかったのはある意味「模範的な生徒会長でいる自分」が大事で、「素の自分」を知られて「ありのままの方が好き」と言われることは「模範的な生徒会長でいる自分」を否定されることになる。それは「死んでも嫌」なことなのだ。

だからこそ「好き」を持たず、尚且つただ傍にいてくれる侑は、都合のいい存在だったのかもしれない。「寂しいとき甘えさせて」「他の人を好きにならないで」「私のことを嫌いにならないで」と畳みかけてくる七海燈子の「好き」の気持ちの闇深さは、単なる青春ラブコメにない踏み込んだ姿勢を感じずにはいられない。

「特別な気持ちって何だろう?」「選ばれた方が嬉しい」など、日常に埋もれそうな僅かな感情を拾い上げ丁寧に描いている点は今期の作品中では異色の存在だった「やがて君になる」。残念ながら、原作が未完のためアニメは途中で終わっている。これだけ丁寧に作られるならば、ぜひ二期はみたい。

しかし、見る側にもある程度の覚悟と体力もいる。ある程度視聴者も選ぶ作品なだけに、万人ウケはしないと私は思っているが、それだけに「刺さる」作品なのは間違いないだろう。こういう意欲作がでてくるからまだまだアニメはやめられないなあ。

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