[アニメソング] アニメ的音楽徒然草 銀河旋風ブライガー
J9が愛された理由
今回は、80年代に一世を風靡したJ9シリーズの第1作目にあたる「銀河旋風ブライガー」のオープニングテーマである「銀河旋風ブライガー」をご紹介します。
70年代から登場した「美形悪役」の登場により、それまで基本男の子のものだったロボットアニメに、女性ファンがつくようになってきました。80年代はその女性層をターゲットにしたと思われる作品も登場してきました。J9シリーズはそんな作品群の一つだったのです。
ただし、アニメ本体のクオリティについていえば、お世辞にも高いとは言いがたく、特に絵については、昨今の作画崩壊なんて可愛いくらいに、酷いものでした。2018年12月現在、dアニメストアにてJ9シリーズは全話視聴可能ですので、あなたのご自分の目で確認されてみてください。
さて、そんなJ9シリーズがなぜ現代に渡ってまで愛されているのか?私なりに理由を考えてみました。
①金田伊功さんによる秀逸なオープニングフィルム
②小松原一男さんによる魅惑的なキャラクターデザイン
③二次創作者達の旺盛な脳内補完
あくまで、これは「私が考えている理由」なんで、現実にそうであるかどうかは関係ありませんので、悪しからずご了承ください。では一つずつ考察していきましょう。
二次創作J9の功績
まず①。これは二次創作者というより、広い範囲でJ9シリーズを愛するファン層にとっては「共通認識」なのではないか、と私は考えています。ブライガーのオープニングは金田伊功さんの「代表作」と呼んで差し支えないでしょう。今でこそオープニング・エンディングは本編とは異なる編成で気合い入れて作ることが当たり前になっていますが、その先駆けはやはり金田伊功さんで間違い無いと思われます。
ちなみに、J9シリーズ2作目の「銀河烈風バクシンガー」では、金田伊功さんの師匠にあたる荒木伸吾さんと姫野美智さんがオープニングを担当しており、アクションメインのブライガーとはまた一味違う「元祖・美形キャラデザイナー」としての美麗な仕事ぶりが見られます。
②の小松原一男さんは、79年の銀河鉄道999や、86年の風の谷のナウシカのキャラクターデザインで有名なアニメーターさんです。J9シリーズではキャラクターデザインのみの参加でしたが、小松原一男さんが本編にも参加していたら、多分J9シリーズの歴史も変わったでしょうね。
③については、完全に私の主観になります。先程から再三再四申し上げているように、J9シリーズの本編作画というのは、それは酷いもんでした。しかし、これが二次創作者の皆さんに火をつけたのか?プロより凄いレベルの絵師さんたちの「脳内補完」によって生み出された作品群は、いずれも完成度の高いものばかりでした。
これらの「二次創作J9」は、技術の上にたっぷりと愛情が注がれていました。こうした絵師さんの中からは、プロの道に進む方も現れました。著作権的にはグレーな二次創作が現在でもお目こぼしになっているのは、そうした同人活動をする中から、金の卵が生まれてくる可能性が高いからでしょう。それによって権利者にもメリットがある事が、この時代あたりから広く世に知られるようになった点が大きいのではないか、と私は考えています。
音楽性の高さ
このほかに要因をあげるとすれば、ブライガーとバクシンガーは、宇宙とロボットと歴史(時代劇)の要素をミックスした点。さらにはサスライガーでは、ジュール・ヴェルヌの小説「80日間世界一周」をモチーフに、世界観やファッション、BGMなどは禁酒法時代を舞台にしたギャング映画を意識して作られたこともあげられるでしょう。このあたりのアダルト世代を意識した作風(ブライガーにはベッドシーンの描写まであります!)も人気でした。
以上は、主に作品のビジュアルや歴史的背景から考察してきましたが、J9シリーズの持ち味はその高い音楽性によって出来上がっていると言っても過言ではないでしょう。全シリーズの主題歌を作曲した山本正之さんは、ブライガーとバクシンガーの本編楽曲の制作にも関わっていますし、J9シリーズ第3作目の銀河疾風サスライガーの本編BGMは、ジブリ作品でおなじみの久石譲さんが担当されています。
この音楽性の高さはJ9シリーズのひとつのウリになりました。歌手もブライガーはたいらいさおさん、バクシンガーは山形ユキオさんと、坂部悟さんのツインヴォーカル。サスライガーはMOTTINこと日本ロック界の重鎮でもあったアイ高野さすんと豪華なメンバーがそろっています。
ジンライガーの行方は・・・?
J9シリーズで、残念なのは音楽性に力を入れすぎて?肝心のアニメの出来が崩壊してしまった点ではありますが、逆に崩壊していたからこそ、二次創作も盛り上がったし、そこから多くの才能がプロになっていったことを思うと、アニメ界に残した功績は決して小さくないと私は思います。
銀河旋風ブライガーは、一説によるとファンの九割が女性であったと言われていますが、たしかにあの時代にJ9シリーズの同人で男性をみたことなかったですから、あながち間違いではないと思います。その彼女たちの熱い情熱に支えられたJ9シリーズは、幸せな作品だったんではないでしょうか?
最後になりましたが、2018年11月にJ9シリーズの脚本・構成を務められた脚本家の山本優さんが71歳でお亡くなりになられました。J9シリーズの続編として企画されていた「銀河神風ジンライガー」プロジェクト(水滸伝がモチーフになっていたそうです)がどういう形になるかはわかりませんが、ご存命ならどんな作品を見せて下さったか気にはなりますね。実際、同年代のオタクにとってJ9シリーズ復活というのは、ちょっとしたニュースでしたからね。それだけに残念でなりません。
山本優さんのご冥福を謹んでお祈りしたいと思います。