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[アニメソング] アニメ的音楽徒然草 誰がために

宝島とのカップリング

このコラムは追悼目的でしたためているわけではないのですが、やはり古い曲を取り上げると、どうしても人の生き死にと結びつきやすくなるようです。個人的な話になりますが、今回とりあげる、サイボーグ009(テレビ版第二作目)のオープニング主題歌「誰がために」を入手したのは、今はなき「8センチCD」で購入したのが最初でした。いわゆる往年の名作をカップリングで復刻するという企画の一環で発売されたと記憶しています。

実はこのシングルCDでサイボーグ009とカップリングされていたのは、前回の当コラムでご紹介した「宝島」(オープニング・エンディング)だったのです。個人的にはそういう事情もあり、なんとなくですが「宝島の次はサイボーグ009だな」という気持ちでおりました。

しかしながら、まさか「誰がために」を歌われていた成田賢さんが、このタイミングでお亡くなりになるとは予想だにしていませんでした。正直「サイボーグ009」や「誰がために」については色々書きたいことがあるのですが、一度はまとまりかけていたアイディアがぐちゃぐちゃになるくらい衝撃でした。

実は成田賢さんはそれほどたくさんのアニソン・特撮ソングを歌われているわけではありません。代表作は1979年の「誰がために」と同年代(1980年代)に放送されていたスーパー戦隊シリーズの第3作目にあたる「電子戦隊デンジマン」(オープニング・エンディング)が真っ先にでてきます。この三曲があまりにインパクトが強すぎたせいもありますが、シングルで発売されているのもこの三曲だけです。

しかし、これが後々まで語り継がれる名曲にあたっているわけですから、凄いことです。ましてや「誰がために」は作詞・石ノ森章太郎、作曲・平尾昌晃、編曲・すぎやまこういちという奇跡のような才能が結集していたわけですから、これを歌いこなす実力がなければ、後世にも残らないわけです。

009と町田よしとさん

実はサイボーグ009が放送される前に直前特番というものが放送されています。テレビ朝日としても肝いりの番組として力を入れていたのでしょう。この番組で主題歌を披露したのが、成田賢さんでした。正直、これが私にとって最初で最期の「成田賢」体験でしたが、独特な声質とあまりの歌唱力にテレビの前の私はひたすら圧倒されたことを今でもはっきり記憶しています。

さて、サイボーグ009のアニメ化はこの79年版が初めてではありません。1966年と1967年の2度の劇場アニメ化を経て、1969年に最初のアニメ版が制作されています。

ただし、この劇場版2作とテレビ版第1作目は、原作とは大きく乖離した内容でした。テレビアニメ創生期の作品では、多くが「原作は原作、テレビはテレビ」という作品ばかりでした。石ノ森章太郎作品も基本的にはその流れをくむものですが、ことサイボーグ009に関しては、石ノ森先生も思いいれが強かったようで、第2作目に関してはより原作に近い作風を目指していたようです。

とはいえ第2作目も、基本的な設定は同じくしながら、アニメはアニメとして自立した作品にはなっています。この当時は御大・手塚治虫先生が、アメリカ進出をぶち上げて「火の鳥2772愛のコスモゾーン」という劇場アニメを制作していました。

これに対して石ノ森先生も海外市場を目指してサイボーグ009を再々度劇場アニメ化します。それが「サイボーグ009超銀河伝説」という作品なんですが、この映画の主題歌を担当しているのが、「宝島」の町田よしとさんなんですね。この繋がりもあるため、宝島とサイボーグ009はセットで語りたかったわけなのです。

「誰がために」と「反戦」の関係性

しかし、火の鳥2772もそうでしたが、超銀河伝説も海外市場に注力し過ぎたせいか、国内での作品自体の評価は芳しいものではありませんでした。特にサイボーグ009に関しては、テレビ版第2作(日本サンライズ製作)の評判がすこぶる良かったため、東映動画が肝いりで作ったにも関わらず、超銀河伝説が割りを食う形になってしまったとも考えられます。

皮肉な話ですが。テレビ版第2作がこれほど指示された大きな理由は、やはり「誰がために」という稀に見る名曲に、名匠・金田伊功さんがてがけた絵がぴったりフィットしていたからに他ならないでしょう。

石ノ森先生は自作の映像作品について、時には監督、時には出演者として関わっていってました。「サイボーグ009超銀河伝説」は製作総指揮でした。しかし、本業以外のお仕事で一番実績を残されたのは「作詞」だと私は思っています。

「誰がために」というタイトルの秀逸さは今更申すまでもない事ですが、これはヘミングウェイの小説で映画化もされた「誰がために鐘は鳴る」が原典なのでしょう。スペイン内戦を題材にしたこの作品は、根底に「反戦」をテーマにしているサイボーグ009と共通項が見いだせます。

「誰がために」に出会った79年というのは、ファーストガンダムやルパン三世カリオストロの城ら、後年の人格形成に多大な影響を与えた作品群が多数輩出された歴史的な1年でした。私は当時中学三年生。人生において、最も多感な時期にサイボーグ009はじめ多くの名作に出会えた幸運については、ひたすら感謝する以外にないですね。

成田賢さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。

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