[アニソン] アニメ的音楽徒然草 めざせ!一番
2018/09/16
ナンバーワンが時代錯誤に
今回は、NG騎士ラムネ&40の主題歌「めざせ!一番」をご紹介します。NG騎士ラムネ&40は、1990年からテレビ東京系で放送された作品です。歌っているのは、主役のラムネスを演じた草尾毅さんと、ラムネス応援隊(横山智佐、玉川紗己子、松井菜桜子)のみなさんです。
「めざせ、一番」は歌詞を読むとわかりますが、何でも一番になりたいという願望が色濃くでている作品です。ケンカにも強くなりたいし、偉くなりたいしモテたいし、などなど…。
こうしてみると、世相的にナンバーワンからオンリーワンへ「世代交代」するには、90年代はまだ早かったとも言えます。といっても「NG騎士ラムネ&40」が描いていた熱血は、どちらというと真面目に語られるというより、80年代には漫画「炎の転校生」などで、すでに茶化されていましたから、ナンバーワンが時代錯誤になり始めていたのは確かです。
スポ根ものの終焉は既に「新・巨人の星II」において、「行け行け飛雄馬」がエンディングテーマに「降格」した時点で明らかになっていました。以降は「ナイン」「タッチ」の出現によって、加速度的にスポ根は駆逐されていきます。
90年代というと、先にあげた「炎の転校生」がオリジナル「レーザーディスク」アニメーションとして映像化されています。ということで、まだ「茶せば」スポ根の需要があったわけです。しかしながら、時代がオンリーワンを求めていくと、ほぼスポ根の需要は消滅したかにみえました。
恋愛>スポーツから・・・
ところが、近年「スポ根」ほどではないにしても、スポーツに打ち込む主人公を描いた作品が登場しつつあります。2018年夏アニメの「はねバト」はバトミントンを、「はるかなるレシーブ」はビーチバレーを扱っています。
見ていて私が感じるにこれらの作品と、80年代を席巻したあだち充漫画との決定的な違いがあるように思います。それは作品中の恋愛濃度。
わかりやすい例でいうと、「タッチ」などは「恋愛>スポーツ」という描かれ方をしていますが、「はねバト」や「はるかなレシーブ」には男女の恋愛自体が登場していません。原作は未読なのでわかりませんが、アニメを見る限りでは「恋愛<スポーツ」という流れになっているように感じます。
とここまで書いて気がついたのですが、これらの作品の台頭が、即スポ根の復活、あるいはスポ根を茶化す表現の復活にはなっていない点ですね。ジャンプ漫画の王道を行く「テニスの王子様」などは、表向き、才能のある登場人物がひたすら勝って勝って勝ちまくるストーリーになっています。
高度成長期の神話は完全崩壊した
つまるところ異世界に転生してチート能力を発揮するラノベの主人公とそう大差はないわけで、このあたりが新世代のスポーツマンガの主流といえるでしょう。
バスケ漫画の金字塔である「スラムダンク」も90年代を代表する作品ですが、主人公が努力して一流のプレイヤーに成長していく物語でもありました。しかし、同じジャンプ漫画、同じバスケ漫画でも「黒子のバスケ」は全然違います。下手すれば超能力バトルマンガにもなりかねない「テニスの王子様」ほどぶっ飛んだ表現はありませんが、才能のあるもの同士の闘いが描かれているという意味では「今風のスポーツマンガ」といえるのではないでしょうか。
となると、NG騎士ラムネ&40のような作品が出てくるとしたら、根性の部分にフォーカスするのではなく、主人公のチート能力を笑い飛ばす形になっていくように私は思います。
そうなると、対象であるチート能力自体、根性でどうにかなるようには思えないわけです。努力すればなんとかなる、という高度成長期の神話が完全崩壊した21世紀の現代では、「めざせ一番!」を笑い飛ばせないくらい窮屈になってしまったのかと思うと、やや切ない感じがしますね。