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[アニメソング] アニメ的音楽徒然草 insight(インサイト)

2018/08/31

オリジナルを知らない世代へ

今回は2015年に放送された「ガッチャマンクラウズインサイト」のオープニングテーマ、WHITE ASHの「insight」をご紹介します。

1964年生まれの私は当然、1972年のオリジナルのガッチャマンで生まれ育ちました。しかし、オリジナルを知るからこそ、あれをオリジナルのまま現代にリメイクするのは不可能だとも考えています。

ですから、タツノコバン「アベンジャーズ」の劇場版アニメ「Infini-T Force」(2018年2月公開)よりは、ガッチャマンクラウズの方がより現代にふさわしいやり方だったと私は思っています。

タツノコプロは2018年現在、日本テレビ傘下の企業です。キャラビジネスとして考えた結果、オリジナルガッチャマンを知る世代以外の年齢層をもターゲットに取り込もうとした戦略を描いたのは至極当然のことです。とはいえ、その世代はオリジナルを知らないわけです。

知らなかったといって、オリジナルを再放送し続けるだけでは、キャラクターの寿命を延ばすことにはなりませんから、新たなファン層を取り込むには一工夫がいるわけです。そこで21世紀のガッチャマンを生み出す必要があったわけですね。

「ガッチャマンクラウズ」シリーズは、正直オリジナルとは全くの別物です。旧作を知る世代にはニンマリする仕掛けも施されていますが、基本的には科学忍者隊ですらありません。正確にはリメイクではなくリブート(フィクション作品において、シリーズにおける連続性を捨て、新たに一から仕切り直すことを意味する)といった方がた正しいでしょう。

完全無視はできない

クラウズの名が示す通り、新しい時代の新しい敵と闘う新しいガッチャマンはきちんと描かれています。ガッチャマンの派生作品とはいっても、そのパッケージを借りたオリジナル作品と呼んでも差支えないと思います。

とはいえ、ガッチャマンの名を使う以上、本筋に流れるテーマ性みたいなものはブレさせるわけにはいきません。現在50代くらいの年齢でも今では普通にアニメを見てますので、ガッチャマンを知らない世代に向けて作るとはいっても、オリジナルの世代を完全無視しては作れないのが悩ましいところです。

私的にはガッチャマンクラウズは続編のインサイトも含めて非常に完成度の高いリブート作品になっていると思っています。その成功の要因はクラウズシリーズの主人公である一ノ瀬はじめにつきると思います。演じた内田真礼さんも当然ながら、オリジナルのガッチャマンをリアルタイムでは知らない世代の一人です。

優良なリブート作品

はじめは、普段から何を考えているのかイマイチ分からない掴みどころのない態度が目立ち、奇異の目で見られることもしばしばある女の子です。しかし、実際はうまく言語化できないながらも人々の繋がりや平和を真剣に考えている思慮深い人物としても描かれています。

また、はじめは、また現代日本人には珍しい、物事を決して日和見な考えで見ないニュートラルな価値観の持ち主であり、他のメンバーとは一線を画しています。

ガッチャマンクラウズの成功はひとえにこの一ノ瀬はじめという特異なキャラクターを生み出したことにつきます。そして、インサイトでは新しいガッチャマンになる三栖立つばさとしばしば対比されるように描かれています。

実際他のメンバーが、ヒーローの力たる「武力」によって解決できない問題に直面し迷走してゆく中、彼女だけは大局を見失わず冷静に問題に立ち向かっています。それは続編のインサイトではより顕著に描かれています。

その型破りかつ強い信念が次第にメンバー達を感化させ、自らの殻ややり方に固執していた彼らを大きく成長させる事にも繋がっていくという点で、彼女はガッチャマンの中でも唯一無二の存在であり、唯一の二つ名を持たずとも、特別な人物として、視聴者に認識させることにも成功していたのではないでしょうか?

もちろんガッチャマンに変身する時の「バードオン!」の掛け声や、太古から地球を監視してきた監視者にして評議会のメンバーであるJ・J・ロビンソンに、大鷲の健役をつとめた森功至さんを配したりしている点などにも、旧作へのリスペクトがみてとれます。

いかにも現代風なテーマ、現代風なアレンジをしながら、実はガッチャマンの根底にあるものを変えずにすくい出して描いたという点では、インサイトという曲共々「ガッチャマンクラウズ」は近年稀にみる優良なリブート作品だと、私は思っているわけです。

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