[映画鑑賞記] 未来のミライ
2018/12/03
2018年7月27日鑑賞。
とある都会の片隅の、小さな庭に小さな木の生えた小さな家。
ある日、甘えん坊の“くんちゃん”に、生まれたばかりの妹がやってきます。両親の愛情を奪われ、初めての経験の連続に戸惑うばかり。そんな時、“くんちゃん”はその庭で自分のことを「お兄ちゃん」と呼ぶ、不思議な少女“ミライちゃん”と出会います。
“ミライちゃん”に導かれ、時をこえた家族の物語へと旅立つ“くんちゃん”。それは、小さなお兄ちゃんの大きな冒険の始まりでした。
待ち受ける見たこともない世界。むかし王子だったと名乗る謎の男。幼い頃の母との不思議な体験。父の面影を宿す青年との出会い。そして、初めて知る「家族の愛」の形。
さまざまな冒険を経て、ささやかな成長を遂げていく“くんちゃん”。果たして、“くんちゃん”が最後にたどり着いた場所とは?“ミライちゃん”がやってきた本当の理由とは―(あらすじは公式HPより)
四歳児に聞こえない
ハンソロに続いて今月2回目の映画鑑賞。ハンソロは途中で寝落ちしたけど、未来のミライは最後まで見られた。どちらも一般的な評価はあまり高くなかったのに。やはり映画には向き不向きがあると言うことだろう。
個人的に未来のミライはよくも悪くも細田守節全開の、言い方はよくないが、雰囲気映画の典型的な例。当然、よかったところと悪かったところがある。
まず、悪かったというか気になった点をあげて、その理由を説明してみたい。
①くんちゃんの演技が四歳児にみえない(聞こえない)
②主役はどうみても、くんちゃんなんだが、なぜタイトルが未来のミライなのかがわからない
③くんちゃんの赤ちゃんがえりに感情移入できない
①は、個人的にはキャスティングミスだと思っている。私は素人声優でも「合っていれば」問題なしとする立場だが、今回のくんちゃんのキャストはミスキャストだと思っている。声優の前に俳優というのであれば、声だけでも4歳児を演じられるのが俳優だと私は思っている。正直、あっていなくても絵や演出でカバーしようと思えばできないことはない。そうしてやってきたのが、多くのジブリ映画でもある。
なぜ、未来のミライ?
しかし「未来のミライ」が決定的に「やっちゃった」のは、くんちゃん以外の子どもたちの声をいわゆる「プロ声優」や「子役」にゆだねた点で、絵面では年下のはずのくんちゃんがどうしてもほかの子どもたちより年上にしか聞こえない点である、と私は思っている。
作画面ではとても頑張っていて絵は100点満点の四歳児になっているのに、声が邪魔しているという点では過去の細田監督作と比較してもマイナスという評価をせずにはいられなかった。
②はとうとう最後までみていても謎だった部分。確かにくんちゃんに変化を促したのは未来ちゃんで間違いないし、タイムスリップとかいうありふれた設定よりは子どもが体験した不思議物語としてみたら、面白かったと思うのだけど、でもやっぱりタイトルにするほどではなかったかなと。これで見る側の焦点がボケたとしたらもったいないと思った。
③に関しては①とかぶるけど、声の演技が大人すぎて赤ちゃんがえりしているのに、そう見えなかったというのが一番の理由。二番目は私自身に赤ちゃんがえりの体験があまりない(のちにゆがんだ形ででてきたけど)ためか、くんちゃんのようにストレートなものいいで駄々をこねる子どもが好きになれなかたっというのもある。
夏=山下達郎!
では次に良かった点もあげておこう。
①山下達郎さんの歌
②クオリティの高い作画
③福山雅治さんの演技
①は「未来のミライ」を「雰囲気映画」といった所以でもあるが、細田作品と山下達郎さんの楽曲は実に親和性が高い。「サマーウォーズ」以来二度目のタッグになるが、細田監督作の全てが達郎さんの主題歌でもいいくらい似合っている。個人的には山下達郎という人は、夏ソングのミュージシャンだという認識があるので、この時期に聞くのはまた格別なのである。今年は特に酷暑でもあるので、せめて雰囲気だけでも夏らしいさわやかさを感じたいなら、OPもEDもうってつけの曲だと思う。
②は、宮崎駿さんとも仕事をしていた田中敦子さんら熟練のアニメーター陣が実に細かい演技をつけていたおかげで、アニメーション映画としてもたいへんクオリティが高い映像になっていたと思う。ただ、くんちゃんの動きはクオリティが高すぎて、声優さんの演技と乖離してしまう事態にもなってしまったが・・・・
雰囲気映画としては悪くない
③は、キャスティングされていたのは知っていたのだけど、あまりに自然すぎてエンドタイトルみてびっくりした。こちらは「俳優」としての福山雅治さんの本領がいかんなく発揮されている。劇中で出てくる唯一の「格好いい大人」という位置づけは、ともするとリアリティを失いがちになるのだが、福山さんの演技は、幼いくんちゃんに影響を与えた人物としては文句ないものだった。
とまあ、いいところもあり、悪いところもある「未来のミライ」だけど、総じて雰囲気映画としては悪くない出来だと思っている。バケモノの子は終盤だれたけど、「未来のミライ」は時間的にもちょうどよかった(1時間40分)し、くんちゃんの冒険譚として楽しむ分は問題ないと思う。
とはいえ、細田監督がこだわる家族論というのは私にはどうも旧態依然とした感じに見えてしまうので、そろそろ新機軸を打ち出してほしいなというのが正直ある。私は血縁云々に縛られるより、個人がいかにして生きやすいかを優先して考えているので、そもそも「未来のミライ」のような話自体を本当は受け付けない。それでも最後まで見てしまったということはつまらない映画ではなかったということだろう。さて、次回はどんな作品を見せてもらえるだろうか?