[特撮ソング] 特撮的音楽徒然草 駆けろ!スパイダーマン
2017/02/23
本日は久々特撮枠より「駆けろ!スパイダーマン」をご紹介します。スパイダーマンというのはご存知マーベルコミックの看板作品にして、近年も続々と映画化されている世界的人気ヒーローですが、そのマーベルコミックスから版権を買った東映が自社制作した特撮番組が「スパイダーマン」でした。この時期、「キャプテンアメリカ」も映像化する予定があったそうですが、諸般の事情から中止になり、ミスアメリカというキャラを残す形で作品化したのが、現在まで綿々と続くスーパー戦隊シリーズの第三作目にあたる「バトルフィーバーJ」です。
原作のスパイダーマンはそれまで存在していたアメリカンヒーローとは一線を画し、悩める等身大の青年を描いていました。話も割と重めで近年映画化されたスパイダーマンは概ね原作の路線を踏襲しています。
しかし東映版はコスチュームこそスパイダーマンですが、作品内容は東映オリジナルです。故郷を滅ぼされたスパイダー星人・ガリアから、蜘蛛の能力を与えられた山城拓也が、超人・スパイダーマンとなり鉄十字団と戦うという物語になり、スパイダーマンがレオパルドンという巨大ロボに乗って闘うというかなり荒唐無稽な内容に改変されました。
前述のマーベルコミックとの版権契約は「お互いのキャラクターを五年間自由に使っていい」というかなりアバウトなものだったそうですが、そのおかげで東映版はスパイダーマンが巨大ロボで闘うという世界でも例をみない作品になりました。
さてこの「駆けろ!スパイダーマン」には、「チェンジ、レオパルドン!」という掛け声が収録されています。当初この掛け声はアメリカ産ヒーローということで、英語が話せる外国人をあてる予定でした。しかし収録スケジュールの中で予定にあう外国人タレントが見つからず、止むを得ず?フランス人の方に依頼したという嘘のような本当の話があります。作曲した渡辺宙明先生によると「収録は難航した」そうです。
こうして日本語の発音でも英語圏の発音でもない、フレンチ訛りの「チェンジ、リーオパルドーン!」が誕生したわけです。
さて、いくら契約上、自由にしていいとはいえ、原作を担当した作家が東映版スパイダーマンをどう思っていたか、は気になるところです。スパイダーマンの原作者スタン・リーは東映版をみて優れた特撮技術とクモ男らしさを出したアクションには高い評価を与えています。一方で「世界各国でスパイダーマンが製作されているが、その中でも日本版だけは別格だ。レオパルドンは別として…。」とのコメントを残しています。
このリーのコメントに尾ひれがついて「マーベルが東映版を見て激怒したため、ソフト化は不可能」という都市伝説が出来てしまいました。しかし、商品化ができなかったのは、実を言うと先述した版権契約が残っていたためで、現在はちゃんと商品化されています。
ちなみに、マーベルプロダクションはアメリカで東映版スパイダーマンを売り込もうとしたらしいですが、諸般の事情によりかないませんでした。しかし、この東映とのコラボから後年アメリカ版スーパー戦隊であるパワーレンジャーが誕生したのですから、世の中わからないものです。
近年マーベルコミックの中で世界でローカライズされたスパイダーマンがコミック化されていて、その中にレオパルドンが登場したことで、無事東映版スパイダーマンは本国アメリカデビューを果たしました。
歌っているヒデ夕樹さんは、もともとはジャズ畑にいらしたそうで、アニメや特撮主題歌を数多く歌われています。ちなみに芸名の名付け親は先だって亡くなられた藤村俊二さんです。名前のもじり方がいかにもおひょいさんっぽいな、と由来を知った時は思ったものでした(笑)
ヒデ夕樹さんの声は私的には何処か哀愁を感じるもので、より持ち味が生かされているとしたらオープニングよりエンディングの「誓いのバラード」の方に軍配をあげます。しかしながらエピソードの面白さではオープニングの「駆けろ、スパイダーマン」に勝るものがないため、今回はオープニングをご紹介しました。
機会があれば「誓いのバラード」も考察してみたいですね。