ドラゴンゲート小倉大会(2019.6.12 水 小倉北体育館)
イントロダクション
滅多に行かないドラゴンゲートだが、たまたま招待券を頂いて観にいくことに。ちょうどスーパージュニアも終わったし、WWEのPPVも見終えて時間があったというのもある。個人的に40代は学びの10年にあてるつもりで、いろんな講座に出ていたけど、50過ぎたら自由にする予定だったので、今は介護以外に最優先しているのはプロレスということになる。
よくドラゴンゲートにはドラゴンゲートしか見に行かない客層がいると言われている。それは中に入ると非常に感じる部分だが、私のように特定個人や団体を応援しないスタンスで、プロレスだけ楽しんでいる層には、実をいうとドラゴンゲートは非常に敷居が高い。だから、自分からあまり積極的には観に行かない団体になってしまった。
しかし、CIMA派が事実上離脱したことによる、ウルティモ校長との急接近や、かつて「素行不良」で団体を出て行った選手たちの里帰り、さらにはマシン軍団の登場など、今のドラゲーには一見さんが食いつく要素がたくさんできている。まあ、小倉大会にはそのどれもが来ていないんだけど…。
実は小倉大会に行く前にケアマネさんと介護の打ち合わせをしていて、結構ギリギリになってしまったため、うちわとタオルと水を忘れていたことが判明。空調がない小倉北は、この時期気温22度くらいでも天然サウナになる。おかげで中に入った途端に汗が吹き出してきた。
ちょうど会場に入ると練習生が実戦形式のスパーリングをしていた。これは悪くないのだが、下関みたいに第0試合として、レフェリーつけた方がより選手のためには勉強になるのではないか?プロレスは公開練習より、アンダーガード組んで若い層に実戦を経験させる方がむいていると私は思う。
第一試合:
○Kzy&横須賀ススム vs 土井成樹&×ジェイソン・リー
今やWWEでもスーパースターになったアポロ・クルーズやリコシェらを輩出したドラゴンゲート。現在参戦中のジェイソン・リーもまたひそかな野心を持ってこのリングに上がっていると、私は睨んでいる。
かつてはゼロワンに参戦していたリーがドラゲーの先に見据えているのが新日本なのか、WWEか、あるいはAEWかはわからないが、いずれに進んでもリーにはメリットしかない。出ていかれたゼロワン以外の団体にとっても、香港や中国は重要な市場だから、オファー出す団体側にもメリットがある。WWEとAEW、そしてドラゲーは既に中国にも進出しているし、いずれ新日本もそうした流れに乗ってくるだろう。かつてゼロワンのジェイソン・リーを私は一度しか見られなかった。そうなるとドラゲーでのリーがあとどれくらい見られるのかは誰にもわからないのだ。
さて、試合はやはりというか、Kzyがとくにリーを意識しまくり。ここにススムのうまさと土井の機動力が加わり、なかなかの熱戦になった。
Kzyの試合を見ていると戸澤の抜けた穴に見頃なくらい収まったかな、と感じる。ただ、戸澤の代打で終わるなら、それはそれで勿体ない。やはりKzyはKzyのキャラクターをきわめてほしい。それだけが少し気になった。
あと、ススムのダンスは場違い感が半端なかった(笑)まあそれも含めての横須賀ススムなんだけどね。
第二試合:
吉野正人&○ドラゴン・キッド&石田凱士 vs Kagetora&×ヨースケ♡サンタマリア&ドラスティック・ボーイ
ドラゲーの魅力はベテランと若い力がうまく噛み合っている点で、仮にスター選手の離脱があってもすぐにとってかわる人材が豊富にいる。これは団体の強みといっていいだろう。
このカードも2015年デビューになる22歳の石田や、23歳のメキシカン、ドラスティックボーイ(しかし、キャリアは9年!)がフィーチャーされながら、吉野やキッドがどう試合を作っていくか?
と思っていたのだが、試合はやはりマリアを中心に進んでいく。地方のお客さんをつかむには間違いではないのだけど、そうしたからみ抜きで石田やボーイのからみをもっとみていたかったな、というのはある。
この試合に限らず、この日のドラゲーは相対的にわかりやすい方に針を振ろうとしていた感はある。ただ、必要以上にわかりやすくが行き過ぎてもプロレスはうまくいかない。確かに盛り上がったんだけど、結果的に石田あたりは埋没してしまっていた。
その辺は残念だったかな。
第四試合:
Ben-K&○シュン・スカイウォーカー vs PAC&×ビッグR清水
エイドリアン・ネヴィルとしてWWEのスーパースターになったPAC。以前に比べると205liveなど遅まきながらクルーザー級にも力を入れ出したWWEだが、そもそも最高権力者のビンスは軽量級をそれほど重要視していない。
したがって、ネヴィルも一軍半のような扱いでなかなか浮上する機会がなかったように私にはみえた。そんなネヴィル…いやPACがドラゲーに里帰りしつつ、AEWと契約するという手に出てきた。潤沢な資金を擁するAEWとは、実はCIMA率いるOWEが提携しているため、話がややこしくなる。
この試合は、7.21神戸ワールド記念ホールでは、PACにBen-Kが挑戦する前哨戦。もしPACがAEW優先のスケジュールを組んだ場合、彼が巻いているオープン・ザ・ドリームゲートの扱いが難しくなってくる。じゃあ神戸でBen-KがPACに勝って戴冠…というのも今ひとつピンとこない。
そもそもなぜ基本パワーファイターばかりを集めた?ヒールユニットREDに、PACのようなハイフライヤーがいるのかもよくわからない。今まで正統派でやってきたPACの新たなる挑戦とみるべきか?
試合はいきなりREDが急襲。そのまま場外戦になだれこんでいったが、ハードコアもかくやという場外戦でPACが嬉々としてファイトしていたのが印象的だった。髪型やヒゲも含めて、振り幅がハンパない。ただ、同じくベビーからヒールターンしたエル・ファンタズモほどのインパクトはないかな。
確かに世界を体感してスケールはでかくなってはいたんだけど、もう少し佇まいやカンに触る部分でのアピールが不足している感じがした。ただBen-Kをチャレンジャーとして引っ張り上げている技量はさすがのものがあった、と思った。
試合の大半はシュンがつかまる展開になったが、REDにも臆することのない度胸と身体能力はさすが団体が推しているだけのことはある。最後もやられてやられて大逆転し、巨漢の清水を押さえ込んで勝利。
試合後、荒れる清水を尻目に、Ben-KとPACは火花を散らしあっていた。
第五試合:
○YAMATO&KAI&フラミータ vs Eita&×神田裕之&吉田隆司
奥田啓介もそうだが、KAIもそろそろ一つところに落ち着いてもらいたい。だが根っからのインディファンのKAIとしては、一つの団体に所属するより、フリーランスであちこちのリングに上がる方が好きなのだろう。
とはいえ、かつて所属していた武藤全日本で同じ釜の飯を食っていたSANADAやBUSHIらの出世ぶりをみていると、ちょっともったいない気がしてならない。ドラゲーで何をしたいのかも明確にみえていない以上、渡り鳥で終わるには惜しいとしか言いようがないのだけど。
リングに上がるだけで楽しいなら草プロレスラーでもいいんだけど、ギャラが発生するプロレスラーならば、そこは考えていかないといけない部分。確かにKAIは現在、YAMATOと共にツインゲートのチャンピオンにはなっているが、ドラゲーに取り込まれてしまうのでは、フリーランスの強みも失ってしまう。
試合はそんなKAIが大好きな大仁田厚よろしくREDがイスを投げ入れ、何度も場外戦を仕掛けていくのだが、最初の乱闘以外は綺麗に南側だけがターゲットになっており、ほかは置き去り状態。頑なに正面重視というのをドラゲーは貫いているけど、南側以外のお客さんはあまりいい気持ちはしないんだよなあ。このあたりがドラゲーを応援しにくい最大の要因なんだけど。
メインも乱闘混じりのハードコアな戦いになってしまったが、地方とKAIの趣味に寄りすぎな気がしないでもない。わかりやすいのはいいんだけど、ドラゲーとしてのカラーとしてはやや異質。しかも内容が第2試合やセミファイナルと被ってしまった。新日本の地方大会もやたら場外戦が多いけど、ちょっとあまりに工夫がないかな、と私は思う。
試合は標的になったYAMATOが最後は一発逆転の勝利をつかんで、締めをする…かと思いきや、KAIに丸投げしてしまった。
マイクを渡されたKAIは、「1.2.3.ありがとー!」をフラミータに合わせてスペイン語で「ウノ・ドス・トレス・グラシアス!」で締めた。
全体的な印象は「わかりやすい地方大会」という感じ。ただ場外乱闘が多すぎて前哨戦という意味合いがすこしボヤけ気味になっていたのは、課題じゃないかな?
それと何度でもいうけど、正面だけしか向いてないというのは、正面以外のお客さんにとっては、非常に置いてけぼり感を感じるもの。お客さんは基本四方にいるんださら、四方の目をもっと意識してほしい。
後記
このドラゴンゲート小倉大会の観戦途中に残念なお知らせを聞いてしまいました。がむしゃらプロレス後援会もと会長の下渡さんがなくならなれたというニュースでした。下渡会長とは、プロレスだけでなく、町おこしでもご一緒してました。どれも楽しい想い出しかないですね。プロレス観に行く道すがらにした、くだらない話も今となっては懐かしいです。
実は冒頭で書いたチケットを私に託してくださったのが下渡さんでした。「いけなくなったから、いってきて」と言われて、たまたま時間が空いていたのでOKしました。
試合途中に訃報を聞いたもんで、後半の試合は記憶が飛んでいるのですが、下渡さんに託された?という使命感だけで観戦していました。正直こんなに観戦記を書くのがつらいと思ったことはありませんでした。
しかし、誰より私の観戦記を楽しみにして下さっていた下渡さんのために心をこめて書きました。これからも会長がみているという意識のもと、プロレスを見続け、観戦記を書き続けます。
下渡会長のご冥福をお祈りします。