「イベントホールmitteザ・ステージ」㊗️格闘技場新設こけら落としイベント第2日目(10・8 月・祝)"松江だんだんプロレス広島上陸‼️"
イントロダクション
大学卒業以来、約25年ご無沙汰していた広島にまさか年二回来ることになろうとは!私的にはこれは一大事件である。プロレスが絡むと固い岩戸すらあいてしまうものなのだろうか?
考えてみたら、松江という街にも私にはろくな思い出がなく、二度といくもんかと思っていた時期も長かった。そんな母の故郷に、はじめて「行って良かった」という想い出を作ってくれたのも松江だんだんプロレスだった。
理由は違うけど、諸事情あって遠ざかっていた熊本との縁を繋いでくれたのも、プロレスだった。不思議なことにプロレスには、過去の傷を癒してくれる力があるような気がしてならない。
オープニング
さて、広島の会場のこけら落としになぜ松江の団体が出向くのか?色々理由はあると思うが、実は松江市内にいくと意外と広島東洋カープの影響を感じることが多い。同じ隣県といえど、西と東ではカープへの温度差が全く異なる山口県と違い、広島とは密接な行き来があるのが島根県という土地である。
ましてや、地元のダブプロレスとは友好関係にあるし、リングレンタルなどでだんだんがプロ団体の広島大会をサポートすることも少なくない。そうした経緯から繋がった縁の一つかもしれない。
イベントホールmitteは複合商業施設の中の一角に位置していた。だらずプロレスのトラックがみえたので、ほぼ間違いなく到着。プロレスが絡むと最近はほぼ道に迷わないで着ける。
一階フロアのまわりは飲食店だらけ。開場前から長い列ができている。当然だんだんだけでなく、各団体のTシャツを着た観客がいて、非常にバラエティに飛んでいる。中に入るとこじんまりしているが、非常に見やすい。ひな壇席もあり、プロレス会場としてはうってつけ。100から150くらいは入るかな?リングが入るくらいのスペースがあるライブハウスという感じかもしれない。
リングを見るとレイパロマと近野剣心が熱心にスパーリングをしていた。お客さんが入っても選手が練習しているというのは昔の新日本みたいだった。
以前、お邪魔したスサノオカフェは三方からの観戦になったが、mitteは四方に観客席がある。そしてライティングがめちゃめちゃよくて、写真が撮りやすい。正面反対側にはスクリーンもあり、カード紹介がこれでできる。
試合開始前にmitteのオーナーさんが挨拶。mitteを広島格闘技の聖地として、週一ペースでイベントができれば、ということだった。ダブプロレスの新しい常設会場になるかな?これは楽しみ!
ちなみにリングアナはドン・タッカーとスミスのダブル体制。スミスリングアナというのは、私がみた範囲では記憶にないのだが、レアケースには違いない。なかなか堂に入っていたのが、いかにも芸達者なスミスらしいところでもある。
第1試合〜シングルマッチ15分一本勝負〜
(青)×ドラゴンウォリアー(egoistプロレス)VS(赤)〇ミステリコ・ヤマト(松江だんだんプロレス 代表)
多忙を極めて一時期は代表の任から外れていたミステリコ・ヤマトは、がむしゃらプロレス的にはGWAタッグベルトを奪った怨敵でもある。むこう一年ベルトを腰に巻き、敵地に乗り込んだ七海健大&トゥエルノ・ゲレーロを返り討ちにしたその実力はホンモノである。
だからこそ、がむしゃらプロレスだけでなく、他団体からもラブコールが引きも切らさないわけだ。加えて本業が多忙になるとプロレスができなくなるため、対戦希望があっても叶わないケースも多々ある。
そんな中で降ってわいたように、ヤマトとのシングルが組まれたドラゴンにしたら、これは大チャンスである。がむしゃらマットでは、ナスティ・アウトサイダーズの実質的リーダーとしても活躍しているドラゴンは、レスラーとしても伸び盛りの位置にいる。果たしてヤマトとの邂逅がどんな化学反応を起こすだろうか?
序盤はパワーを生かしたドラゴンがナスティ殺法でリードを奪うが、様子見していたヤマトが打撃で反撃。ここぞというタイミングで逆襲に転じるうまさは以前となんら変わらない。
そして一度流れを手繰り寄せると、相手の有利な方向にいかせないヤマトのうまさはますます磨きがかかっていた。ぶっちゃけこれでがむしゃらの選手は何度も煮え湯を飲まされたわけだから、初対決のドラゴンがしてやられても仕方ない。
終盤ドラゴンが雪崩式ブレンバスターなどで畳み掛けていくものの、大技が決定打にならないところが、ヤマトの真骨頂である。
がむしゃらだけでなく、他団体からもラブコールが絶えないのは、やはりこういうところだろう。破れて悔しいだろうけど、ドラゴンにとっては絶対糧になる試合だったと思う。この体験を生かした試合を見せてくれると私は嬉しい。
第2試合〜タッグマッチ20分一本勝負〜
(青)隠岐しゅうぞう(松江だんだんプロレス)&×裸一漢(松江だんだんプロレス)
VS
(赤)ダイナマイト九州(がむしゃらプロレス)&〇レイパロマ
こちらはいわゆるお笑い枠の試合になるが、8月のマットプロレスに続いて、パロマとのタッグを組む九州にしてみたら、これは一大チャンスでもある。がむしゃらプロレスでは、おもにパンチくんと組んでいる九州だが、パロマとのチームにも手応えを感じている様子。
ここに、ある意味自分の世界を崩さない隠岐しゅうぞうと、裸一漢が交わるわけだから、これは只ならぬ予感しかしない。
入場シーンから既に独特な隠岐&裸一漢に負けじと、パロマダンスで入場する九州&パロマ。マットプロレスでよほど手応えを得たのか?九州が超ノリノリ。
先発は裸一漢とパロマ。「こん中で俺が一番まともに見えるぞ!」とパロマが言っていたが、変態度では明らかに裸一漢の方がおかしいし、隠岐しゅうぞうは酔っ払いだし、たしかにその通り(笑)
でこの中で九州が埋もれないようにするには大変だっただろう。実際裸一漢の股間攻撃を一番受けていたのは九州だったし。
しかし、中盤で裸一漢を捉えた九州はパロマのヘルプ付きで「1.3.5.7、九州、九州!」を成功させた。前には九州の尻、後ろにはパロマの尻という、「変態サンドイッチ」で裸一漢が悶絶。
勢いにのる九州&パロマは九州が隠岐を分断。そのままパロマが裸一漢から勝利。パロマはどう思っているかわからないが、九州がこんなにノリノリなら、また再結成してほしいなあ。マットプロレスの時より完成度が上がってらいたし。
第3試合〜6人タッグマッチ30分一本勝負〜
(青)
×HIROYA(がむしゃらプロレス)&土屋クレイジー(egoistプロレス)&マツエデラックス(松江だんだんプロレス)
VS
(赤)
石鎚山太郎(愛媛プロレス)&鉄生(がむしゃらプロレス)&〇岡田剛史(TKエスペランサ)
これもだんだんプロレスでしか見られないであろう組み合わせ。がむしゃらプロレスでは敵対しているHIROYAと土屋クレイジーが組むのも異例なら、バッファロー吉田改め石鎚山太郎に加えて、広島の強豪・岡田とチームを組む鉄生にも注目したい。
特に鉄生とデラックスの真っ向勝負は面白くなること請け合いだし、互いに総合格闘技にベースがある岡田と土屋のテクニック合戦も興味深い。
先発は土屋と岡田。現役の総合格闘家でもある岡田と、総格ベースの土屋の絡みは実に刺激的。変わって身長で上回るHIROYAに口先とインサイドワークで翻弄していく石鎚。やはりこのあたりはバッファロー吉田時代からあまり変わっていない。そしてインサイドワークで勝負すると、キャリアの浅いHIROYAは分が悪い。さらに追い打ちをかけるように岡田の厳しい蹴りがヒットしていく。
残念だったのはデラックスと鉄生の絡みがあまりなかったことだったが、こればかりは仕方ない。かわりに今までそれほど接点のなかった土屋と鉄生がばちばち火花を散らす。
最後はキャリアの浅いHIROYAが捕まってカウント3をきいたが、六者六様に意識むき出しでぶつかり合った面白い試合だった。これが第三試合というのも実に贅沢なことである。HIROYAも最後こそやられたが、長身を生かしたダイナミックな攻撃と、新人離れしたハートで観客をどよめかせていたので、これはこれでいい体験になっただろう。
できることならこのメンバーだけでシングルのトーナメントをみてみたいくらい魅力的な6人だった。
休憩
ここで休憩に入り、だんだんプロレス名誉顧問に就任していた、元・ダブプロレスの魁が挨拶に上がった。イベントホールmitteのこけら落としにだんプロを推していたのは、魁だったのだ!
そして、なんでもセミとメインは魁がマッチメイクしたらしい。これは楽しみだ!
セミファイナル〜シングルマッチ45分一本勝負〜
(青)×ライジングHAYATO(愛媛プロレス)VS(赤)〇近野剣心(ダブプロレス)
今が旬の若手二人がシングルで激突。とは言っても、元ドラゴンゲートにいた近野はプロとしても選手としても大先輩にあたる。ライジングHAYATO も若さだけでは勝ち目がないわけだ。そもそもHAYATOができる技は、近野が得意とするフィールドでもある。
見た目は若武者対決だが、事実上ライジングHAYATO の試練になりうる試合とも言えるだろう。後楽園では後半スタミナ切れをおこしていたHAYATOだが、この試合も5分過ぎには既に呼吸が荒くなっていた。対する剣心は汗ひとつかいていない。ムダにスタミナをロスしない。このあたりがキャリアの差というやつだろう。
気迫と意地だけで試合をしているHAYATOには勝ち目が薄い。実際チョップを打ち返しても膝ついているし、その状態から剣心の鋭いミドルキックを何発も食らっていたし、反撃のニールキックも打点が低すぎた。
だが、終盤近くで空中戦しかけたあたりは若さゆえできたことだろう。スタミナ配分もくそもない。こと切れるまで力を出し尽くそうと遮二無二頑張るHAYATOのファイトスタイルは穴だらけとはいえ、嫌いにはなれない。
最後は文字通り電池切れしたHAYATO。しかし、剣心も若さ全開で全力ファイトを挑んできたHAYATOの健闘をたたえていた。
正直近野剣心の牙城に迫るにはまだまだ死にものぐるいで練習しないといけないだろう。だが、ライジングHAYATO には若さがある。若さはそれだけで可能性になりうる。まだまだ発展途上だけど、手を抜かないHAYATOの試合は、結果云々に関わらず、これからも観ていきたいと思う。
メインイベント〜タッグマッチ60分一本勝負〜
(青)×ALLマイティ井上(松江だんだんプロレス)&ラウザ(鳥取だらずプロレス)
VS
(赤)グリーク(OPG)&〇サウザー(ダブプロレス)
年内引退を表明したサウザーは、ジョロキアが誇る巨漢グリークとの大型タッグ。かたや山陰サイドは、松江だんだんプロレスの牽引者、ALLマイティ井上に加えて、もと山陰統一王者でもあるラウザ。まさに迫力あるぶつかり合いが期待できる黄金カードである。
特に一時期仕事のためプロレス活動を休止していた井上にしてみたら、復帰後最大の試練にして、最高のカードでもある。新しい会場のこけら落としを締めるには、相応しい顔ぶれが揃った!否が応でも期待は高まるばかりだ。
入場時に思ったのだが、サウザーとグリーク、そしてラウザと井上という巨漢同士のチームはその肉体だけで絵になるわけで、これは魁が自信たっぷりにマッチメイクしただけのことはある。どれだけ軽量級のプロレスが流行ろうと、やはりプロレスの中心はヘビー級なんだな、と思わずにはいられない。
果たしてお互いがお互いを意識し合う肉弾戦は決して広くないイベントホールmitteを揺るがす大肉弾戦になった。中でもサウザーと井上がバチバチ意識し合うやり取りは、観ていて手に汗握る攻防に。
ブランクがあるせいか、まだ試合勘が戻っていないのか、試合後半になればなるほど井上が押されていったのが仕方ないといえば仕方ない。逆に引退表明しているサウザーの元気さには改めて舌を巻いた。ぶっちゃけ九州でやっているギミックのないサウザーってこんなに強かったんだな、というのをまざまざと見せつけられた。
普段なら井上の延髄やバックドロップで試合が決まってもおかしくないのに、グリーグもサウザーもおかまいなしに返してくる。連戦最終日?のラウザもフォローするのが精一杯といったありさま。
サウザーもすごかったが、グリークもまた巨漢ながら動けてスピードもある選手。普通なら井上とラウザが組むだけで反則になるのに、この二人が青息吐息になる場面なんて、そうそうはお目にかかれまい。
試合は20分を越す大熱戦の末、サウザーが粘る井上を振り切ったが、正直ALLマイティ井上が完膚なきまでにやられるとは予想外だった。
マイクを握った井上はひとしきり悔しさを露わにしたあと、全選手を呼び込みおきまりの締めで大会を終了させた。
後記
久々にみた松江だんだんプロレスだったけど、相変わらず選手のクオリティも高いし、四方を意識した試合ができる選手も多い。今年はなかなか他団体にはでてこなかったけど、事情が許されるならば、また北九州でもみてみたい。
イベントホールこけら落としにふさわしい素晴らしい試合の連続だったし、プロ団体ではない松江だんだんプロレスが、口火を切ったイベントホールmitteが今後西日本のプロレスの聖地として大きくなっていくことを祈りたい。
気がついたらまた一つ広島でよい思い出ができた。本当にプロレスは素晴らしい!ありがとうございました。