プロレス的音楽徒然草 必殺5黄金の血より〜荒野の果てに(インストゥルメンタル)M-1(イントロ)、出陣 M-10
江戸の旋風対必殺!
今回はプロレスリングノアで永源遙選手が使用していた、映画「必殺5黄金の血」より、荒野の果てに(インストゥルメンタル)M-1(イントロ)、出陣 M-10/をご紹介します。
ちなみに「必殺5」は、 必殺シリーズ30作目の「必殺仕事人、激突」の世界観がベースになっていますが、この30作目からBGMもステレオ録音になったため、この楽曲もステレオになっています。
そもそも全日本プロレス時代、悪役商会として永源選手は、必殺仕事人のテーマを使用していました。対するファミリー軍団は、当然ジャイアント馬場さんの「王者の魂」で入場していました。
時代劇的夢の対決!
しかし、馬場さんが亡くなられて、永源さんとラッシャー木村さんが三沢光晴選手らと共にプロレスリングノアに移籍してから、ちょっとした変化が訪れます。
晩年のラッシャー木村さんの入場テーマ曲は「江戸の旋風(パート2)」でした。しかし、全日本当時はアニキである馬場さんと組んでいたため、木村さんのテーマ曲を聴くことはほとんどなかったのです。
ところが、ノアに移籍して永源さんとタッグで対戦するようになると、木村さんのテーマ曲が会場で聴けるようになりました。要するにノアマットで永源さんと木村さんが闘う時は、テーマ曲上で「必殺!」対「江戸の旋風」という時代劇的には「夢の対戦」が実現していたのです。
非正統派の時代劇
必殺シリーズというのは、元々池波正太郎さんの小説「 仕掛人・藤枝梅安」を下敷きに作られた「必殺仕掛人」を皮切りにした時代劇シリーズですね。
「必殺仕掛人」と「助け人走る!」以外の作品は基本オリジナル作品となります。同じテレビ朝日系列の「スーパー戦隊シリーズ」(ゴレンジャーとジャッカー電撃隊のみ、石ノ森章太郎さんの原作で、他はオリジナル)と似た形のシリーズとも言えます。
ですので、必殺シリーズで最も有名であると思われる中村主水はオリジナルキャラクターなんですね。その中村主水を長年にわたり演じ続けられた藤田まことさんが、シリーズ中で唯一主題歌(月が笑ってらあ)を歌われたのが、劇場版「必殺5」と、その元ネタである「必殺仕事人、激突」なのです。
広い意味でのヒーロー
かたや江戸の旋風は、ウィキペディアによると、
単独の同心や岡っ引を主人公に据えた作品が定番であるが、本作は町奉行所直属の定町廻り同心たちが集団で様々な事件を解決して行く姿を描いた時代劇。主演にテレビ時代劇初出演の加山雄三を筆頭に、東宝『若大将シリーズ』の「青大将」で加山とのコンビも人気だった田中邦衛、同じ東宝のスター女優・浜美枝らを迎え、『太陽にほえろ!』を始めとする当時大人気だった刑事ドラマのテイストを取り入れて作られた。
とあります。
必殺シリーズとの決定的な違いは、江戸の旋風が「正統派ヒーローによる捕物劇」であるのに対して、必殺は「晴らせぬ恨み」を「お金をとって」暗殺を執行する「非正統派の時代劇」であるという点ですね。ちなみに、初期必殺シリーズを除くと、江戸の旋風とは「チーム」という点と、広い意味での「ヒーロー」という点で共通項があります。
チーム時代劇つながり
ちなみに、時代劇というのは、主に集団ヒーローものと、単身で活躍するヒーローとに分かれていきます。必殺シリーズは、元々単身ヒーローの寄せ集めという感じでしたが、江戸の旋風や大江戸捜査網などの成功により、次第にチームヒーローにシフトした例と言えるでしょう。
また音楽の面でも江戸の旋風パート2より音楽を担当された服部克久さんが、刑事ドラマを意識したサウンドであったのに対し、必殺シリーズの平尾昌晃さんは、全体的に、作品の雰囲気との関連から悲哀・孤独・旅・望郷・風・過去との決別などを歌った曲をたくさん作られていたように思います。
ですが、後期の必殺シリーズは、中村主水家のやりとりをはじめ、初期のダークサイドなイメージから、明るい時代劇へと作品カラーもシフトしていきました。永源さんが必殺のテーマを使い出した頃は、「必殺=ダークサイド」のイメージも薄らいでいましたから、まさにイメージ通りだったというわけです。
偶然かもしれないけど
全日本プロレスの悪役商会対ファミリー軍団の流れは、ノアでもしばらく続いていきましたが、この当時のラッシャー木村さんにしても、永源さんにしても、シングルプレイヤーというイメージよりは、タッグチームプレイヤーというイメージの方が強かったように思います。
そう考えると、選曲は単なる偶然だったのかもしれませんが、共にチーム制の時代劇つながりで、カラーの違うヒーローが活躍するドラマのBGMを入場テーマにしていたというのは、大変興味深いといえますね。