[プロレス用語辞典] (ナ行) ネイチ(Nature Boy)
愛称の愛称
今回のプロレス用語辞典は、「ネイチ」です。
ネイチはいわば「愛称の愛称」みたいなもので、略さずに言うと「ネイチャーボーイ(Nature Boy)」になります。
二代目ネイチャーボーイ
ネイチャーボーイといえば、真っ先にでてくるのが狂乱の貴公子・リック・フレアー選手ですね。
しかし、フレアー選手の「ネイチャーボーイ(Nature Boy)」という称号は「二代目」という扱いになります。
ダーティチャンプの元祖
「元祖」は、「ダーティー・チャンプ」の元祖となったヒール選手バディ・ロジャース選手で、フレアー選手のモデルともいうべきレスラーです。
ロジャース選手の決め技は足4の字固めですが、 ロジャース・ストラートと呼ばれる気取った歩き方や、レフェリーの陰で反則を繰り返す小ずるい動き。
なぜNature Boy?
またピンチに陥ると「オー・ノー」と許しを乞うたり、わざと反則負けを食らって王座を防衛したりなど、ダーティー・チャンプとしての所作を、フレアー選手はきっちり受け継いでいます。
さて、そんなバディ・ロジャース選手がなぜ「ネイチャーボーイ(Nature Boy)」と呼ばれたのか?私も長年疑問に思っていました。
生涯未来日
そもそもロジャース選手は引退後も来日することが無く、生涯未来日のまま亡くなっています。
これでは馴染みがなくて当たり前ですね。
野生児ではない
ロジャース選手のニックネーム「ネイチャー・ボーイ」は、日本では「野生児」と誤訳されていることが多いようです。
もともとこのニックネームはナット・キング・コールさんのヒット曲「Nature Boy」から取られたものであり、あえて言えばいわゆる「自然児」となるようです。
トリオバンドの火付け役
ナット・キング・コールさんは、トリオバンド流行の火付け役となったジャズ・ピアニストで、歌手としても様々なヒット曲を生んでいます。
「Nature Boy」はその中の一曲で、エデン・アーベズという作曲家によって作られています。
変わった経歴
アーベスさんはもともとヒッピーだったようで、徒歩で8回アメリカ大陸を横断するなど、ちょっと変わった経歴がある音楽家でした。
アーベズさんは ナット・キング・コールさんのマネージャーに「ネイチャー・ボーイ」の譜面を見るように頼み込み、コールさんがメロディーと歌詞を気に入り、演目に加えました。
公表につきレコード化
こうしてコールさんが歌う「Nature Boy」は好評を得たので、レコード化されることになったのです。
そして「Nature Boy」はナット・キング・コールさんが ソロ・アーティストとして認められた初の曲となったのでした。
どうシンクロするのか
この曲のイメージとロジャース選手の試合が、どうシンクロするのか?
そこでYouTubeに残っているロジャース選手の試合をいくつか見てみました。
自然児らしさ
なるほど、1940年代としては珍しく縦横無尽なロープワーク、コーナー最上段からの二―ドロップ、カール・ゴッチさんの形に近いパイルドライバーなど、ダーティーチャンプである以前に、「自然児」らしいファイトスタイルが印象に残りました。
フレアー選手は自身が負ったセスナ機墜落事故の恐怖により、背中から受身を取ることができなくなった事は有名です。
受け継いだのは
近年でもデッドリー・ドライブやショルダースルーなど落下系の技を受ける際は肩を下にして斜めに受身を取っていました。
ですから、オリジナル「自然児」であるロジャース選手の「ダーティチャンプ」の部分と、「ネイチャーボーイの称号」を、フレアー選手が引き継いだ、と考えるのが妥当なようです。
元祖「ネイチ」は
なお、表題の「ネイチ」という略称はフレアー選手が最初に呼ばれるようになり、後から「元祖」ロジャース選手も「元祖ネイチ」と呼ばれるようになったと記憶しています。
この点ではフレアー選手が「初代」だったといえるかもしれないですね。