[映画鑑賞記] planetarian 〜星の人〜
2018/02/26
人間の愚かな戦争は、世界を雪で覆い、確実に滅びへと向かわせていた。星すら見えないこの世界では、人々は地上で暮らすことも難しく、地下の集落に身を寄せ合って暮らしていた。かつて「屑屋」と名乗っていた男は、過去のある出来事がきっかけで「星屋」と名乗るようになり、“星の美しさ”を彼が訪れる集落の人々に伝えていた。その知識の深さとたたずまいから、いつしか、人は彼のことを“星の人”と呼び、敬うようになった。そして、世界を旅しながら、老いていく星の人には、ただ一つの心残りがあった……。
星の人は、旅の途中行き倒れた集落で、レビ、ヨブ、ルツの三人の少年少女と出会う。星に興味を持つ彼らの姿を見ていると、かつて自身が若かりし頃に出会ったロボットの少女の面影が思い出されていく。彼女と出会った場所、そこは封印都市と呼ばれるところだった(あらすじはAmazon プライムより)
12年越しのアニメ化
もともと本作は2004年にダウンロードが開始された「planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜」を原作としている。製作はビジュアルアーツのゲームブランド・Key。ゲームの発売開始から12年後の2016年7月にWEB配信アニメとして『planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜』全5話が配信。同年9月に劇場版アニメ『planetarian 〜星の人〜』が公開された。
2016年に配信版をみていて映画館で鑑賞したいと思っていた作品だったが、近隣の劇場で公開されなかったため、見られずにいた。しかし偶然Amazonプライムに「ちいさなほしのゆめ」と「星の人」が追加されていたのを知ってさっそくみてみた。
基本「星の人」は「ちいさなほしのゆめ」をすべて含んでいる内容になっているので、映画だけ見た人は、更に全5話を視聴する意味はないかもしれない。でも、ロボットの少女・ほしのゆめみと、のちに「星の人」となる屑屋の青年とが織りなすドラマは必見の価値があると断言したい。
というか「星の人」は屑屋が「星の人」になってからの目線、つまりほしのゆめみとの事は「過去」の出来事としてドラマが再構築されている。対して配信版では「星の人」という設定自体が登場しない。その分、屑屋とゆめみの現在進行形のドラマとしてみることができる。だから映画を見た後に配信版を見ても全然問題ないし、その逆でもまたしかりというわけだ。
原作リスペクトに溢れた作品
私はKeyブランドに関してはそれほど知識があるわけでもなく、ゲームも未体験だったので、原作に関しては門外漢である。が、アニメに関していうと「とてもよくできている」ということは声を大にして言いたいと思う。
アニメを製作したdavid productionは、「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズをアニメ化したスタジオであり、星の人の監督でもある津田監督はジョジョのシリーズディレクターでもある。当初スケジュール的に参加が困難と思われていたが、監督自らが手を挙げて、アニメ版「planetarian」シリーズに関わることになったという。
原作リスペクトにあふれる本作は、ゆめみと星の人の「別れ」と「再会」がベースになっており、正直配信版をみていた私も「こうきたか!」という驚きと、「よくぞやってくれた」という感動で一杯になった。この薄汚れた初老のオタクに純粋な涙を流させたという意味では、「罪な作品」でもある。でも泣かせにくる作品が好きな人には堪えられないと思う。絶望感と終末観しかない世界で、それでも希望がもてる内容になっているのは、素晴らしいと思う。だから、泣けるといっても「悲しい」涙にはならないのではないかと私は思っている。
天国を2つに分けないで
原作から12年を経てほしのゆめみと屑屋の声優には原作同様すずきけいこさんと小野大輔さんが引き続き登板しているが、初期原作をプレイした人は、12年の歳月を経て成長した声優さんの演技も楽しめるつくりになっている。この辺の細かい配慮も見逃せない。
ゆめみは基本ロボットではあるのだが、ロボットであるがゆえに、人間では出せない機微があって、そこをアニメではうまく表現している。特にゆめみの「天国を2つに分けないでください」というセリフにはぐっとくるものがある。どういう意味かはネタバレになるので、ここでは触れないが、本編でこのセリフの重さを味わっていただきたい。
とにかくプライム会員であれば視聴可能であるので、機会があったら配信版ともどもみてほしい。余談だが、私はプラネタリウムの雰囲気を味わいたいがために、目には悪いことを承知で部屋の電気を消して鑑賞した。できたら邪魔の入らない映画館で観たかったけれど、これでも雰囲気だけは味わえると思っている。