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[映画鑑賞記] キングコング:髑髏島の巨神

17年4月1日鑑賞。

1944年、太平洋戦争中の南太平洋戦域での空戦中、とある島に墜落したアメリカ兵マーロウは、同じく墜落した日本兵イカリから逃れるため島の奥地に入り込み、追って来たイカリと戦う。止めを刺されそうになったマーロウだったが、そこに巨大な生物が姿を現す。

1973年、アメリカがベトナム戦争からの撤退を宣言した日、特務研究機関モナークの一員であるランダは、ランドサットが発見した未知の島・髑髏島への地質調査をウィリス上院議員に認めさせる。ランダは護衛の部隊を派遣するように要請し、ベトナムから帰還予定だったパッカード大佐の部隊が同行することになる。また、元特殊空挺部隊隊員のコンラッドを島の案内役として雇い入れる。ランダたちの行動を知った戦場カメラマンのウィーバーも調査隊に加わり、一行は髑髏島に向けて出発する。

髑髏島の周囲は暴風雨に覆われて船での接近は不可能な状態だったが、ランダたちはパッカードのヘリコプター部隊で島に乗り込む。暴風雨を抜けて島に乗り込んだ調査隊は、地質調査の名目で地上にサイズミック爆弾を投下するが、その爆音を聞き付けて現れたコングにより部隊は全滅し、調査隊は散り散りとなる。コンラッドやウィーバーたちは島を脱出するため、船との合流地点である島北部に向かい、パッカードはコングを仕留める武器を手に入れるため、部下のチャップマンがいる島西部に向かう。(あらすじはwikipediaより)

ひとことで言うと、正統派の中の正統派怪獣映画。しかも単なるバトルではなく、ちゃんと反戦メッセージや人間の狂気にふれているあたりに本物のリスペクトを感じる怪獣映画。

で、基本レビューではネタバレしないように書いているつもりだが、この映画に関してはどうしてもエンドロールのあとをふれないわけにはいかない。

ただ、今そこに触れると本当に書いてしまいそうなので、ちょっとクールダウンさせる意味で、歴代のキングコング映画と今回の「髑髏島の巨神」を比較してみたい。キングコング映画を踏襲しているのは、美女とコングの関係性でこれは変わっていない。違うのは今まで人間世界に連れてこられたコングが町を破壊するシーンがなく、むしろコングの根城である髑髏島を侵食するのが人間であるということ。したがって人間が自然の破壊者である点が実に象徴的に描かれている。

最初のコングとの戦闘シーンで、ブラック・サバスの名曲「パラノイア」が流れるのだが、これにはぞくっとした。サミュエル・J・ジャクソン演じるハッカードがコングに対して敵意むき出しで攻撃をしかけるシーンがあるのだが、まさにその表情こそ「偏執症=パラノイア」そのもので、これはうまい選曲だなあと感心した。ここで「ワルキューレの騎行」なんか流れたらもうげんなりだっただろう。ちなみにプロレスファン的に言うと、「パラノイア」はホーク&パワーのヘルレイザースの初代入場テーマ曲でもあったりする。

プロレスということで言うと、和製キングコング・真壁刀義が日本語版で登場しているのだが、今回私が見たのは字幕版だったので、彼がどういう演技しているのかは定かではない。ただ、終盤のバトルでコングがチェーンをもって振り回して闘うシーンがあって、これは真壁には悪いけど、やはり「超獣」キングコング・ブルーザー・ブロディの顔が瞬時に浮かんだ。そのくらい迫力のある暴れっぷりなんで、ぜひともプロレスファン、怪獣プロレスが好きな特撮ファンは大スクリーンで見てほしい。

怪獣プロレスリスペクトでいうと、ゴジラシリーズを数多く手がけた本多猪四郎監督は日本でいうと「黒澤組の番頭」とか「黒澤映画の助監督」みたいな扱いで紹介されていることがあるけど、海外では怪獣映画の巨匠・イシロー・ホンダの名は、黒澤明にだってひけをとらないのだ。「自分のDNAをげろを吐くほどぶち込んだ」という監督のヴォート・ロバーツがイシロー・ホンダの名を知らないわけがない。

ただクリーチャーのデザインは東宝怪獣ではなく、宮崎駿系のデザインになっている。もののけ姫からインスパイアされたデザインだということだが、髑髏島の自然や、クリーチャーを見ていると、ナウシカの腐海を彷彿とさせる。お約束のように巨大たこや巨大グモが出てくるあたりは「ドクターモローの島」を連想させるし、この監督は洋の東西を問わず、クリーチャー愛にあふれた人なんだろう。クリーチャーだけではない。70年代にはまことしやかに流布していた「地球空洞説」を今の世にここまでロマンたっぷりに語られたら、そりゃみてしまうだろう!という話。

そのヴォート・ロバーツが最後に仕掛けたオチがエンドロールのあとにあるわけで、これをみたら怪獣映画ファンなら絶対「ずるい!」と思うに違いない。

だって、あからさまに「どうだ?こういう映像見たいだろ?」といわんばかりのオチになっているし・・・あれは見たいぞ!今の技術であのバトルを見られるなら、アメリカ産でも一向にかまわない!シン・ゴジラだけが怪獣映画じゃないんだし。

しかし一個だけ「地球産」でないのが一体混じっていたけど、「あれ」はどういう扱いにするつもりなんだろう?個人的にはキングコング映画史上初の宇宙を舞台にした怪獣バトルもみてみたいのだが・・・・なんかロバーツ監督は本当にやりかねないから怖いなあ。でもこれ実現したらえらいことになるなあ。個人的には体調の問題もあるけど、その映画に高島忠夫さんが再登場されたらもう胸熱すぎて泣けてしまうに違いない。





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