[万国びっくり映画鑑賞記] ビーチ・シャーク
16年12月25日鑑賞。
2011年製。
とあるさびれかけた島で、かつての反映をもう一度とばかりに、町長のドラ息子ジミーがフェスティバルをするぜ的な企画を立ち上げる。しかし、ビーチシャークによる殺人が発生してからは、やれ砂を泳ぐサメはいるだのいないだのといった押し問答が延々と続き、登場人物らがその存在を認めるまでに実に40分以上かかるありさま。そりゃ違約金とか払うのは嫌だろうし、言いだした手前ジミーも後には引けないだろが、この間一向に話が進まないので見どころと言えるような点はほぼないに等しい。とにかくこの前半部に出てくるキャラクターは、全員無能とクズの寄せ集めなんで話がどう転んでも盛り上がるはずもなく・・・・。
邦題はビーチシャークなんだけど、原題はサンドシャーク。つまりそのまま砂の中に生息する古代ザメ。まずこの映画の序盤、サメ自体は割と早く出てくる。ゾンビシャークもそうだけど、どうせ出るなら早めに登場してもらっても全然問題ない。ところが、襲われる側の人間のお話が一向に前へ進まないときたもんだ。この展開の遅速さは、正直この映画を見ている中で一番つらい部分。
その人間の無能さをカバーするようにサメはちょこちょこを人を襲いに現れるけど、それでも砂の中に生息するサメの存在を認めない登場人物たちは意固地になって、どうしてもフェスティバルをやろうとしだすので、もう埒があかない。その登場人物の人間関係だが、正直 女保安官が町長のバカ息子の元カノだったり、女学者と男保安官がいい雰囲気になったりするがそんなことは本当どうでもいい。確かにモブで水着の女の子はたくさんでてくるし、学者のお姉さんも全編水着で頑張ってはいる。近年の「そこまで予算をけちってる感」はあまりないのだけど、襲われる側がいちいち無能で「さあ、食べてください」といわんばかりの立ち位置にばかりいるから、サスペンス性も皆無。
何より一番の見せ場であるはずのサメが人間を襲うシーンに全くと言っていいほど面白みがないのは致命的。サメも「突然砂から出てきて人間パックンチョ!」するばっかりで、芸がなさすぎるので、基本無能なモンスターが無能な人間食らっているだけの映画になっている。よってカタルシスのかけらもない。
ところでこの映画は珍しく「このモンスターの正体なんなの?」の部分をしっかりと専門家のキャラクターが説明してくれている。水着の学者さん曰く「ごく最近進化した種」らしいです」・・・古代の生物がごく最近どう進化したらああなるんだ?という説明はやっぱなかった・・・・とはいえ雑な説明でもあるだけマシ。問題は無能推理を繰り返す無能なキャラクターたちと、ご都合主義極まりない展開。こればかりは救いようがない。
「どうも、このサメは自然進化したらしい」ということが分かった後、何故か主人公たちは「新種のサメは今暴れてるのとその母親の二匹だけ」という謎の理論を展開し始める。自然進化したのなら、もっと大量にいそうだと分かりそうなもの…と思っていたら、案の定、山ほどビーチ・シャークが現れる展開が待っていた。見てても「ほれみたことか」以外の感想がでてこない(笑)
「昔からこのサメを追っている」というハンターのおっさんが登場するけれど、この人の登場も序盤と最後だけ。昔からいたのならば、なぜ今になってこのサメがビーチで大暴れしだしたのかの理由も説明してくれてないし、そもそもおっさんもなんであんだけ犠牲者がでたあとになってのこのこ現れるのか?意味が分からない。これだけ積極的に人を襲うサメならば、過去の目撃情報くらいあってよさそうなものだし、なんでこの島だけにそんな特異進化した生物がいたのか?そっちの方が気になる。しかも昔からサメをおっている割にはこのおっさん無策だし、意外と頼れる助っ人感がないのも致命的。せっかく専門家がいるんだったら彼を中心にプロジェクトチームとか作ったほうがよかったんでは?・・・まあ、そんなことを考え出す能力があるとは思えないけど。
なによりこのイベントを強行しようとした町長のバカ息子ジミーの性格はいちいちゴミすぎてイラつくことこの上ない。当然人間関係には何の説明もないので、女保安官も何でこいつに惚れていたのか謎のまま、彼女はサメの餌食に。その死に方も下半身だけを食われてしまい、内臓どばーなんだが、不思議とグロさが足りない。R12になっているのは多分このシーンのせいだと思うけど、出来がいいのはここだけだし、ねーちゃんの首が転がっているシーンはどう見てもマネキン・・・・でも、余計なことにジミーがなぜかここで謎の改心をしてしまうのである。
どうせコイツは最後に食われるんだろうな、と思いながら見ていて、まあ結局ジミーは女保安官の後を追うように死んでいくのだけど、その格好の付け方が微妙にいらっとくる。カッコつけ特攻で、自分だけ犠牲になって、「頼んだぜ」といって死んでいくのは、悪役がやっちゃだめなんだって。おとなしく食われてりゃすっきりしたものを、ジミーが最後だけいい人になろうとしたせいで台無し。
生き残った保安官は「ビーチ・シャークはミンチ・シャークになったのだ!」って壮絶に寒いギャグで締めてたけど、なんかサメ映画ってダジャレで締めるお約束でもあるのかと思ってしまった。ただ、この映画などでB級映画監督たちが味を占めて、丘にサメをあがらせた慣れの果てがゾンビシャークだったり、ロボシャークだったり、陸ザメだったりするのかと思うと、今後、サメ映画がどう進化していくのか?もはや異次元にサメが出てもおかしくないレベルにまで来てるような気もしないでもないが・・・