[万国びっくり映画鑑賞記] ロボシャークvs.ネイビーシールズ
16年12月19日鑑賞。
UFOから投下された奇怪なメカをのみ込んだサメが、ロボシャークへと変身した! 最強の特殊部隊ネイビーシールズとロボシャークの死闘を描く異色のシャークムービー。
地球近くに飛来したUFOが謎のマシンを投下、海洋に着水したその機械をのみ込んだ大型のサメが、全身メカの“ロボシャーク”に変身してしまう。一方アメリカ・シアトル。冴えないお天気リポーターのトリッシュは、なぜか街なかで海軍が厳戒態勢を敷いていることに気付く。ニュースキャスターを目指す彼女は、水道局に勤める夫とSNS依存の娘の協力を得て街の異変をいち早く察知、特ダネをものにしようとするのだが……。(あらすじはWOWOWより)
WOWOWが年の瀬も押し迫った中、「真冬のサメパニック特集」などという気の狂った特集をはじめた。もう私のような人間にターゲットを絞っているとしか思えないキチ○イ企画。しかも「サメ映画」なのに、ジョーズとかメジャーどころは一切入ってない。こういうのがちょいちょいあるからWOWOWはやめられない。
お話自体は「シェフ・三ツ星レストランはじめました」+「E・T」。組み合わせ方に関しては、私は悪くないと思っている。お話自体も「それだけなら」奇をてらっていないからだ。SNSを通じて交流し、絆を深めていくというストーリー自体は真正面から取り組んだら佳作くらいにはなったと思う。でも、そこになぜか「サメ要素」までぶち込んでいるので、全てがおかしな方に流れていっているのがこの映画。なんせSNSで交流してる相手は人食いザメだし(笑)
物語冒頭で宇宙からエイリアンが放ったと思われる謎の球体が海に落下してきて、一匹のサメがそれを飲み込むと、なぜか生身のサメがロボ化!どうして球体を飲み込んだだけでサメがロボになるのか一切説明がない。そして物語開始からいきなり5分もたたずにロボシャークは米軍原潜を奇襲。この奇襲の理由も一切説明がない。これだけをたった5分で流してしまう。しかも結構スペクタクルな場面なはずなのに、お約束のようにロボシャークのCG(まあ生身のサメの時からチープだったけど)がしょぼいので、ギャグにしかなっていない。だけどロボシャークはチープなくせにやたら強い。だから違う意味で怖い。
ついにはあわれ最新鋭の米軍原潜が一匹のサメに轟沈させられる始末。まるで無理矢理ネイビーとの因縁を作るためにわざわざ沈めたかのような展開には開いた口がふさがらない。こうして原子力のごみがまた海底に増えるという地球にやさしくないイントロダクションで、もうこの映画は方向性を完全におかしな方に切ってしまっている。
このあと、なぜか海中から飛んでる飛行機を一発で沈めるシーンを動画で撮影されてしまうロボシャーク。それがSNSで話題になっているのだが、水道管にもぐりこんだロボシャークはその話題になっている地上(シアトル)に進出。最初はおとなしく?水道管の中をうろついて、たまに施設や人を襲うだけだったのに、いつの間にか地中に直接潜って、そのまま地上に飛び出しては人を襲うというとんでもない無敵ぶりを発揮しだす。水道管に潜った時点でもはや海水でも何でもないのだが、私の考えが甘かった。あまりの無双ぶりにロボとかそういうの関係なくねえか?と思わざるを得ないロボシャーク。
この映画がただのB級で終わっていないのは、SNSを駆使してネイビーやマスコミより一市民の方が無双になっている点で、ここは本当に「シェフ」も真っ青なくらいよくできている。意外とここは大事なところ。もっとも原潜沈められた復讐のためにだけ人海作戦にでてる脳筋バカのネイビーの司令官は「シアトルが気に入らない」という理由だけで、核を落とそうとしだすし、トリッシュの同僚レポーターは特ダネのことしか頭にないバカとして描かれていたり、途中参戦してくる金持ち(どう見ても○ル・ゲ○ツ。登場時に「はーい!ビルだよ」といってでてくる。ちなみにメガネ以外はどこも似てない・・・)が、金の力にものいわせ・・・たつもりがあっという間にロボシャークに返り討ちにあったりと、とB級の要素も徹底的にブチこんでいる。
中盤以降では、ロボシャークの動画を娘が投稿したことで、マスコミより先に情報が拡散していくのだけど、投稿に対してのコメントが秀逸。
「これ本物?」「合成だろ」「CGだ」
などなど。
2015年製とはとても思えない低クオリティCGのロボシャークのどこをどうみたら本物にみえるのか、逆に尋ねたいくらいだが、もしかしたらロボシャークもこのコメントも、見ている側にわざとツッコミ入れさせようとしていないか?日本なら「勇者ヨシヒコ」シリーズ、海外なら「ゾンビーバー」のようにわざとチープなテイストで作られた作品も少なくないからだ。この作品もその可能性がないとは言い切れない・・・・「ロボシャークvs.ネイビーシールズ」の場合、ボケが「狙い」なのか、「天然」なのかを判別するのは非常に困難極まりない。だが、限りなく「狙いに近い天然」ボケだとしたら、これはかなりレベルが高いと言わざるをえまい。
さて、中盤では、なんとロボシャークとツイッターで交信できることが判明するのだが、ここでネット中毒になっているトリッシュの娘がネイビーを上回る活躍をしだす!驚くべきことにロボシャークと交信を続けようとする娘は、ロボシャークからツイッターでフォローされてしまうのだ!てか、ロボシャーク、いつの間にどうやってツイッターのアカウント取得したんだ?
そんなSNSを駆使するロボシャークを破壊しようとする海軍はアナログな戦いに終始。しまいには、脳筋司令官自らロボシャークによって半分に折れた、シアトルの高層タワー・スペースニードルごとサメに特攻をかけるも、あわれ死んだのは司令官だけでロボシャークはかすり傷ひとつ負っていない始末。一方でロボシャークにフォローされた娘はなんとロボシャークと友情を結ぼうとする。このあたりがなんとなくE・Tっぽいのだが、そもそもE.Tは人殺してねえし、サメ映画の定石として人食いサメと人間が仲良くなるのってアリなのか?と思うのだけど、娘の願いもむなしく脳筋ネイビーはロボシャークに襲い掛かり・・・・・
まあ、好意的に考えると、戦闘面での見所を削った分、SNSや位置情報を駆使した追跡シーンの出来はかなりのものだし、SNSを利用するストーリーと予想外に魅力的なキャラクター、そしてチープながらどこか愛嬌がある(でも大量殺人してるんだよなあ)ロボシャークが上手く噛み合っているため、存外バカにできなかったというのが見終わった感想。普段はB級映画を人に勧めることはまずしないように心がけているけど、この「ロボシャークvs.ネイビーシールズ」は例外といっていいかもしれない。