[心理×映画] 映画鑑賞記・・椿三十郎(黒澤明版オリジナル)
10年6月29日鑑賞。
真夜中の森の中。古びた社殿の格子窓の中明かりが灯り、中では一団の若侍たちが人目を避けて密談をしている。リーダー格の若者が「次席家老の汚職を城代家老の睦田に告げたが、意見書を破られ、相手にされなかった」と報告し、失望の色を浮かべる仲間たち。
だが「大目付の菊井様に話してみると、『共に立とう』と答えてくれた」と続けると、一転して場は喜びに沸く。この脳天気に気勢を上げる若者たちの前に、奥の部屋からアクビをしながら流れ者の浪人(三船敏郎)が現れる。謀議を聞かれたと緊張する一同に、この男は「岡目八目、菊井の方こそ危ない」と言い放つ。彼の判断通り、実は悪家老の仲間だった菊井の手勢が社殿が取り囲むが、この浪人の機転で、若者たちは虎口を脱する。
自分たちの甘さを後悔する一同だが、あくまで信念を曲げず、命がけで巨悪にたち向かおうとする。(あらすじはwikipediaより)
まあ、「隠し砦の三悪人」の真壁六郎太ほど豪放磊落ではないにしろ、策士がヒーローになっているという点では興味深い作品である。今そう言うタイプのヒーローっていないモノなあ。
それが似合うのはやはり三船敏郎さんをおいてほかにはいまい。
そして原作が山本周五郎であろうが、芥川龍之介であろうが、黒澤明監督が撮ると「黒澤映画」になってしまうという現実。
これはもどうしようもない。実はリメイクを見る前にオリジナルを見ておきたかったので
たまたま録っていたものを鑑賞したのだけど、正直誰がとってもこれには勝てないわ。
多少時間の関係か、とばしまくっている所もあるんだけど、あまり問題ではない。力業で押し切って見せているのも当時絶頂期だった黒澤監督のマジックなんだと思う。
この映画の見所は剛で押す三船さんに対して、睦田夫人を演じられた入江たか子さんの柔の演技が対照的で、結局アウトローでしかない三十郎が彼女の前ではぐうの根も出ずにいるのがおかしい。
それが結局「本当にりっばな刀は鞘の中に入っているモノですよ。あなたはむき出しの刀のようです」というギラギラしている三十郎の本性をズバリ当たられてしまうシーンに集約されている。
そしてまた敵方にも鞘に入りきれない刀、半兵衛を配する事で、鞘に収まりきれないアウトローヒーローとしての三十郎を確立している。
結局どんな策士であろうと、家臣としてつかえる身であろうと、アウトローはアウトロー。
結局斬り合う事でしか解決の道がない。それ故に士官の道がありながら、三十郎自らが去らざるを得なくなってしまうラストがすばらしい。
余談ながら、東宝の看板俳優でもある平田明彦さんや、加山雄三さん、田中邦衛さんらが「若侍」というのは何となく笑ってしまった。あんな大御所達の上に立っても三船さんのオーラは彼らをも上回っている。それがいかに若大将達が若い頃であったとしても。
やっぱ世界の三船だわ...結論はそれしかない。