万国びっくり映画鑑賞記・メトロポリス2035
2016/10/18
16年1月20日鑑賞。
国民全員にIDチップが埋め込まれ国家警察が管理している近未来。心拍数の増減などで犯罪を予知し、犯罪が起こる前に捕らえる事も可能。国家警察警備主任のバレンタインが独裁状態を保っている。 そんな国家に反対する反政府組織のレジスタンスのリーダーであるカレラは警官を取り込んで政府に対しての反撃の狼煙を上げようと画策していて、その警官として選ばれるのが、国家警察の下級巡査であるマクダウェル。彼を選んだ理由は、「忠誠心に長けているのに昇進しない」から。つまり、昇進が目的なだけで忠誠心がある訳ではないので、真実を知れば反旗を翻す事もあると踏んでいる。
実はバレンタインは国民にそのIDチップによる幻覚で、裕福な生活をしていると「思い込ませて」、実は税金を着服し私物化している。本来の街の姿は、近未来とは程遠く全く改修も改築などもされていないビル群ばかりで、言わばゴーストタウン。最初は半ば信じられないマクダウェル自身も有り得ない幻覚を見た事でレジスタンスに協力するようになる。
しかしマクダウェルの相棒がレジスタンスの隠れ蓑を襲撃し、カレラだけ生き残るが、ここからマクダウェルとカレラの僅か2人のレジスタンスの反撃が始まる・・・。
前半は、意外にCGが綺麗。ところどころしょぼいけど、もとがゴーストタウンでしかないし、まあいっかっていう程度。メカニックも格好良く、特に空中浮遊するドローンが近未来的。レジスタンスの女リーダー・カレラ役の女優も結構キュートで好印象。連邦警察官マクダウェル役の人はブルース・ウィリスをやや劣化させたおっさんが演じていて、この 2人の組み合わせでいい感じの映画になりそうっぽい雰囲気はある(もっともジャケットには金髪のブロンドガールとそれを支える4人の戦士が銃を構えているけど、全員本編にはでてきてない)。
だが、舞台となる都市国家の国民にIDチップを植え付け、それに幻影を送り込み国民を支配する悪徳権力者を倒そうというありきたりな計画は正直どうなんだ?これって感じ。
その手間かけてわざわざIDチップを植え付ける訳は、都市改修の為の予算をお偉いさんたちが着服して私腹を肥やしていることを国民にバレないようにする為というもの。そんな手間と金があるんならほかの方法で自由を奪っている国なんかいくらでもあるのに。そもそもゴーストタウンを、超近未来都市に見せかける程高性能のIDチップを全国民分作る予算はどこから出てきたんだ?そんなに横領してたら、どのみちばれるんじゃ・・・・とかいろいろ考えても仕方ない。この映画の一番の難点は、本来CGの不出来をカバーするはずのアクションが致命的にダメな点。演者のスキルというより「見せ方」がだめ。だからやたら銃撃戦に頼るけど、この銃声が全然迫力不足で殺傷能力があるのか、麻酔銃なのか見ただけではわからない。
そのうえ、国家転覆級の犯罪の割には、最後ラスボス・バレンタインとブルース似のマクダウェルが殴り合って終わるというちょっとだけ「ダイ・ハード」チックなシーンもあるけど、アクションがしょぼいせいで全然盛り上がらない。最後なぜか自由を手にした人民が「自由!自由!」とさもレジスタンスに加担したかのように、喜んでいたのも違和感。だって、あんたらが住んでいた町は本当はゴーストタウンなんだし、自由を手に入れてもまわりみたら喜んでる場合いじゃないだろ?なに能天気に革命成功しました=ハッピーエンドにしてるんだ?
こういうのの定石はやっぱこれからが大変なんだけど、それでも「我々には未来がある」みたいな締め方の方がまだSFチックでいいんだけど、どうしてもダイ・ハード要素を入れたかったのか?あの陳腐な殴り合いですべてを台無しにしている感は否めない。やり方によってはいい作品になったかもしれないのに。
意外性という点ではアルバトロスなのにCGの出来が良かったという裏切られ方で、これは一本とられたなと。しかし定番通りひどいストーリーとしょぼいアクションで「やっぱりアルバトロスだった」というオチになっていて、見終わって見たらちょっと上級者向けのB級映画だったかな、という感じだった。