*

万国びっくり映画鑑賞記・ベストガイ

2016/10/18

09年1月16日鑑賞。

航空自衛隊千歳基地の第2航空団に属する第201飛行隊では、特別強化訓練を通じて3年前の選考では選出できなかった<BEST GUY>を再び誕生させようという機運に包まれていた。そこへ宮崎県新田原基地の第5航空団から転任してきた梶谷が現れる。彼は幹部候補生学校ではドンケツの成績でかろうじて任官した劣等生で、新田原では3度も飛行資格を取り消されかけたほどの破天荒な男だが、こと飛ぶ事に関しては天性のものを持つF-15パイロット=イーグル・ドライバーだ。

指定の着任時間に遅れ、ロッカールームで会った隊員達には軽い態度で接する梶谷だったが、飛行隊の班長を務める吉永に会うなり挑発的な態度を取る。二人の間には、梶谷の兄・哲夫にまつわる確執があった。哲夫は小松基地の<BEST GUY>として知られるF-4パイロット=ファントム・ライダーだったが飛行中の事故で死亡しており、吉永は事故の際哲夫の操るF-4の後席にいながらも生還した過去があったのだ。そのため梶谷は、吉永に一方的で不条理ともいえる敵意を向け続けていたのである。

梶谷は転任直後の飛行からハイレート・クライム(急上昇離陸)を行って訓練幹部の屋敷や航空管制官を慌てさせるヤンチャぶりを発揮するが、射撃訓練では防衛大学校出身のエリートで最も<BEST GUY>に近い位置にいるといわれる名高にも引けを取らない腕前を見せる。そして隊を山本隊長率いるフォックスチームと吉永率いるベアーチームに分けて戦技を競う、3週間に渡る特別強化訓練が開始された。梶谷はフォックス、名高はベアーに分かれた事で二人の凌ぎ合いは熾烈さを増すが、名高へのライバル心に逸った梶谷はあわや互いの僚機までも巻き込んだ空中正面衝突という危険な飛行で名高の怒りを買った上に、編隊を組んでいた中川からウイングマンを降りるといわれてしまう。己の過剰ともいえる自信や名高への対抗心、そして吉永への怒りや憎しみにも似た思いが渾然となった、やり場のない感情を持て余す梶谷。彼は人気歌手シェリーのプロモーションビデオに使うF-15の映像を撮影するため時を同じくして基地にやって来たビデオディレクターの深雪に、そんな自分の感情をバーティゴ(空間識失調)に例えて話す。

ある日、基地にスクランブルのサイレンが響き渡った。ソ連の偵察機が日本の領空を侵犯したのだ。アラート任務に就いていた梶谷と名高は侵犯機の飛行する空域へ急行、編隊長の名高が警告を行うがその直後に現れたSu-27が名高の機体をロックオンする。あからさまな恫喝をされてなお積極的な攻撃行動は行えないという不利な状態ながらも、梶谷と名高は巧みにサポートし合ってSu-27と偵察機を追い払う事に成功する。生死が隣り合わせの任務を終え、二人は初めて何のわだかまりもなく互いの腕を認め合い、笑顔で帰途へと就いた。だが、ここで思いもよらない事態が発生した。雲の中を飛行中、梶谷がバーティゴに陥ったのだ。名高は必死に誘導を試みるが、混乱の末恐怖心に駆られた梶谷は機体を捨てて脱出。幸いにも海上に出ていた梶谷機は民間に被害を与える事無く海中へと没し、梶谷自身も大きな怪我をする事無く救助される。バーティゴに慌てふためき、機体を意識的に安全なところへ運んでから脱出するというマニュアルすら守れなかった失態に自信を喪失する梶谷。名高は編隊長である自分の責任と謝罪するが、そんな誠意も梶谷には辛いだけだった・・・(あらすじはwikipediaより抜粋・編集)

90年作というから、もう26年前の映画になる。タイトルからして、「トップガン」のぱくりみたいだが、実はベストガイとはトップガンの上にたつ位なのだそうだ。知らなかったー。かの深夜番組「コサキン」で散々いじられていたこともあって、名前だけは知っていたのだが、なかなか見る機会がなかった。たまたま今回、深夜に放送されていたものを録画してみることができた。織田裕二主演映画の鑑賞は私としては「卒業旅行~ワタシ日本から来ました」以来だが、こちらは金子修介監督の隠れた傑作。もっとも織田裕二とは仲違いしてしまったらしいけど。

当作でなんといっても特筆すべきなのは若き日の織田裕二の暑苦しさ。若いだけに物まねされるほど錬成されていないから、ただ、うっとおしいだけという始末に負えない演技が見所。これに比べると「踊る大走査線」なんて洗練されているほうだと思う。さらにBGMが微妙にトップガンに似せて作ってあって、どうせなら思いっきりパクリゃいいのに、と思うほどの中途半端さで、これもいらっとくる。しかしこれを全体的に足すとなかなか味のあるB級映画になるから不思議なものだ。

必殺仕事人や松田優作映画などで有名な村川監督のやはり気の迷いで作られたとしか思えない作品。格好いい男を撮らせたら、日本でも有数の監督だと個人的には思っているのだが、多分村川監督的には「黒歴史」になるのかもしれない。でも、なぜか不思議なことに九州.山口地方では深夜枠で一時期よく放送していたから、それも大なる謎なのである。

ところが、このどうしようもない?作品が実は結構映画史に重要な足跡を残しているから困ったものなのだ。この物語の舞台は自衛隊であるが、この作品ができるまでは、エンターテインメントに自衛隊が協力することはご法度であった。自衛隊が世論的にまだ日陰の存在であることも関係があったと思われるし、実際、軍備を一般公開しちゃうわけなんで、映ったらいけないものまで映っちゃまずいという理由も考えられよう。実際この「ベストガイ」でもその「映っちゃいけない」ものが映っていたとされ、あまり放送されなくなったらしいという噂まである。

で、よりによってその自衛隊が全面協力した初の邦画が「ベストガイ」なわけだ。これは日本映画史上動かせない史実である。しかしなんせはじめてのことで加減がわからないのだろうけど、映っちゃいけないところまで大盤振る舞いしていたというのが笑えないオチになっている。だが、そのサービス精神のおかげで、空撮シーンのそれは本家「トップ・ガン」を上回っているからさらに困ったものなのだ。まあ考えてみたらあちらはアメリカ空軍が協力しなくても金と物量でどうにかしちゃうだろうしね。

その金と物量の限界がこの作品の特撮シーンで垣間見える。自衛隊が気合を入れすぎたせいで、特撮部分の領空侵犯(いわゆる「東京急行 (ロシア空軍)」)によるスクランブル出動のシーンでは、ツポレフTu-16とスホーイSu-27が特撮で登場しているが、実機の迫力との間に乖離がうまれ、これも興行成績不振の原因とみなされた。まあそのおかげで今はB級映画界では大いなる評価をえているわけだが。

演者的には唯一、晩年の小林昭二さんがまさに「おやっさん」という感じでいい演技をしていらっしゃったのが、この映画にはもったいないくらいだったが、この小林さんの登場シーンと空撮以外はスカスカというのが、この当時の東映映画らしいB級感をただよわせている。特に織田裕二と財前直美の「月9感」というのが、今見ると浮いていてバブリーすぎる。はっきりいって失笑しかできない。まあこのあたりも含めた前時代的なところも、この映画の魅力だろう。

my-story-eiga
%e7%a0%94%e7%a9%b6%e6%89%80%e3%83%90%e3%83%8a%e3%83%bc

%e3%83%97%e3%83%ad%e3%83%ac%e3%82%b9%e3%83%90%e3%83%8a%e3%83%bc
%e3%82%ab%e3%83%bc%e3%83%96%e3%83%ad%e3%82%b0%e3%83%90%e3%83%8a%e3%83%bc





-万国びっくり映画鑑賞記, 映画鑑賞記