[映画鑑賞記] 映画 この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説
2019/08/31
交通事故(!?)によりあっけなく人生の幕を閉じるはずだった
ゲームを愛するひきこもり・佐藤和真(カズマ)は、
ひょんなことから、女神・アクアを道ずれに異世界転生することに。「RPGゲームのような異世界で、憧れの冒険者生活エンジョイ!めざせ勇者!」
と舞い上がったのも束の間、転生したカズマには厄介なことばかり降りかかる。
トラブルメーカーの駄女神・アクア、
中二病をこじらせた魔法使い・めぐみん、
妄想ノンストップな女騎士・ダクネスという、
能力だけは高いのにとんでもなく残念な3人とパーティを組むことになったり、
借金で首が回らなくなったり、国家転覆罪の容疑で裁判にかけられたり、
魔王軍の幹部を討伐したり、たまに死んだり……。そんなある日、駆け込んできた紅魔族の少女・ゆんゆんの爆弾発言にカズマたちは凍りつく。
「私、カズマさんの子供が欲しい!」
事情を聞けば、めぐみんとゆんゆんの生まれ故郷「紅魔の里」が、
滅亡の危機に瀕しているという。
里を救うために旅立ったゆんゆんを追いかけて、紅魔の里へ向かうカズマたちだが――!?カズマたちパーティを襲う最大の危機!
平凡な冒険者カズマが過ごす、異世界ライフの未来はどっち!?(あらすじは公式HPより)
見るなら一回で・・・
待望の「この素晴らしい世界に祝福を!」の新作はまさかの劇場版。まあ、その前振り?として「異世界かるてっと」はあったものの、2017年の二期放送以来二年ぶりとなる「このすば」。
さて、そんな待望の「映画 この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説」だったわけだが、見終わってみての感想としては「見るなら一回で充分かな?」ということになる。ではなぜ一回見たら充分なのか?
それを説明する前に、「映画 この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説」を見終わった時点での疑問点を次の3つにまとめてみた。
①カズマのモテ期到来に「?」
②魔王軍が敵として弱すぎない?
③この話映画にする意味は?
とまあ、これが「映画 この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説」をみただけでは私の出来の悪い脳みそには理解できなかったポイントになる。では順を追って綴っていこう。
ポンコツ美女たちの立ち位置が
①に関して言うと当初はカズマのパーティのポンコツ美女たちの立ち位置が、シリーズを重ねるに従って変わりはじめたことによる疑問である。
つまり、最初はダ女神アクアにしろ、爆裂魔法使いめぐみんにしろ、ドMのダクネスにしろ、彼女たちが蒔いた種で、カズマが酷い目にあうというポイントが笑えていた。
だが、回数を重ねていくと、パーティのポンコツぶりにだんだん慣れてきて、どこか可愛らしくさえ思えてくる。実際、酷い目ばかりにあってきたカズマも二期あたりでは、そこそこいい暮らしができるようになっている。
そうなると、本来彼女たちは見た目はいいのに、中身がポンコツというウィークポイントが、そうではなくなってきてしまう。ウィークポイントが機能しなくなると、カズマの立ち位置がハーレム状態の転生主人公という非常にありふれたものに落ち着いてしまう。
もし、カズマのモテ期到来がこのすば一期くらいの時期にきていれば、それ自体がギャグにぬりえたと思うのだが、一・二期通じてアクアやめぐみん、ダクネスのキャラが私のような視聴者に受け入れられはじめると「何言ってるんだ?」という感じにしか受け取れない。
つまり、カズマのモテ期というネタは、カズマが自身のパーティによってダメージを被っていないと成立しないのだ。よって今回の紅伝説のモテ期ネタは、わたしには全く笑えなかったのである。
「めぐみん愛」が半端ない
②はそもそもアクアがカズマを異世界転生させてきた物語のキモになる部分だが、これもシリーズを重ねてきたことで、敵キャラであるはずの魔王軍がそれほど怖い存在ではなくなってしまった。
特に「映画 この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説」の敵キャラ・シルビアは非常にいい味を出しており、彼女?を倒すにあたり、クライマックスで力を合わせて総結集し、難敵に立ち向かう」という一番カタルシスを感じる場面がそうなっていない。ギャグに全振りするならば、シルビアも救われる世界線を描いた方が「このすば」らしかったかもしれない。
③はテレビシリーズに特有だったテンポの良さがではあまり生かされていないように、私には感じられてた。テレビではおなじみ「このすば!」のアイキャッチで切り替わる場面転換も、映画という尺でみると、かなり鬱陶しく感じられた。
そうした細かい点はさておき、ほぼフルハウスになっていた劇場から、ほとんど笑い声が聞こえてこなかったというのが、「映画 この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説」の一番問題となるべき点ではないか、と思う。
テレビシリーズとは違う劇場ならではのスペシャル感があるとしたら、それはめぐみんの、めぐみんによる、めぐみんのための映画になっていたことで、そこだけはブレずに作られていたのは救いだった。とにかくキャスト・スタッフの「めぐみん愛」が半端ない。これはそういう映画なのだ。
だが、これを受けてもし「このすば」に三期があるとしたら、相当要求される内容は厳しくなる可能性もある。いずれにせよ、「映画 この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説」に関しては、笑いを求めて観に行くのだけはやめたほうがいいかもしれない。