[アニメ感想] 2018年秋アニメ完走分感想文 青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない
峰ヶ原高校の2年生・梓川咲太は、ある日、図書館でバニーガールと出会う。その正体は、咲太と同じ高校の3年生で活動休止中の国民的女優、桜島麻衣だった。周囲からひと際目立つ麻衣だが、何故か彼女の姿は周囲の人間には見えていなかった。
麻衣から金輪際、私に関わるなと言われるも気になった咲太は翌日、駅のホームで見かけた彼女に話しかける。そして咲太は、麻衣の身に起こっている不思議な現象について聞かされる。(あらすじは公式HPより)
なさそうでありそうな思春期症候群
久々に出てきた今期の「俺ガイル」枠(そんなもんがあるのかはわからないが)。思春期を拗らせた少年少女たちが、その中で葛藤し、悩みまくるという、一頃はラノベでやたらみた設定の作品だが、青ブタは比較的真正面から極めて真っ当にキャラクターたちと向き合っている、
近年では非常に稀有な作品でもある。名作でもある「やはり俺の青春ラブコメは間違っている」(俺ガイル)になぞらえたのは、そういう理由から。ちなみに、表題はラノベによくありがちな印象もあるが、おそらく元ネタは、映画「ブレードランナー」の原作である、フィリップ・K・ディック作「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」だろうと思われる。まあ、内容に関連性はないのだが。
なお、青ブタは2019年に劇場公開が決まっているが、おそらくテレビで完結しないから、劇場で全てが明らかになるというタイプの作品ではないだろう。
この青ブタという作品では、「思春期症候群」という都市伝説でまことしやかに囁かれている疾患にかかっていく登場人物たちのドラマが、なさそうでありそうなラインをうまい具合についてくるのが、この作品の最大の魅力である。
オッさんにも「刺さる」魅力
表題になっているバニーガール先輩こと、桜島麻衣は、自分が注目を浴びていないことに違和感を覚え、これが最初に自覚である。その後、徐々に症状が悪化。誰からも認識されなくなる。それ故に麻衣は人前でバニーガールの姿になってみるわけだが、その姿を唯一視認できた梓川咲太が、この作品の実質的なストーリーテラー。彼を中心に彼と関わりになる女性が揃いも揃って思春期症候群になっていく、という流れで作品は続いていく。
しかしながら、単純に梓川咲太が物語の「特異点」であるだけではなく、思春期症候群にかかるヒロインたちの悩みも、等身大のティーンエイジャーのものなので、当事者である思春期の読者にも、あるいは私のように、とっくの昔に思春期を過ぎ去ってしまった初老のオッさんにも「刺さる」というところが、青ブタの最大の魅力だと私は思っている。
丁寧な絵作りはもちろん、声優陣の熱演も青ブタを支える重要な要素になっている。俺ガイルもそうだが、当たり前な事を手抜きせずに丁寧にみせる力量がないと、思春期症候群という、ある意味空想の産物がリアリティを持ち得ないのだ。そういう点では、なかなか類似する作品が簡単にはでてこないだけに、青ブタをちゃんとした映像作品に仕立てたスタッフの熱意と努力には頭が下がる思いでいっぱいなのである。