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[アニメソング] アニメ的音楽徒然草 ダウンタウンダンス

2018/11/01

無責任男は憧れのヒーロー

今回は10月17日に56歳の若さで他界された声優・演出家の辻谷耕史さんを偲んで、辻谷さんの主演作品の一つ「無責任艦長タイラー」のエンディングテーマ「ダウンタウンダンス」をご紹介します。

原作は吉岡平さんの人気ライトノベル「宇宙一の無責任男」シリーズです。当然、出典元は故・植木等さん主演の「無責任男」シリーズです。ちなみに、「無責任艦長タイラー」は、ライトノベルがアニメ化した日本で初めての作品にもなります。

原典である「無責任男シリーズ」は基本、高度成長期にバリバリ活躍するサラリーマンを描いているものがたくさんあります。したがってどうしても主人公の描写がおっさん寄りになってしまうのは致し方ないところでしょう。

とはいえ無責任男の設定年齢は、ほとんどは20代くらいとみて間違いないので、おっさんというよりは「社会人」といい直した方が良さそうですね。

無責任男が生まれた時代にちょうど私らの世代が生まれているせいか、私は特にあの時代に対する強い憧れがありました。実際、時代を経て無責任男は何度かブームを迎えます。ちょうど私がクレイジーキャッツを知ったのは、大学生の頃でした。

年齢的にいうと、私は無責任男とほぼ同年代になった時に出会っているわけですね。個人的には植木等さんという方は、憧れのヒーローに近いものがありました。バリバリに仕事をこなしながら、飄々と出世していく様は、何ごとも生真面目に捉えやすかった当時の私には、眩しかったのです。

なぜ原作改変して成功したのか

ちょうど「宇宙一の無責任男」シリーズが刊行され始めたのが、1989年からで、1993年にアニメ化されています。この時代にもやはり何度目かの無責任男ブームが来ており、植木等さんも何度目かのブレイクを果たした頃でした。

したがって、おおよそ無責任シリーズがなんたるものかが古典としてではなく、何となくリアルタイムで体感できる時代でもありました。

原作はあくまでオリジナルの無責任男シリーズをリスペクトしていましたし、近年のようにアニメ化前提で作られているラノベとも異なりました。他方アニメ化する側もどうしたらよいのか?悩ましいところがあったと思います。

結果的にアニメ版「無責任艦長タイラー」は、原作を改変して、より低年齢?向けのキャラクターに落ち着きました。しかし、これだけだと単なる原作の改悪にすぎません。後々原作にまで多大な影響を与えたアニメ版はなぜ原作改変して成功したのか?というところを私なりに考えてみました。

①同じスペースオペラであるダーティペアや、キャプテンフューチャーなどのヒット作がすでにあったため

②おっさんメインのアニメは夕方には馴染まないと判断されたため

飄々とした無責任男

①については、月曜7時に放送されていたダーティーペアは、安彦良和さんの原作挿絵とは異なり、より低年齢化したキャラクターに変更されています。ダーティーペアの原作者・高千穂遙さんの「クラッシャージョウ」は、安彦良和さんのデザインのままでアニメ化されましたが、多分「クラッシャージョウ」の場合は劇場版だったから、ということも言えるでしょう。

キャプテンフューチャーの場合は、折からのスターウォーズブームの後押しもありましたので、原作準拠というより完全にスターウォーズチックなデザインになっていました。

これらの例を踏まえて、無責任艦長タイラーがキャラクターデザインをアニメチックに改変したのではないかと推察されるわけです。

②についてですが、90年代というのはまだアニメが深夜枠で放送されておらず、テレビ東京が長く伝統としていた夕方6時台は、やはり子ども向けという暗黙の了解がありました。この暗黙の了解を打ち破ったのが95年の新世紀エヴァンゲリオンだったことは、今更言うまでもないでしょう。

しかし、低年齢層向けとはいえ、アニメ版タイラーは親しみやすさも増しましたし、加えて辻谷耕史さんの声のトーンも相まって、飄々としたジャスティ・ウエキ・タイラーを生み出すことに成功しました。

いい感じの力の抜けかげん

後に辻谷さんは、犬夜叉で弥勒さまの声を担当していますが、弥勒さまのベースにあったのは、おそらくタイラーだったのではないか、と私は想像しているのです。

このフィードバックを受けて、吉岡平さんがリライトしたタイラーシリーズは、アニメ版に準拠した内容に変わっていきました。キャラクターデザインの力もさることながら、辻谷耕史さんの演技力も重要な要素ではないでしょうか?

ダウンタウンダンスの話に戻しますと、主人公タイラーが、ゆっくりリズムを取っている姿が映し出されています。オリジナルの無責任男は、割と派手な振り付けで踊っているのですが、これはやはり高度成長期に、しゃかりきになって働いた分、叶う夢が多かった時代を反映していたといえるかもしれません。

しかし、タイラーのエンディングのような、いい感じの力の抜けかげんは、90年代の空気感をうまく表現していると私は思います。一般的に言われるバブル経済期は80年代末から90年代初頭で終わっていました。そのバブル期が終焉した93年に放送開始されているアニメ版タイラーは、あくせく働くよりのんびり行こうというメッセージのようなものを感じました。そのエンディングでもあるダウンタウンダンスは、ちょうど当時の私には、非常に刺さる歌だったなと思うのです。

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アニメ化にあたり、主人公ジャスティ・ウエキ・タイラーの

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