[アニメよもやま話] アニメ的想い出徒然草 鬼神童子ZENKI
もっと作品を読んでいれば…
今回は鬼神童子ZENKIについて…というか、作者の黒岩よしひろさんについて語りたいと思います。私とは二歳違いでほぼ同世代の作家さん。2018年5月部心筋梗塞によって55歳で逝去されました。その報は私としてはとにかく衝撃でした。と、同時に「もっと作品を読んでいれば…」と悔やんでしまいました。
黒岩さんは1983年に週刊少年ジャンプでデビューされた作家さんで、漫画家を目指して、ひたすら漫画を描いて描いて描きまくっていた、当時の漫画少年の私としては、羨望の対象であり、目指すべき目標の1人でした。
今でこそ、80年代にデビューされた作家さんは、時を経てみな大御所になられてますから、一介の名もなきヲタクが気安く「さんづけ」していいものか?個人的には悩むところです(笑)しかもファンというにはあまりに接した作品が少なすぎますしね。
まあ、でも私が漫画家目指していたのは事実ですし、なり損ねたのも事実です。10代から20代にかけて、先にデビューした漫画家さんを目標にしていたのも事実ですから、その時の気分のままで、あえてこの記事内では当時のままの呼び方にしようと思います。
目標とかいいながら、お恥ずかしい話なんですが、先程も申しました通り、黒岩作品については、週刊少年ジャンプ時代のものしか知らなくて、アニメ化もされ代表作として数え挙げられる「鬼神童子ZENKI」すら未読という有様です。
違和感を感じた絵柄
黒岩さんがジャンプを離れて以降、青年誌でもご活躍されたことは知ってましたが、漫画家を断念して、普通の社会人として普通じゃない働き方をしていた当時の私には、なかなか気になる作家さんの作品を全て網羅することは不可能でした。
当時でさえコミックスの置き場にも困っていましたし、80年代から90年代には電子書籍は元より、漫画喫茶みたいな場所もありませんでしたから、当時の環境のように「買わないと読めない」というのは悩ましかったですね。
というわけで、遅まきながら現在、電子書籍で「鬼神童子ZENKI」を読んでいる最中です。実は黒岩さんの絵柄に関していうと、青年誌以降の作品はあまりタイプではありませんでした。私には当時のはやり絵に寄せた感じがしていたからです。80年代でもややクラシカルな絵柄が特徴だった黒岩テイストが好みだったので、違和感を感じてもいたからなのです。
黒岩さんが影響された、御大・永井豪先生にはよきにつけ悪きにつけ、同世代なら何らかの影響を受けていたのも事実です。その永井豪テイストが、アニメ絵が蔓延りはじめた80年代には一周回って新鮮だったのも、私の記憶に残る要因の一つでした。
後に、黒岩さんが「ウイングマン」の桂正和さんのアシスタントだったことを知った時にはあまりの絵柄の違いに衝撃を受けたものでした。とはいえ、代表作の「鬼神童子ZENKI」にしても、いわゆる特撮テイスト溢れる作品だったわけです。黒岩さんはそういうことでいうと、今もなおヒーローマンガの第一人者として活躍している師匠ゆずりの作風を持っていたのです。
ただ、残念ながら黒岩さんがデビューされた時代の週刊少年ジャンプは「ドラゴンボール」に代表される「黄金期」であり、しかも先行して、師匠が「ウイングマン」を連載し、アニメ化もされていた時期でした。
特撮ヒーローテイストにポップで、エロい絵柄を組み合わせたウイングマンは、まさしく時代の寵児になりましたが、一方で同じテイストながら、師匠と比較するとややどろくさい黒岩作品は、この時代「10週打ち切りの代名詞」みたいに言われていました。
しかしながら、これは黒岩よしひろさんに実力がなかったからではなく、月刊少年ジャンプに活躍の場を移すと「鬼神童子ZENKI」というヒット作を世に出したことで、打ち切り作家という不名誉な呼称はなくなっていきました。
ZENKIとの出会い
青年誌以降の作品はやはり時代に寄り添おうとしつつ、同時に自分のテイストを守り続けようとする葛藤のようなものも作品から感じられて、「方向性に悩まれていたのかな?」と推察したこともありました。事実は知る由もないですけどね。
図らずも先だって、影山ヒロノブさんが出されたアルバムをレンタルしてきて、アニメ「鬼神童子ZENKI」のテーマを繰り返し聞いていたタイミングで、黒岩さんの訃報が飛び込んできたのは、本当に何と言っていいやらという感じで絶句するほかありませんでした。
ZENKIとの出会いというのはとあるアニソンイベントで、たまたま耳にしたZENKIの曲に惚れていたことがきっかけでした。近年は時間的余裕を作ってますから、ブラックな働き方をしていた、私の若いころでは引っかからなかったZENKIのよさが、時を経て私の心に刺さったのかもしれません。が、この出会いというのは、ある意味私にとっては僥倖でした。
昔のように絶版=読めない作品というのも、現代ではあまりなくて、ZENKIも公式のマンガアプリ(まんが王国など)とかで読めるようになりましたから、これもタイミングというやつなんでしょうね。
ニュース的には、やはり先だって他界された巨匠・高畑勲監督のお別れ会が話題を独占してしまっているのも、タイミング的には最悪だなあと思ってしまいました。とはいっても、人間の寿命を図ったようなタイミングで始めたり、終わらせたりというのは基本不可能です。
実際、絶筆になった「乙女神天照」のような作品もあったことから、黒岩さんもまだまだこの世に未練もあったのだろうなと思うと、無念でなりません。付け加えるなら、これは、高畑監督と黒岩さんがたまたま同じタイミングで天に召されたということでしかないと思います。もちろんお二人に罪なんかあるはずもありません。
とはいえ、かつて漫画家を目指して挫折した自分としては、せめて同時代を生きた想い出だけでも書き綴って、手向けにしたいと思って心を込めて書きました。黒岩よしひろさんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。