[アニメ感想] 2018年冬アニメ完走分感想文 スロウスタート
中学卒業を機に親元から離れ、いとこが管理人のアパートで一人暮らしをしている一之瀬花名。この春に念願の高校デビューを迎えるものの、誰も知り合いがいない学園生活は不安だらけ。
登校初日、ドキドキの入学式を終えて周りを見渡すと、すでに仲良しグループができあがっている! しかも出席番号が一番なので、クラスで真っ先に自己紹介をする羽目に……。人見知りの花名は友だちを作ることができるのか!?(あらすじは公式HPより)
余韻がクソアニメによってかき消される
あの「ご注文はうさぎですか?」を手がけた「きらら職人」こと、橋本裕之監督のカラーが色濃い、2018年冬アニメを代表する日常ものになりうる…はずだった。しかし、東京はともかくBSで、しかもリアルタイム鑑賞している人には何とも悩ましい時間帯での放送になった。
BS JAPANで裏番組になっている「おそ松さん二期」は「客層」が被らない分それほど問題ではない。また近時間帯に、同じような日常系アニメもない。だが、伏兵は意外なところに潜んでいた。
それはまさかの「クソアニメ」ポプテピピック!スロウスタートは土曜深夜0時半、ポプテピピックは1時スタート。つまり、どんなにスロウスタートが頑張っても、その余韻はクソアニメによってかき消されるという悲しい運命にあったのだ。
私はリアルタイム視聴はしてないものの、ポプテピピックの前後にみてしまうと、どうしてもスロウスタートがどんな内容だったか、思い出せなくなる。
時折後ろめたさを感じている
だから、私にとって、スロウスタートという作品は、わざと日にちをずらして鑑賞する習慣になってしまった。幸いネット配信だとスロウスタートとポプテピピックは日時が異なるため、ネットで鑑賞するようになってから、ようやくスロウスタートをきちんと味わえるようになった気がする。
さて、スロウスタートというタイトルにあるように、主人公・一之瀬 花名(いちのせ はな)は、高校入試の前日におたふく風邪に罹患して公立・私立ともに受験できず、中学浪人となってしまった後に1年間の浪人生活を経て高校生となっている。
中学の卒業式にも出席できないまま卒業し、浪人決定から家で泣き続けて、引きこもる宣言を経て1人暮らしと浪人生活を経た1年後、星尾女子高校に1年生として入学する。が、浪人していたことを秘密にしているため、時折後ろめたさを感じている点がポイント。
真面目で人づきあいが苦手な花名だけでなく、登場人物の何人かはいわゆる定番の路線から外れてしまった人物が描かれている。現実世界においてこうした「乗り遅れた人」たちは、社会から取りこぼされて行く事が多い。
しあわせは、ゆっくりはじまる。
しかしそこはきららワールドだけあって、理解のある友人たちや学校の先生たちによって、花名たちは少しずつゆっくりとしたスタートをきっていく。前編通して一貫した、非常にやさしい世界が描かれているのだ。
きららアニメの日常枠としては、ちょっとひねった作品ではあるけれど、根底にあるやさしさや、ふわふわした可愛いらしさが、スロウスターターを時には励まし、時には勇気づけていくという、日常系を突き詰めた丁寧な描写も魅力のひとつ。
キャッチコピーにある「しあわせは、ゆっくりはじまる。」がきちんとした形で丁寧に描写されているので、きらら系のアニメが好きな人にはこたえられなかっただろうと私は想像している。
それだけに放送時間の妙で、内容が打ち消されてしまったのはなんとももったいないが、ポプテピを忘れたころに見ると、十分癒される佳作だったと私は思っている。