[特撮ソング] 特撮的音楽徒然草 三郎のテーマ
2017/02/23
今回は趣向を変えて往年の特撮作品より、「人造人間キカイダー」の挿入歌「三郎のテーマ」をご紹介します。三郎、いやサブローとは、主人公キカイダーの宿命のライバル、ハカイダーの人間体での名前です。
原作では三郎ではなく、サブローという表記なんですが、たぶんこれはキカイダー=ジローであるため、それにあわせたのだと思われます。しかし、この「三郎のテーマ」を作詞したのは他ならぬ石ノ森章太郎先生ご本人であります。ただしこの時代、名前だけ貸して別な方が作詞していたということや、いろんな方のアイディアを統合して原作者名義で発表するといったケースもあったりするのですが、この曲に関しては真偽のほどはわかりません。
しかしながら、個人的には有名な「ハカイダーのテーマ」(これも名曲!)より、「サブローのテーマ」の方がよりハカイダーの宿命を端的に歌っている気がしています。ハカイダーはキカイダーの生みの親である光明寺博士の脳を頭に移植された、いわばサイボーグであり、同じ「兄弟」であるはずのジローとはカテゴリーが異なるわけです。歌詞にはそうした重い宿命を背負って闘うハカイダーの孤独が重く描かれています。
ですが、実をいうと石ノ森先生の作詞かどうかというのは、この曲の成否には何ら影響はありません。実はキカイダーに限らず、石ノ森作品は原作とTV、もしくは映画では内容が全く異なっている場合が多くあります。これは石ノ森先生のご意向で「原作は原作、TVはTV」ということで違っていいという前提で作られています。したがってキカイダーも原作とは大きく話が違います。
特にハカイダーの孤独やビジンダーの苦悩はTV版の方がより深く描かれています。ちなみに原作はそこをジローの苦悩にしぼって描いているため、これはこれで素晴らしいのですけど、この「原作とTVは違っていい」という原作者の寛大な意向によって、当時はまだ原作との厳密な「整合性」を求めなかったファンは、両方を楽しむことができたわけです。ある意味贅沢な話ですよね。
おそらく今のように原作との整合性を重視するファンが大勢を占めている時代では、ハカイダーのようなキャラはもはや生まれてこないのかもしれないですね。そういう意味では寛大に楽しむ姿勢というのは作品やキャラクターを育てることにもつながっているのではないだろうかなと思ったりするわけです。