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[映画鑑賞記] ザ・エージェント

17年3月14日鑑賞。

有能なスポーツ・エージェントのジェリー・マグワイアは、高価な年俸のみを追求する会社の方針に疑問を持ち、提案書を提出するがあっさりとクビになってしまう。彼に好意を抱き、彼の提案書にも共感をする同僚だったドロシーと共に会社を立ち上げ、仕事の成功のために努力していくが、その中で「本当に重要なものは何か」を知ることになっていく。(あらすじはwikipediaより)

トム・クルーズのヒューマンドラマ。おそらく自分がお金を払ってまでして劇場では見ないタイプの映画。良くも悪くも最後までトム・クルーズの映画という感じがした。役になり切れない、悪く言えばどこを切ってもトム・クルーズ。だから私は想像するのだけど、原題の「Jerry Maguire」ではピンとこないと思ったであろう日本側のスタッフが「ザ・エージェント」という邦題を付けた気持ちが何となくわかる気がする。「トム・クルーズのザ・エージェント」ならなんとなくしっくりくる。でもそんなトム・クルーズを楽しむための映画としてはなかなかよくできている。いや、トム・クルーズを扱うならこういう形にすべきという見本のような映画だった。

「ザ・エージェント」がトム・クルーズでないと成り立たない理由の一つは、言い寄ってくる女性に「男を育てているの」といわせているところで、育てた結果が「トム・クルーズ」ならそりゃ誰も文句のつけようがないよなと思った。いくら優秀な描写でジェリーを凄腕のエージェントとして演出していても、おそらく「トム・クルーズ」以上の説得力を持ちえないだろうと私は思う。たぶんジェリーというエージェントの存在を、観客の心に響くくらいに納得させるには、トム・クルーズがジェリー・マクガイヤに寄せていったらだめで、むしろジェリーという役柄ををトム・クルーズに寄せたほうがしっくりくるんじゃないかなと思う。

更にこの映画の優秀なところとして

①ある意味完璧人間?のトム・クルーズを無双扱いしていない。
②そんなトム・クルーズを(一度は)袖にするのが女性側
➂袖にされたけど、結局トム・クルーズは友情も富も女性も手に入れる

という3点をあげておきたい。①は映画冒頭ですでにジェリーが会社をクビになっている時点で、もう明らか。さらに仕事人間であるトム・クルーズが一時、仕事もやすらぎも富も何もかも失いかけている点で、②は①を補完している。そして、➂がずるいところなんだが、散々危機的状況にあって結局、トム・クルーズはおいしい所を総取りしてしまうのだ。くどいようだが、それを成し遂げたのが「トム・クルーズ」というアンサーには、文句のつけようがない。お見事というほかないのである。

ザ・エージェントは恋愛中心の映画というわけでもなく、唯一のクライエントであるフットボール選手、ロッドとの友情話にもかなりの尺を使って丁寧に描写している。自己肯定感が低い私個人は、同性であるトム・クルーズに自分を投影することがどうしてもできないのだが、敷居を低く見せている分、ロッドを演じたキューバ・グッティング・ジュニアには感情移入しやすいな、と私は思った。

そしておそらくだが、女性はドロシーを演じたレニー・ゼルウィガーには感情移入しやすかったのではないだろうか?あと、独身者と妻帯者では感じ方や感情移入のポイントが違うかもしれないなと感じた。

ザ・エージェントの中でトム・クルーズ要素以外に「これは!」と思ったのは、子役のジョナサン・リップニッキー。映画撮影当時わずか4歳!それでこの演技力!そりゃ名子役と呼ばれるはずだ。ちなみに2017年現在、25歳でむちゃくちゃマッチョマンな青年に変貌を遂げていた。人間が変わるには25年という歳月って結構重いものだな、と感じずにはいられなかった。

最後にwikipediaをみていたら、ソフトの日本語版でトム・クルーズを担当した山寺宏一さんが、日テレ版の吹き替えではキューバ・グッティング・ジュニアの声を担当していたことを知ってびっくり!芸達者な山寺さんならさもありなんな話。でも脳内でジェリーとロッドの会話を山寺さんの声で脳内再生しても全然違和感がない!アニメでは二役どころか出演キャラクターのすべてを担当していることもある山寺さんの芸を堪能するためにも、「ザ・エージェント」を吹き替え版でもう一回みてみたいものである。






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