[万国びっくり映画] 宇宙戦争ファイナルインパクト
16年10月26日鑑賞。
2012年11月28日午前6時。出勤しようと外に出たマリッサは衝撃的な光景に言葉を失った。巨大な三脚状の機動兵器が暴れ回っている! それは、人間ではない、地球外生命体の地球への侵略行為だった。アメリカのみならず、世界各地で同時攻撃がなされている。各国軍主要施設が重点的に奇襲攻撃を受け、壊滅に追い込まれていた。合衆国大統領は非常事態宣言を発令。しかし、直後にホワイトハウスが襲撃され、なんと大統領が死亡してしまう。もはやダメージは致命的だった。我々人類に、反撃の術はあるのか…! ? 世界各地に同時多発的に出現した、巨大な三本足の機動兵器。圧倒的破壊力に人類は立ち向かえるか?
“SFの父"H.G.ウェルズの小説「宇宙戦争」を再解釈・映像化! ジュール・ヴェルヌとともに“SFの父"と呼ばれる作家H.G.ウェルズ。彼の代表作「宇宙戦争」は、2005年のスピルバーグ監督、トム・クルーズ 主演での映画化など、これまで何度か映像化され、また、数々のSF作品に多大な影響を及ぼしてきた。『スペース・インパクト』のニール・ジョンソンが、独自の新解釈でこのSFの古典に挑み、火星人の総攻撃開始からの10日間を描写する。(あらすじ・作品紹介はamazonより)
いや、久々にひどいものをみた。そもそも独自解釈する余地がないくらいのSF古典であるウェルズの宇宙戦争をどう解釈したらこんなひどい内容になるのか?この作品をみているとトム・クルーズ版がいかに良心的に作っていたかが骨身の髄まで染み渡るくらい理解ができる。そもそもスピルバーグがあれ以上ない解釈で見事な映像化をしているのに、それ以上の再解釈なんていらないだろう、と思ったら案の定、この再解釈は全くの余計なお世話だとしかいいようがなかった。まず冒頭から最後まで小出しに流れる報道映像。これがマジモンの戦争や紛争の映像が流れまくるというものすごさ。マジモンの軍隊が行軍する映像やら、マジモンの戦闘機の映像、さらにはマジモンの負傷者映像。
ストーリーもそうだけど、許可とか大丈夫なのか?とこっちが心配になりそうなくらいニュース映像を切り張りしまくっている。だから低予算映画の癖してところどころ妙な迫力があるのはそのせい。トライポッドからハイテク爆弾が投下される映像でも、爆発の瞬間だけマジモンの爆弾が炸裂する映像と合成しているので、変なリアリティが生まれているし!だが、しかしこの切り張りもマジモンの現・合衆国大統領オバ○さんの演説映像にアテレコで非常事態宣言をねじ込んだ点で一気にリアリティ崩壊。英語はわからないけど、明らかに口パクあってないし、そのうえ合衆国大統領の死亡報道が流れて、大統領無事死亡・・・・ってオイオイ、思いっきりオ◯マ大統領死亡って、そんな再解釈いらんだろ!
登場人物はそれぞれまぁまぁキャラが立ってていい感じなのに、主人公だけセリフに感情がこもっない棒読みセリフ。ちゃんと本人が喋ってるのに棒。まーヤル気の無い口調。でもこの棒主人公マリッサがいろいろやらかしてくれる。逃げる途中で知り合った人たちとアメリカ軍の拠点があるという街を目指すのだけど、怪我人に水と間違えて漂白剤を飲ませたり、漂白剤を飲まされて苦しむその女性を「いっそのこと楽にしてあげよう」とか意味不明な事言い出し、知り合った男性に頼んで彼女の首をへし折って安楽死?させたり、スマホで爆弾の作り方を検索したかと思えば、ホームセンターで材料を物色し爆弾を製作したり・・・いや、この主人公の方が火星人よりよっぽど怖いわ!
随所に登場人物達の安くてペラッペラな人間ドラマが随所で織り成され、より一層ストーリーがチンタラと展開。本当にドラマが平坦で中盤から作るのに飽きたのかひたすら爆弾作ってトライポッドを爆破していくだけのストーリーになって、しかももと陸上部だからという理由だけでマリッサが走って囮になったり(この囮になる理由も意味不明)するという本当どうでもいいレジスタンスシーンが延々と続く。
また残念なことにトライポッド自体のCGは割合頑張っているけど、予算が尽きたのかオモチャの銃のような「キュパタタタタ」「ぽぎゅーん」というサウンド、そしてやたらとチカチカする画面で台無しにしているありさま。この「ぽぎゅーん」が当たると人間が四散。町中に人間の手足が散乱している様はグロいっちゃグロい。あえてB級というテイストにわざと置き換えたんだとしたら、かなり優秀だと思うけど、これはどう見てもそんなプランがあるようには見えない。
極めつけはオチが原作とは全く違うこと。地球外生命体の拠点みたいな場所に生き残り人類がカチコんで、拠点を破壊し、捕虜を救い出すのはいいとして、この地球外生命体の拠点というのが、それまでのハイテク感を帳消しにする凄まじいチープさ。さらに追い打ちをかけるように「奴らの拠点はまだ世界中にいくつもある。残さず全部破壊してやろう。やつらが生き残るか?私たちが生き残るか?戦いはまだまだこれからだ!」で、ジ・エンド。え?続くの?この話?ウィルスじゃ死なないのか?火星人?
宇宙戦争ってどれだけハイテクな技術を持っていても火星人がウィルスひとつでやられてしまうラストがいいんでしょ?進みすぎた強大な力をもった侵略者でも見えない敵にあっさりやられてしまうという皮肉が利いたラストこそが肝でしょ?スピルバーグだってそこは変えないでちゃんと映像化してるのに、なんでこんな余計なことを!いやあ後半全く違う話になっているとは予想外すぎた。この映画をもしウェルズが生きてみていたら訴訟問題になること請け合い。というかその前に○バマ大統領に訴えられたら即ジ・エンドでしょ。勝手に殺してるし!
いやあ、宇宙戦争シリーズはやっぱトム・クルーズとか、スピルバーグとかちゃんとした人がちゃんと作らないととんでもないことになりますよ、という見本のような作品。色んな意味でファイナルインパクトありすぎだったけど、オチを変えたのだけはさすがに意図が全く読めない。これで続編が作れたらしめたものという商魂があるんだったら、エンドクレジットで「この作品を捧ぐ」とされていた人(亡くなっているみたい)もあの世で苦笑いしているに違いない。時間とお金を無駄にしても一向にかまわない、私のよう好事家ならば見てOKだけど、そうでない人には決して勧められない映画だった。