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[映画鑑賞記]大脱走

2016年9月13日鑑賞

第二次大戦下のドイツ。朝靄の中で一群の軍用トラックが道路を疾走しスタラグ・ルフト北捕虜収容所に到着した。この新設の捕虜収容所に英軍中心の連合軍捕虜が送られてきたのだが、これらの捕虜の中に脱走常習犯が多数含まれていた。ドイツ軍は絶え間なく発生する脱走に手を焼き、常習犯を集めて、脱走がきわめて難しい収容所を作っていた。鉄条網には近づけず、監視しやすいようにだだっ広く、唯一隠れそうな森までは100mはありそうで、新任の所長を始め、選りすぐりの兵隊が監視にあたっていた。捕虜を運ぶ一群のトラックが収容所に到着して、直後にフォン・ルーゲル所長(ハンネス・メッセマー)は、連合軍捕虜の先任将校ラムゼイ大佐(ジェームズ・ドナルド)に対して「この収容所から脱出することは不可能だ。無駄な悪あがきは辞めて、おとなしくせよ」と述べると、大佐は「脱走して敵軍を混乱させるのは将兵の義務である」として所長に迎合せず屈しなかった。収容された男達は、何回も脱走を繰り返してきた札付きの強者達で、初日から脱走を試みる連中であったが、さすがにドイツ兵看守に軽くあしらわれてしまう。アメリカ兵のバージル・ヒルツ(スティーブ・マックイーン)は、監視台と監視台との間の鉄条網に盲点があることを見抜き、グローブとボールを持ってきて、さり気無くボールを鉄条網の傍に投げ入れて、立ち入り禁止区域に入ったが見つかり、機銃掃射を受けたが助かった。その大胆不敵な振舞いからさっそく所長に目をつけられて独房に放り込まれる始末で、その場で所長を侮辱したアイブスも独房入りとなった。
そのような中、数時間後、ロジャー・バートレット(リチャード・アッテンボロー)がゲシュタポに連れられて収容所に到着する。彼は「ビッグX」と呼ばれる集団脱走の計画立案・実行のリーダーで筋金入りの男だった。到着したその日の夜、ロジャーは馴染みのあるメンバーを集めて空前の脱走計画を説明する。(あらすじはwikipediaより)

ご存知スティーブ・マックウィーン主演の群像劇。戦争映画ながら戦闘シーンのない珍しいタイプの映画である。基本ドイツ軍に捕虜になったアメリカ、イギリスらの連合軍兵の捕虜たちが脱獄に挑む話ではあるが、そもそも10回以上脱獄されているってどうなんだよ?って話で、最初は流石に少し緩めな感じのスタート。今考えるとかなりアナログな脱出法なんだが、あちこちでつかわれているパターンなだけに、正直これってどうなんだろう?と思いながら見ていた。

しかしながら脱出法はあくまで手段でしかなく、各登場人物を物語が掘り下げ出してから俄然面白くなる。いつの間にか気がついたら引きずり込まれていた。昔見ていたテレビ用の2時間バージョンが冗長に感じていたのだけど、実際フルバージョンをデカいスクリーンでみたら迫力満点!しかも時間が経つのがめちゃくちゃ早い!

戦時下という極限状況で舞台のほとんどは捕虜収容所なのに、緊迫感はそれほどなく、結構コミカルな場面も登場するが、そのコントラストのつけ方が抜群にうまい。シリアスに顔をしかめるだけなら誰でもできるけど、役柄に人間味を持たせられる力がある名優の演技にも酔いしれることができる。

最近のデジタル化によるキレイな映画にない、フイルムのザラザラした感じと、カラーというより総天然色と呼ぶにふさわしい色合いがこの映画の味になっている。53年前という時間の経過が今みると実に味わい深い。

スティーブ・マックィーンら、渋い俳優の若き日の姿も素晴らしいが、改めてみると彼らは若くして完成されたスターだったんだな、ということがよくわかる。それでいて晩年には晩年の味を醸し出した演技もみせてくれている。

あと、この時代くらいまでがギリギリなんだけど、俳優が汚い言葉を使わないのがいい。 日本人でもわかるsi*!とかmother f*cker!とかいう下品な日常会話が煩雑に飛び交わないだけでも相当見ていて気持ちがいい。近年の洋画をあまりみないのは俳優の言葉遣いに品がまるでないからで、これは邦画にもいえることではあるけど、美しい言葉遣いをしない俳優の出てる映画は見る気がおきない。例外はZ級映画くらいで、普通に劇場でかかるハリウッド超大作は金出して観る価値さえない。

話はそれたけど、やはり1970年くらいまでの銀幕のスターたちはやはり佇まいだけでもモノが違う!60年代生まれではあるが、リアルタイムでマックィーンを知ったのはタワーリング・インフェルノからなんで、今回こういう形で本作に出会えたのは幸運だった。

私は基本映画は一人で観る派ではある。平成になって誰かと映画館で映画見たのはスターウォーズ・フォースの覚醒だけである。でもこうして大勢で見ても楽しい映画がある事を知ったのは大変大きな変化だった。まさか大脱走がそういう映画だとは思いもしなかったので非常にうれしい誤算だった。またこれでスティーブ・マックイーンが好きになれた。

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