[追憶のscreen](5)冬の募金道その1
中学二年になってほぼ無理矢理課外クラブに入部する羽目になった。
幼稚園のころから縁が切れなかった件の友人は一足先に入部していて、そこからの強引な誘いだった。
今考えるとかなり貴重な体験もできたのだが、当時はいやでいやで仕方なかった。 私が入ったのは、ボーイスカウト部だった。運動能力には全く自信のない人間がアウトドアの部活をはじめようとは....。
しかも当時は英語と数学の塾もあってその上部活だと自分のやりたいこともできはしない。
しかしこちらの不満をよそにすでに逆らいきれない流れができてしまっていた。そんな当時の記憶中の一つがこれからお話することである。
部活の一つとして冬場は街頭募金をやらなければならなかった。色つきの羽を配るあれである。 当日夕方になって部員の一人の家に集合。なぜか冷蔵庫に張ってあった若葉マークを「もらったんだ」と彼がしきりと自慢していた覚えがある。
準備ができていよいよ目的地へと向かう。足取りは重たかった。目的地は下関駅に隣接するできたばかりの複合商業施設前。先生が事前に許可を求めていたとは思うが、当時はこういう善行に対しては寛大だったと思う。
今はそうはいかないかもしれないが。
とにかくここは今でもそうなのだが、やたらと風がきつい。それでも現在は立体架橋ができて前よりは多少、風の流れが変わっているとは思うが、当時はそんな障壁もない。吹きさらしである。ビル風吹すさび、粉雪も降りしきる中、半ズボンの制服に募金箱という出で立ち。
いくら人のためとはいえ、人前で長時間立ちっぱなしと言う肉体的にも精神的にもきつい苦行。おまけに他の部員は一年生の時に経験済みだが、途中入部の私にとってはこれがはじめて。
人の目線が年齢的にもきつい年頃でもあった。