[心理×映画] 映画鑑賞記・メトロポリス
05年4月5日鑑賞。
ケンイチ少年とその叔父、私立探偵ヒゲオヤジこと伴俊作は、人とロボットが共存する大都市メトロポリスへやって来た。生体を使った人造人間製造の疑惑で国際指名手配されている科学者ロートン博士を逮捕するためだった。ちょうど、高層ビル「ジグラット」の完成記念式典の真っ最中で、町の広場でレッド公による演説が華々しく行われていた。が、ロボットが式典を妨害し騒ぎが起こる。そして、1人の青年が平然とロボットを破壊して去っていった。メトロポリスは、「人とロボットの共存都市」と言われていた。しかし、そこでは、ロボットたちが人間に酷使されていた。一方、労働者たちも、ロボットに働き口を奪われ、都市の地下部に押し込められ、ロボットに憎しみをたぎらせていた。ロボットに人間と同等の権利を認めるよう叫ぶ団体が存在し、また上層部ではレッド公とブーン大統領が表向きは手を取り合いつつ対立しているなど、さまざまな確執が噴出していた。ヒゲオヤジとケンイチは、ロボット刑事ペロの手助けを借りて、ロートン博士が潜伏していると思われる都市の地下部ZONE1へと潜入する。そこで、彼の地下研究所を見つけるが、原因不明の火事が起こっていた。研究所内部に突入したケンイチは、逃げ後れた謎の少女を助ける。彼女は、大統領に成り代わり都市の実権を握る影の実力者、レッド公の亡き娘・ティマに瓜二つだった。そうとは知らないケンイチは、彼女を連れ脱出を図るが、ロボット弾圧の先鋒である過激派組織マルドゥク党の総帥ロックに狙われてしまうのだった。(あらすじはwikipediaより)
原作は漫画の神様、手塚治虫大先生。脚本大友克洋、監督りんたろう各氏という豪華な布陣。
2001製ということもあって、なくなられる前の八代駿さんや、小松原一男さんなどの名前が散見される。案外時がたったのだなという実感。
絵的には素晴らしいし、全体的な出来も一本の作品としては唸る出来。CG含めた背景美術の見せ方が、物凄い。
キャラの動かし方も半端ではない。ヒロイン.ティナの髪の毛のなめらかな動きとか。しかしこれが違和感なく組み合わさっているかというとそうではない。
まず当時の技術の精一杯ではあるのだけれど、従来のアニメ的表現をする人物と、徹底無機質な背景動画のギャップが凄すぎてそこが違和感を感じたところ。
更に絵面に一切参加していないはずの大友克洋色がなぜか前面に出てきているようで、そこにも違和感が。
いっそ大胆解釈するなら、出崎統版「ブラックジャック」くらいアレンジしてしまった方が良かったかも。そうすれば、より名倉さんの絵も生きたことだろう。
大友さんの乾いた感じと、名倉キャラのウェットさ加減と、手塚キャラの線の色っぽさはやはり同居出来ないもののように思えた。
いずれかに絞れば、例えば自分の存在意義を見いだせないでいるティナの「私は誰?」という台詞なんかでも、もっとより悲劇性が表現できたのではないかなぁ、と思う。
各所にこの豪華な組み合わせの個性がぶつかりすぎている部分が気になってしまい、それが実に惜しい!
それにしても町を破壊させたら当代随一の大友克洋氏と、999に代表される叙情的な破壊シーンがいつ見ても素晴らしいりん監督(作画の金田さんの面目躍如!)の組み合わせは、ラスト近くのシーンでは如何なく力を発揮されていて、これは劇場で見てみたかった。
最後にふと思ったことだけど、なぜかあの雑然さと、何層にも渡って伸びている交通網から本作メトロポリスのイメージは、東京と言うより小倉駅前を連像してしまった。何かあの世界の空気感が似ているような気がしたので。