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[映画×コミュニケーション]映画鑑賞記・シン・ゴジラ(たぶんネタバレなし)

世界よ!これが日本のゴジラだ!

天才・庵野秀明大阪芸大時代に残した衝撃的特撮映像といえば、帰ってきたウルトラマンである。

素顔の庵野秀明がそのまま巨大化して怪獣プロレスする映像は衝撃を通り越していた。制作当時私は高校生。

その時代の大学生にこんな才能がいたとは!当時クリエーターを目指して勉強そっちのけでオタク家業にいそしんでいた私の自信もプライドも木っ端みじんに打ち砕かれた。のちに見たDAICON(大阪SFコンベンション)のOPアニメで私はさらに打ちのめされるわけだが、この時代に庵野秀明という名前はしっかりと魂に刻まれた。

のちに彼が宇部市出身という同じ山口県民だというもことをしって、下関市民として軽い嫉妬を覚えつつ羨望と誇りをもって、庵野シンパになっていった。

ただ、私はアニメの世界より特撮世界こそが庵野さんのフィールドだと思い込んでいたので、DAICONなどで名声をえ、プロになってナウシカなどでアニメーターの地位を確立した庵野さんには「これでいいのかな」とも思っていた。

しかし天才はやはり天才だった。彼は監督として「トップをねらえ!」「ふしぎの海のナディア」などで演出家としても開花していく。ナディアは途中迷走したものの、のちのエヴァにつながる萌芽がいくちも見られる素晴らしい作品で、放送終了後、なけなしのボーナスをはたいて、再生機すらもっていなかったレーザーディスクのコンプリート版を手にしたくらいぞっこんだった。

そして、時代はエヴァンゲリオンへ移行する。実は時代を共にしてきていない人は「ヤマト」→「ガンダム」→「エヴァ」という流れしか知らないことが存外に多いのだが、ガンダムの後にイデオンがあり、そののちの逆襲のシャア(逆シャア)などが、庵野秀明の基盤を作っていったのだ。

この2作から推察するに今回のシン・ゴジラは「逆シャア」の流れを汲んでいると私は勝手に思っている。それはエヴァがイデオンに倣って?徹底的に絶望を描いていた点と好対照だからだ。

逆シャアというのは地球の体制に絶望したシャアが人類粛清を試みるのだが、その流れに反発したアムロらとの戦いが物語の主なあらすじ。絶望な映画のようでいて、冨野由悠季監督作の中ではラストで希望に光が当たっている数少ない作品でもある。

エヴァの失敗点は新訳も含めて絶望と希望の混じり方が不完全であり、絶望に舵を切ったとき、冨野監督同様、庵野さんもまた病んでしまった。しかもヒット作故「作らねばならない」映画になってしまっていた。その破たんがもっとも色濃くでてしまったのが、新約の「エヴァQ」である。

あまりのひどい内容に劇場で寝てしまったくらい何も覚えていないのだが、その前の序・破の2作で出し尽くした感もあったので、正直危惧はしていたが、やっぱり・・・・という感じで特に意識はしなかった。どうせ失敗すると思っていたので。

一方庵野監督の盟友・樋口真嗣監督はどうかというと日本有数の特技監督でありながら、映像演出に手を出しては汚点を残しまくっていた。中でも一番有名なのは「進撃の巨人」だろう。特技監督にありがちなことだが、専門外の方向に手を出して失敗するケースは過去にも多々あった。

このことからいえるのは、庵野さんがはからずもエヴァで語っていたように「補完計画」が必要だったのだ。芸術というのは孤独な作業で一人が道を突き詰めていくようなイメージがあったかもしれない。だが、才能のある者同士がお互いの得意分野でチームになってひとつの作品を「好き勝手」に作っていいと私は思う。その補完を見事な形でなしえたのが今回の「シン・ゴジラ」だったのだ。

劇中で災害対策のエキスパートとしていわゆるオタク層が集結するのだが、これは何もアニメファンが世界を救うとかそういう話ではなくて、使える専門家チームが、お飾りの有識者会議よりずっと有能だということを示している典型例だと思う。

そもそもエヴァというのは庵野監督の中から生まれたものなのに対して、ゴジラは庵野監督が生まれるはるか前に生み出されたいわば日本の共有財産である。その共有財産に畏敬の念を払いつつ、自身の特撮愛を結集したのが「シン・ゴジラ」だったのだ。

あとでパンフを読んだらエヴァのBGM伊福部音楽オリジナルのままで流したのは意図的なことだったのだという。一番のヒットは対ゴジラ作戦(まあ、エヴァの○シマ作戦にとても似た名前なのはご愛嬌だけど)の劇判に宇宙大戦争マーチを起用したこと!伊福部マーチの頂点にして最高傑作をこの場面で使うとは!

正直オリジナルの宇宙大戦争という映画はお世辞にも特撮が傑出しているとはいいがたく、この名曲が流れるシーンもカメラ構成が単調で勇壮な音楽を台無しにしていたのだが、やっとこの曲があるべき形で使われたことに興奮と感動を覚えずにはいられなかった。

もしかすると伊福部先生がご存命なら宇宙大戦争マーチもステレオ新録音されたかもしれない。しかしこれはオリジナル音源だからよかったのだ。でないと生まれえぬ感動だっただろう。何度も流れる伊福部サウンドには単なるノスタルジーをこえた伊福部先生の魂が感じられて久々に涙腺が崩壊した。

シン・ゴジラは天才が「好きにすれば?」と言って本当に好きに作った怪獣映画である。そして庵野秀明の本気がしっかりつまった怪獣映画でもある!一度は固辞したという監督を説き伏せた東宝と樋口監督のファインプレイの結果でもある。

また陸・海・空の自衛隊、国土交通省、内閣府、さらにはスタジオカラーの著名なアニメーター、3D制作では有名な白組・・・・これらすべてがオールジャパンというチームを作ってなしえた成果だと私は思う。

これからは才能ある人が責任をひとりで被らなくてもいい。責任は分散して、得意分野は各自が持ち寄って結集させる、それがチームとしての映画の作り方だと思う。もちろん今までだってチームで作られていたことには変わりないのだけど、映画界内部だけで補いきれない公官庁や、アニメーター、その他関係諸氏が結集し紡ぎあげた奇跡の映画なのだ。

そしてそれは日本にだけにとどまらない。劇中の物語とリンクするかのように世界がゴジラのために結集もしている。これを感動と呼ばずしてなんとしよう!

決して予算も潤沢ではないし、バカみたいなCG技術もない日本もやればまだまだこれだけのことができるのだ。
シン・ゴジラがもたらした希望の物語はきっと日本の希望の光になっていくだろう。

これは絶対にハリウッドでは作れない!評判のよかったギャレス・エドワーズ版のハリウッドゴジラを軽くしのぐ出来に、これぞゴジラ!の真骨頂を見た気がした。

絶対もう一回観に行く!

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