万国びっくり映画鑑賞記・片腕カンフー対空とぶギロチン
2016/10/18
05年3月18日鑑賞。
台湾映画なのに香港製。なんでもタランティーノがこの作品にインスパイアされて「キル.ビル」を作ったのだとか。そういう意味でも期待してみたのだが、これは予想以上の物凄い「強敵」だった。前日に見た「チャップリンの街の灯」はその全てが作り込まれた珠玉の職人芸の 極地だったが、それとは真逆の極地を この作品に見た!
多分作りたい、見たいと作り手が思ったシーンが「先に来すぎて」、残りの全て(筋立てなど)が後付になっているものすごさとでも言おうか。
個人的に気に入ったのが、
1.鷹爪拳塾長主催の武闘会
2.片腕カンフー使い対ムエタイ使いのファイアーハウスランバージャックデスマッチ
3.片腕カンフー対ギロチン使いの棺桶屋での棺桶デスマッチ
1.は武闘会と謳いながら、実際は異種格闘技戦・・・いや万国ビックリショーばりの目を疑うような格闘シーンのオンパレード。三節昆対長槍術あたりはまだまとも。無刀術対快刀術に至っては、無刀術を名乗る笠かぶった侍が登場。なぜか刀もたずにトンファーで闘う。しかもそのトンファーに仕込み刀を仕込ませていて、あっさり相手を殺してしまう。
もっと凄いのが、次の弁髪術対蒙古相撲で、弁髪を相手の首に巻き付けて窒息死させる使い手と、どう見ても腕ひしぎ十字固めとベアハッグを主体に攻めるモンゴル相撲の力士が相打ち。万国ビックリショーの極み!
首に弁髪が巻き付いたまま、コントの気絶シーンのようなコミカルな表情で目をむいて倒れる力士が間抜けすぎ。モンゴルから苦情来るぞ。
埋刀陣なるデスマッチでの、天縄対ジャワ刀の闘い。埋刀陣とは読んで字の如く、地面に埋められた刀と丸太があって、丸太の上で闘うというもの。落下すれば突き出た刀でぐさり。ネールデスマッチの刀版である。なんでこれだけ形式がデスマッチ(基本的に他の試合もデスマッチなのだが)なのか意味不明。
そしてヨガ対台風剣、ムエタイ対虎鶴拳、片腕蛇拳対蟷螂拳と続いていく。だいたいヨガが格闘技という解釈も凄いが、ヨガの使い手というだけで、関節はずして手の長さを自在に変えられるって、もう北斗の拳も真っ青なビックリ人間ぶりである。
このヨガ使い、実はムエタイ使い、無刀術の侍、そしてギロチン使いの坊さんと共に、片腕カンフーを倒すため清王朝から派遣されている刺客という設定らしい。何を考えてこんな人選しているんだ?清王朝?意味がわからん!
そのムエタイ使いを、片腕カンフーが弟子を使っておびき寄せ、デスマッチに持っていくのだが、街頭でワイクー踊るときに使う管楽器を鳴らしていると、ムエタイ使いがその音のする方向に引き寄せられるようについてくる。餌の臭いに釣られて 罠の方向にまっしぐら。頭悪すぎ(笑)
そして弟子が家に火をつけ、ムエタイ使いが窓から出ようとすると、槍でつついて出られないようにする。燃えさかる家の中で闘う片腕カンフー対ムエタイ。片腕カンフーが熟考したというこの作戦は、結果奏功し、ムエタイ使いはカンフーの技+やけどによる敗北を喫するのだが、その前に煙に巻かれて2人とも酸欠になるぞ、あれじゃ。
考えぬいたわりには頭悪すぎな展開はこの後のメインでも続く。片腕カンフー対ギロチン使いの棺桶屋での棺桶デスマッチシーンがそれなのだが、これはもうラストがやりたいがために作り出したシーンとしか思えない。棺桶屋で棺桶デスマッチって体を張った駄洒落じゃないか。
このギロチン使いの、 片腕の武術者と見れば片っ端からぶっ殺していく飛びっぷりも半端ねぇ!がその割にラストはあっけない。そして無駄な余韻がしばらくあって映画は終わる。
いやあ、素晴らしかった。一時間半が本当に短かった。ラストシーンのどう考えても尺が余ったとしか思えない 意味不明な余韻もグッド。なお、片腕カンフー 演じるのはジミー.ウォング。 この映画の元ネタは なんと座頭市らしい。別な映画で片腕カンフーは座頭市とも闘ってるし(日本で勝手に続編として公開された映画『座頭市 対 空飛ぶギロチン』(原題:盲侠血滴子、英題:A Sword Renouneed)のこと)。
当作はまた東京国際ファンタジック映画祭でも上映されたらしい。ある意味ファンタジーとも呼べなくはないので、間違いではないが、場違い感は半端なかったろうなあ。