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映画鑑賞記・イエスマン “YES”は人生のパスワード

イエスマン “YES”は人生のパスワード
 10年6月27日鑑賞。

 いや、最初はジム.キャリーが単
面白おかしく演じる話だと思っていた
けど、全然違っていた。いわば植木等
さんの「日本一の男」シリーズに通じる
爽快感がある。もちろん、アメリカとは
当然テイストから何からちがうんだけど、
「日本一の男」と通じるのは、自分が
自分に大風呂敷を広げて自分を追い詰
めるのではなく、その状況までも楽しん
でしまおうというきわめてポジティブ
シンキングなところなのだ。いわゆる
有言実行型の典型例というわけだ。

全然期待していなかったんだけど、
胸がすかっとした。洋画では上半期
の大当たりになるかな。

銀行の貸付係カール(ジム.キャリー)は、
ひどいネガティブ思考の持ち主だった。
特に3年前に離婚してからというもの、
窓口に来る融資の申請にはことごとく
却下を出し続け、友人知人が一人では
淋しいだろうと、あれこれかけてくる
誘いも断り続けるばかり。忙しいから
とことわりを入れつつも、レンタル
ビデオ屋に並んでいる所を友達に
見つかったりしている。

 本当は忙しくも何ともないのだが、
自分からネガティブな壁を作って社会
との関わりを寸断していた。そして
ついに親友の婚約パーティまでも
すっぽかした彼は、強引にカリスマ
主催者テレンスの啓発セミナーに
参加させられる。それは、あらゆる
選択にイエスと答えることで人生を
変えるというものだった。全員の前
で誓いを立てさせられた彼は、
しぶしぶ自分に対してイエスという
誓いを立てさせられるのだが...。
 
 仕事でもプライベートでも、
とりあえずノーと答えてしまう後ろ
向きな主人公が、どんな頼み事にも
イエスと答えることで人生を変えて
いく姿を描いているこの作品の原作は、
実際に、何にでもイエスと答えると
いう試みを行ったBBCラジオ・
ディレクターの実話手記。
これを下敷きに映画化されたの
だそうだ。現実にやっていた人が
いたんですね。

確かに出もこれはセミナーという
名を借りるとかなり怪しいにおいが
プンプンしてくるけど、言っている
事は至ってシンプルで、要は自分で
自分の縛りをといて自分にウソを
つかない。そしてイエスといった
からにはそれを実行するのみという、
シンプルではあるんだけど、なか
なか実際にしてみればむずかしい
事を、ジム.キャリーが面白おかしく
演じていく事で、いつしか自分も
自分自身を認める事で、変わって
いけるんじゃないかという気に
させてくれる。

 イエスのひとことで人生が思わぬ
方向へと転がり出す、そのありのまま
を受け入れて、どんどん人生が楽しく
なっていく様を本当に楽しそうに
演じているから、見ているこっち
まで楽しくなってしまう。下手な
啓発セミナーや怪しい宗教より
よっぽどエネルギーがもらえる映画
だと思う。共演には「(500)日
のサマー」のZ・デシャネル。

彼女がまたいいんだわ。
パートナーとしてはこれ以上ない
魅力的な彼女は、映画に花を添える
だけでなく、彼女自身もまた人生に
「自然に」イエスと言い続けている
人物を好演している。

 そう、自己啓発で主人公が「イエス」
と言わされていたのは、実は自己肯定に
自分が慣れるための方便にすぎなかった
のだ。そこからいったん自分を認めて
しまえば、時にNOといわれる事態に
陥っても、結果オーライでやって
いける。そこが映画といえば映画らしい
所なんだけど、あまりにリアリティー
出し過ぎるとかえっていやらしいし、
そこのバランスを考えると笑えて、
ハッピーになれて、前向きになれると
いうのはエンターテインメントとして
は最高なんじゃないかと思う。

 ラスト前のちょっとセミナーを
皮肉ったあたりの演出もにくい。
やられましたね。いい気分になった
なあ^^  

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