[映画鑑賞記] HELLO WORLD
2019/10/05
京都に暮らす内気な男子高校生・直実(北村匠海)の前に、10年後の未来から来た自分を名乗る青年・ナオミ(松坂桃李)が突然現れる。ナオミによれば、同級生の瑠璃(浜辺美波)は直実と結ばれるが、その後事故によって命を落としてしまうと言う。「頼む、力を貸してくれ。」彼女を救う為、大人になった自分自身を「先生」と呼ぶ、奇妙なバディが誕生する。しかしその中で直実は、瑠璃に迫る運命、ナオミの真の目的、そしてこの現実世界に隠された大いなる秘密を知ることになる。
世界がひっくり返る、新機軸のハイスピードSF青春ラブストーリー。(東宝公式HPより)
ありがちなタイムリープ物?
ソードアートオンラインでおなじみ伊藤智彦監督のオリジナル作品。と言っても伊藤監督の過去作で出てきたセルフオマージュ?らしき設定は、あちこちに見られる。
予告だけみた人は「君の名は。」を連想したかもしれないが、蓋を開けたら数倍難解な内容だったので、「意味不明」の声が多数出ているのは仕方あるまい。私個人は大変楽しませてもらったけど(笑)
予告だけみていると、ありがちなタイムリープ物、的なものに見えなくもない。
世界の改変は誰のため?
だが、「HELLO WORLD」の面白いところは、「世界の改変が誰のためのものであるか」というところに重きが置かれているところなのだ。タイムリープだと改変された過去によって未来が変わることがありうるわけだが、「HELLO WORLD」ではそうなってはいない。そこを説明しちゃうとネタバレになるんだけど、上手いこと考えたな、とは思った。
最初にも書いたように、一度目でちんぷんかんぷんだった人も、深く突っ込み過ぎたせいで難しく感じられた人もいるだろうな、とも私は思っている。
たしかに難解さとわかりやすさのさじ加減は、非常に難しいところではあるが、描写の正確さや、主人公に感情移入できる作劇などは十分に評価できよう。
観る人を選ぶ内容
とはいえ、SFに馴染みがないととっつきにくいのは仕方のない作品なだけに、見る人を選ぶ内容にはなっているかもしれない。
ただ、ラストのシーンでどんでん返しは、やや描写が短すぎる感じがした。話としてはとてもきれいにまとまっていて、驚きはするんだけど、どんでん返しがあったというだけで終わっているのが、やや残念なところである。
この物語の根幹である部分を、視聴者の想像に任せるというのは内容が難解なだけに、少々不親切だったかもしれない。だからこその「難解」という評価ならば、それは仕方ないだろう。
意外とよかった素人声優
ただ、よく言われる俳優の吹替えも、「HELLO WORLD」に関しては、主役3人がしっかり物語を紡げていたな、と感じた。スーパー戦隊シリーズ出身の松坂桃李は言わずもがな。
強いて言うならヒロインの瑠璃を演じた浜辺美波が、意外にもよくてこれが1番驚かされたかもしれない。伊藤監督の作品は「君だけがいない街」でも素人声優を起用しているが、それなりにハマるキャスティングをしてくる。「HELLO WORLD」もそんな作品だった。
音響監督のベテラン・岩浪美和さんのディレクションも良かったのかもしれない。総じて大当たりや意外性はなかったが、安定していたと思える配役だったと私は思っている。
余談になるが、hELLO WORLDのサントラ盤には2027Sound(OKAMOTO'S、Official髭男dism、Nulbarich、OBKR、Yaffle、STUTS、BRIAN SHINSEKAI)のフルコーラスバージョンは入っていないらしい。これだけのミュージシャンをそろえながら、音盤で映画を振り返ることができないというのはもったいない話ではないか・・・