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[映画鑑賞記] 映画:ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝-永遠と自動手記人形-

……大切なものを守るのと引き換えに僕は、僕の未来を売り払ったんだ。

良家の子女のみが通うことを許される女学校。
父親と「契約」を交わしたイザベラ・ヨークにとって、
白椿が咲き誇る美しいこの場所は牢獄そのもので……。

未来への希望や期待を失っていたイザベラの前に現れたのは、
教育係として雇われたヴァイオレット・エヴァーガーデンだった。(あらすじは公式HPより)

事件と映画は切り離して観る

9月6日より三週間限定公開な上に、初日で1日4回上映しかしないという扱いの悪さ。1日4回ということは、それぞれの回が満席になる可能性があると言う事。

実際、劇場に行くと夏休み終わりなのに、凄い人!しかもヴァイオレット・エヴァーガーデンは昼回以外はレイトショーですら午前中の時点で、ほぼ満席。これは劇場側の判断ミスなのか?いずれにせよ、京アニ事件の影響を軽視していたといわれていても仕方あるまい。

とはいいながら、自分的には一つ決めていたことがあった。それは事件と映画は切り離して観る事。この作品は事件が起きる前から作られており、そこにある思いは在りし日の京アニだと私は思っている。

だからこそ、そのままのヴァイオレット・エヴァーガーデンを味わいたかったのだ。では、この外伝はどうだったか?

人間らしさを取り戻していくお話

答えは…全て杞憂だったと申し上げておこう。圧倒的な完成度の作画は言うに及ばず、声優さんの演技も含めて、全てが私の知っているヴァイオレット・エヴァーガーデンそのものだった。

外伝と言いながら、テレビシリーズから地続きになっている物語は、基本手紙を代筆するドールのヴァイオレットと、依頼主との物語になっており、今回もその文脈からは1ミリも外れてはいない。

テレビシリーズで描かれていたのは、「自動手記人形」と呼ばれる代筆屋のヴァイオレットを中心に繰り広げられる群像劇である。ヴァイオレットは、戦場で「武器」と称されて戦うことしか知らなかった少女だが、かつて戦場で誰よりも大切な人であるギルベルト少佐がいた。

その少佐から最後に聞かされた言葉「愛してる」をヴァイオレットは理解できなかった。この物語は、仕事と日常を通じて他人と触れ合いながら、その言葉の意味を探していくお話であり、戦争というつらい経験を経て、ヴァイオレットが人間らしさを取り戻していくお話でもあるのだ。

実は非常に希望のある物語

一見するととても悲しいお話のようで、実は非常に希望のある物語だし、手紙を通して感動し、成長していく人間たちの姿を実に丹念に描き切っている。こういう重厚なお話を描けるとしたら、今の日本なら京アニ以外に存在しないだろう。

確かに犠牲者を含めたエンドロールにはすすり泣きも聞こえた。でも、延期になったとはいえ、次に控えた映画本編の予告には「鋭意製作中」との文字が確かに刻まれていた。悲しい事件を乗り越えてそれでも作品つくりをやめようとしない京アニの姿勢に、このヴァイオレット・エヴァーガーデンの物語は奇しくも符合している。だが、それは明らかに希望の光だった。

一月公開は叶わなくなったけど、いつまでも完成を待ちたいと思う。あなたが迷っているのであれば、ぜひ劇場に足を運んで、この作品をみてもらいたい。どんなに辛いことがあっても、生きるということがこんなに素晴らしいということを教えてくれるから。

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