[アニメソング] アニメ的音楽徒然草 神様お願い
2019/05/09
全25巻刊行の原作
今回は、2012年10月から12月まで第一期が、2015年1月より3月まで第二期が放送されたアニメ「神様はじめました」の一期エンディングテーマだった「神様お願い」をご紹介します。
「神様はじめました」というのは、「花とゆめ」誌上で、鈴木ジュリエッタさんによる漫画連載が原作です。2008年6号から2016年20号まで連載され、単行本は全25巻が刊行されているヒット作でもあります。
主人公・桃園奈々生はギャンブル好きの父親が借金を残したまま蒸発し、取り立て人に家を追い出された際に、犬に追われているミカゲを助けた。ミカゲは「家を譲る」と言い残して立ち去ります。奈々生は半信半疑のまま教えられた場所に行くと、そこは廃れた神社が存在し、神使の巴衛、鬼火童子の鬼切・虎徹が住んでいました。
実はミカゲは神社の土地神であり、奈々生は神社を家として与えられたと共に、ミカゲが20年以上放棄していた土地神の責務も譲渡されてしまうのですが、奈々生は巴衛に助けられながら任務をこなし、様々な神との出会や困難に立ち向かい、神様として成長していく・・・という物語になっています。
監督は「こどものおもちゃ」や「セクシーコマンドー外伝すごいよ!マサルさん」などを手がけた大地丙太郎さんです。大地監督はハイテンションなコメディを得意とし、どんなにシリアスなストーリーでも必ずと言っていいほどギャグ・日常描写を入れる方針を貫いている監督さんです。
グループ・サウンズの最盛期を支えた
「神様はじめました」でも、少女漫画テイストの作品をちょっとコミカルに描き出したという点ではアニメ版も良質な作品になっていたと私は思います。
さて、「神様お願い」は、第1期、第2期共にオープニング・エンディングを全て担当されたハナエさんによるカバー版で、原曲は2019年3月に68歳でお亡くなりになられた萩原健太さんが在籍されていた「ザ・テンプターズ」の同名曲です。
ザ・テンプターズは、1967年にデビューした、グループ・サウンズの最盛期を支えたバンドの一つです。1970年11月に解散しました。萩原さん…いや、ショーケンはこのザ・テンプターズでリードヴォーカルを務めており、沢田研二さんの在籍されていたザ・タイガースと共にグループ・サウンズ・ブームを牽引した立役者でもあります。
グループ・サウンズブームの時分、私はすでに生まれてはおりましたが、なにぶん幼かったもので、リアルタイムでブームを体感したわけではありません。ですので、ショーケンは刑事ドラマ「太陽にほえろ!」のマカロニ刑事役として認知したのが最初です。私がショーケンの歌を聞いたのは、もっと先のことになります。
初のカバーだった
大地監督は1956年生まれですので、私よりひと世代上の方になります。となれば、ザ・テンプターズ全盛期をご存知のはずです。
実際、ハナエさん側からなのか、レコード会社側からなのか、はたまた監督の選曲によるものかは定かではありませんけど、いずれにせよ、テンプターズを体感した世代が、「神様お願い」をエンディングに起用するにあたり、関与していたのは間違いないでしょう。ちなみに、調べてみたらハナエさんは1994年生まれで、テンプターズが活躍していた時代にはまだ生まれてもいなかったわけですね。
しかしながら、最近のアニメにしては珍しくアニメ作品のオープニングとエンディングを一・二期共手がけられているという例は、なかなかレアケースでもあります。
そんなハナエさんにとって「神様お願い」は、初のカバーでもあったようですが、原曲とはまた違う魅力がある、と感じて私は好きになりました。ハナエさんの世界観と「神様はじめました」の相性はとても親和性が高いな、と放送当時は思っていましたし、それは今でも変わりません。
オリジナルを歌われたショーケンが鬼籍に入られた後も、アニメを通じて次世代にバトンが受け継がれた「神様お願い」は、後世にも残っていくのではないかな、と私は思っています。